剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
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080話 記憶巡り編 とある視点で見る記憶 その7
前書き
更新します。
こちらではお久しぶりですね。
『吸血鬼になったエミヤ』の方がやっとまほら武闘会が終わったので、キリよくこちらに戻ってきました。
思った通り。
士郎さんが眠った後にセイバーさんは部屋を出ていく気配があり、士郎さんが嫌な予感がして目を覚まして襖を開けた時にはセイバーさんの姿はなかった。
「あー……やっぱセイバーの性格じゃでていくよなー」
ランサーさんがそうごちる。
それにまだ短い期間でのセイバーさんの姿を見てきた私含めてアスナ達も「うんうん」と頷いていた。
士郎さんはそれで自転車でセイバーさんが向かったのであろうお寺の方へと走っていく。
でも、
「やっぱり高校生だから車とか運転できないのは時間ロスですよね」
「そ、それは言わないほうがいいんじゃないかなー……パルー」
おっと。のどかに突っ込まれた。
最近この子も強くなったよね。
さて、士郎さんはそれでもなんとかお寺まで到着すると、急いで急な階段を駆け上がっていく。
だけど、やっぱりセイバーさんはすでに戦っていたようで階段の上の方から猛烈な風圧が吹き込んできていて、なかなか士郎さんは前に進めないでいる。
「こりゃ……まずいで。魔力の供給がないのにこんなものを放出しとるんやなんて……」
こたくんの言葉通り、士郎さんの令呪にも兆しが来てセイバーさんの危機を察して士郎さんはなんとか階段を昇っていこうとして、
『誰だ!?』
士郎さんは誰かが茂みの中を駆けていくのを合図に、風圧は収まってなんとかセイバーさんの元へと駆け付けると、すでに一人になっているセイバーさんがドレスの上の鎧を魔力化してそのまま士郎さんのもとへと落ちてきた。
見るとそのままセイバーさんは気絶していた。
「やっぱ魔力の消費が激しいみたいだね……」
気絶したセイバーさんを担いで士郎さんは家まで帰ってきた。
するとそこには案の定凛さんが待ち構えていた。
セイバーさんを凛さんが運んでいっている間にお茶を入れている士郎さん。
ちょっとしてセイバーさんは起きてきたが、やっぱり士郎さんと言い争いを始めていた。
士郎さんは女の子に戦わせるくらいなら自分が戦うという。
もちろんセイバーさんは怒るが、凜さんは違うという。
純粋にセイバーさんが傷つくのが見たくないという、やはり自己犠牲からくるものを言い当てられて、
「ま、シロウはこうじゃないとね」
ま、士郎さんらしいね……。
そしてセイバーさんは妥協案としてある提案を立ててきた。
それは士郎さんを鍛えると。
「あー……ここから士郎さんは少し強くなっていくのかな?」
「いや、アスナ。この時点での士郎老師を中途半端に鍛えても意味はナイネ。セイバーさんは言うなら心構えだと思うネ。アスナとてそんなすぐに強くなったわけじゃないアル。安全に鍛錬できる日々があるのが前提で、しかし士郎老師は聖杯戦争中にそんな鍛える時間がそんなにあるとは思えないネ」
「そうでござるな……刹那。実際、この戦争の終盤では士郎殿はどの程度強くなっていたでござるか?」
そこで楓さんが今の今まで一度見た光景だからか傍観を決めている刹那さんに問う。
刹那さんは少し悩んだ風にしてから、
「そうですね。聖杯戦争終盤でもたとえ投影魔術という異常な力が使えるようになっていようとそれでも武に関しては素人に毛が生えたくらいの実力しかなかったかと」
「手厳しいけど、確かにそうとしか言えないのが真実かな?ね、シロウ」
《…………ノーコメントで》
イリヤさんの言葉に少し間を置いて士郎さんはそう言った。
刹那さんという戦闘に関してはエキスパートがいうのだから間違いないだろう。
「あー……それとセイバーが戦っていたのは山門だからアサシンの佐々木小次郎だろうな。俺も偵察がてらで一回戦ったからな」
「佐々木小次郎やて!?」
「佐々木小次郎ですか!?」
「こ、小次郎さんですかー……ッ!」
コタくん、夕映、のどかが興奮した表情で反応する。
ま、まぁ私も反応したいけど、今は冷静を勤める意識が勝った。
「そういえば、日本では有名な奴だったか……?」
「有名どころではないです。それはもう―――……」
そこから夕映の佐々木小次郎語りが始まったが、長くなりそうなので一同は無視する事になったみたい。夕映、南無。
「燕返しが有名な人ですー」
「そうやな! それじゃもしかして宝具もなんか!?士郎の兄ちゃん!」
《ああ。しかし明確に言えば燕返しは宝具ではなくただの技だし、名称も正確には【多重次元屈折現象】と言って第二魔法・並行世界の運営の一部の機能をただ暇だという理由で生涯刀を振り続けて会得してしまった三つの異なる剣筋を同時に発動するに至った魔剣らしい》
「よく分からん言葉があったけど、とにかくすげーってことやな!」
《まぁ、そうだな……》
コタ君の理解力に流石の士郎さんも苦笑気味。
だけど、私はなんとなくわかった。
第二魔法ってすごいんだねー。使える物なら使いたいものだ。
その時だった。
わたしの脳内でなにかチカチカする感触があったんだけど、これは一体……?
そんな奇妙な感触を少し残しつつ、話は進んでいく。
翌日士郎さんは凛さん達が学校に行く中、玄関でみんなをお見送りしていた。
やっぱり学校休むんだねー。
道場を綺麗に掃除して、いざ士郎さんとセイバーさんの竹刀での打ち合いが始まったんだけど、セイバーさんは容赦なく打ち込んでいく。
「せ、セイバーさんは容赦ないですね……」
「士郎さんも負けず嫌いだよね……」
そんな、ただ根性を叩き潰す仕方を繰り返していて、二時間。
士郎さんはそれでも耐え続けて、一旦休憩になって、士郎さんはセイバーさんに問う。
『セイバーが聖杯に願う事って何なんだ?』
それでセイバーさんは答えは『ある責務を果たす』と。
それと小声で「やり直したいだけかもしれない……」と。
「やり直したい、ですか……それってまるで」
ネギ君がそこで反応する。
やっぱり超りんの事でも思い出したのかな……?
「士郎さん、教えてください。セイバーさんてどこの英霊なんですか……?なにかこう、分からないんですけど胸がざわざわするんです。なにかは分からないんですけど、僕……いえ、まるで…………いえ、やっぱり言葉に出来ませんけどなにか漠然と否定されたような……」
《ネギ君……おそらく君はセイバーの正体を知って今の状態だけのセイバーを見たらきっとひどいショックを受けるだろう。だから自然と真名がわかるまでまだ教えないでおくよ》
「…………わかりました」
ネギ君もどこか納得はしていないが、引き下がった。
これも所謂ネタバレの範疇なのだろうという事か。
しかし、ネギ君がおそらくショックを受けるほどの英霊……過去をやり直したいと思えるほどの後悔を抱えている剣士……ネギ君の故郷はウェールズ……つまりイギリス。
イギリスで有名な英雄と言えば…………、……え?マジ?
もしわたしの考えが当たっていればセイバーさんって相当の大物じゃん!!
そんな人物が過去をやり直したいって……そりゃそうだ!
信じていた部下には裏切られて最後には息子に殺されて国も滅ぶ……。
もし、聖剣を抜くのが違う人物だったら……とまで思ってしまったって事?
そりゃネギ君の漠然とした反応にも納得だわ。
そのまま光景は再開されて、士郎さんは昼食を買いに商店街へと一人で向かう。
買い物を終えて帰ろうとしていたけど、そこで昼間だというのにイリヤさんが士郎さんの服を掴んできた。
戦いに来たんじゃなくてお話に来たという。
士郎さんは少し嫌そうだが、イリヤさんは無邪気に士郎さんに絡んでくる。
「なんか、この時のイリヤさんって少し世間知らず……?」
「ウッ、言うわね。しょうがないじゃない。私は日本に来るまでずっとお城で暮らしていたんだから」
そんな、話をしていて過去のイリヤさんは士郎さんに抱き着いていてどこか嬉しそう。
メイドも冬木の洋館にいるらしくて、小声でイリヤさんは、
「そういえば……セラにリズはどうしてるだろう……」
と言っている。
過去のイリヤさんも「バーサーカーが起きちゃった」と言って帰ってしまった。
それから家に帰ってきたら、凛さんも帰ってきて、なんか慎二さんにパートナーにならないか?と誘われたらしいんだけど、あまりにもしつこいので、
「それでグーパンと来ましたか。まぁ納得だね」
朝倉の言葉にそれでみんなもうんうんと頷く。
凛さんは慎二さんの顔面をグーパンして帰ってきたという。
慎二さんって節操ないねぇ……。
士郎さんも安心したのか洗面所に向かうのだけど、そこでラッキースケベ展開が!
なんとセイバーさんが服を脱いでお風呂に入ろうとしていたのだ。
まさにもう脱ぎきって裸の状態である。
士郎さんもすぐに顔を赤くさせて扉をすぐに閉めた。
んだけど……、セイバーさんは羞恥心というものがないらしく、せっかく士郎さんが閉めた扉を開けて外に出てくる始末で、
『まさか、セイバーは裸が恥ずかしくないのか!?』
必死に顔を逸らす士郎さんにセイバーさんは、
『私は女である前に騎士……そしてサーヴァントです。ですから恥ずかしがる必要など皆無かと』
それで士郎さんはもう必死に逃げていくのであった。
それで周りのみんなの視線がどこか冷たいかと……思われたのだが、逆に同情されていた。
「セイバーさん……あれはさすがに純情な高校生の士郎さんには目の毒だって……」
「騎士って類は羞恥心をどこかに置いてきたアルか?私は恥ずかしいからきっとすぐに隠れるネ……」
他にも色々言われていて、
《さすがに俺も今の現状は逆の意味で居た堪れないのだが……》
士郎さん、今回は南無。
でも、ラノベとかだとこういう展開って好感度が上がったら急に羞恥心を覚えてしおらしくなるもんじゃない!?
まだ、もう一回お風呂イベントが起こるわね!これは確信に近いわ!
それから今度は凛さんと魔術の練習を始めたけど、急に飴玉みたいなものを呑まされた。
なんと飴玉ではなく宝石だという。
凛さんがいうには魔術回路を作るためにスイッチを作るという。
その無駄を省くためだという。
それと凛さんの説明では、投影というものは物を複製するもので作ったものはすぐに消滅するという。なんか矛盾するなぁ。
それから一度横になって休んでいると、今度はアーチャーさんが士郎さんに話しかけてきた。
『凛は勘違いしている。天才には凡人な悩みが分からない。凛は優等生すぎるから落ちこぼれのお前にまともな教え方をしても無駄という事に気づかないのだ』
士郎さんは喧嘩を売られたと思ったのか、怒気を強めるが、アーチャーさんは構わずに言葉を続ける。
『一度しか言わないからよく聞け。戦いになれば衛宮士郎に勝ち目はない。なにをしようがお前はサーヴァントに太刀打ちできない』
『なに!?』
『ならばせめてイメージしろ。現実で敵わぬ相手なら想像の中で勝てる物を幻想せよ。お前に出来る事などそれくらいしかないのだから』
『…………』
『私もどうかしているな。殺すべき相手に助言などをするなど』
そう言ってアーチャーさんは霊体化して姿を消した。
士郎さんは意味が分からないと言った感じでもやもやしていた。
「ほー……?アーチャーの野郎、こんときから士郎にヒントを与えていたのか」
《まぁ、この時はただの嫌味としか感じられなかったんだけどな》
士郎さんとランサーさんがなにか分かりあったような会話をしている。
まぁ、わたしももう気付いているから内容は分かる。
だけど、どうやらネギ君は違う視点のようで、アーチャーさんの言葉を真に受けたのか、
「現実で敵わないなら……想像の中で勝てる物を幻想する……つまり、もっと強い魔法力と強力な魔法を会得するようにすれば……?」
「ぼーや……そういうのは自力がモノを言うのだぞ?まだ修行中の貴様が高望みな力を会得するのは段階が尚早だ。まずは私との訓練で1分は持つようになれ」
「は、はい!師匠!!」
と、すぐに正論で負かされていた。
ちょろいぞネギ君!!
そして、次の日も学校を休んで、またセイバーさんと打ち合いをしている士郎さん。
ちなみに凛さんも休んでいるようだ。
セイバーさんは言う。
『私は一度も自身を女性だと思ったことはないし、一度も女性として扱われたことはない。戦うためにこの世界に来たのです。性別を意識するなど無意味というものです』
分かっていたけど、うわー……。
過去の人達ってどんな価値観だったんだろう?
というか、もしかして指南役のおそらく高尚な魔術師がセイバーさんを女性として映らない様に魔術で隠ぺいしていたとか?
それだったら女性として扱われないのも納得する理由かもしれない。
女性が騎士では舐められる時代だったかもしれないしね。
そして、そのまま休みもなく凛さんの魔術の授業が始まる。
部屋には二桁を超えるランプが置かれていて、全部強化しろというお達しらしい。
それで強化していくが、一個も成功した試しがなく、士郎さんは「一個くらい成功しないと怒られるな……」と言葉を零している時に電話がかかってくる。
電話に出ると、相手はなんと慎二さんだった。
慎二さん曰く、
―――同じ悩みを持つものとして二人で話をしたい。
―――遠坂には教えるなよ?お前だけで学校に来い。
との事。
それだけでさっさと電話は切られてしまった。
「「「「罠でしょ!(アル)(ござるな)(やな)(ですね)」」」」
満場一致の感想である。
それでも士郎さんは人質でも取られたかのような面持ちで一人で学校へと向かっていってしまった。
学校に到着して、士郎さんはすぐに違和感に気づく。
今は休み時間のはずなのに、誰一人として廊下に出てきていないのだ。
だが、異変はすぐに起きてしまった。
突如として、士郎さんの周りの世界が赤く染め上がって、士郎さんは息も絶え絶えになって苦しそうだ。
「な、何が起こったの!?」
「わ、わかりません……」
「へぇ……そんな事が起きていたんだな。昼間だというのに度胸あるじゃねーか……」
ランサーさんだけはそう軽口を話しているが、瞳は冷え冷えに冷えていた。
士郎さんが教室のドアを開けて中を見ると生徒全員がまるで死んでいるかのように全員各々に倒れ伏していた。
「ひっ!!」
「おい、やべぇぞ!!」
冷静な千雨ちゃんですら動揺を隠せないのだからよっぽどだろう。
士郎さんの令呪も危険信号を発しているのか点滅を繰り返している。
そこに、
『よぉ、衛宮!』
と、もう何度も聞いているのにここ一番で憎たらしく聞こえてくる声の主は、やはり慎二さんだった。
慎二さんは言う。
―――お前が来たと分かったから結界を発動させた。
―――僕とお前、どちらが優れているのか遠坂に思い知らせる。
―――お前たちが悪いんだよ!一緒に戦おうって誘ったのに断ったりするから!
―――やめてほしかったら土下座をするのが筋ってものじゃないの?
そして藤村先生にしたことを聞いてわたしは怒りがわき上がる思いだった。
自身も辛いだろうに助けを呼んでと慎二さんに縋った藤村さんを蹴り飛ばしてしまうだなんて……。
「こいつ……正真正銘のクズやな」
コタ君が今まで見たことのない程の怒りを表情に込めてそう言った。
アスナ達も無言で怒りを溜めているようだ。
それは過去の光景の士郎さんが一番感じている事だろう。
『これで最後だ……結界を止めろ慎二』
それでもなお止まらない慎二さんに士郎さんは吶喊していく。
慎二さんが本から魔術を放つが、セイバーさんの特訓が効いたのか、それを軽々と避けていく士郎さん、そして避けられて恐怖の表情をする慎二さんはライダーを呼んだのか鎖が迫ってくるがなんとか交わす士郎さんだけど、次の一撃は交わせずに釘の攻撃を食らい続ける。
慎二さんがさっさと殺せと言うからライダーは串刺しをするかのように士郎さんに釘を刺した。
だけど逆に釘の方が刃毀れをしていて、
『驚いた……私の刃物では殺せない。なら……!』
ライダーの蹴りが士郎さんを炸裂して恐らく三階の窓から落ちていく士郎さんは、こんなところで死ねない……と思ったのだろう。
令呪が刻まれている手を空へとかざして叫んだ。
『来い!セイバー!!』
一画目の令呪は使用されて、魔法陣が展開されて完全武装のセイバーさんが士郎さんを抱えるように登場する。
さぁ、ここからが本番だ!という熱い展開になってきたね!
…………それはそれとして、こんな時だけどわたしの直感がまたキュピーン!と音を上げた。
題して『バッドエンドその5』。
令呪を使わずにそのまま地面へと落下した士郎さんが、なぜか体内から出現した剣の群れに串刺しにあうとかいう意味不明な光景を幻視したのであった。
ちなみに『バッドエンドその4』はさっきのライダーとの攻防でライダーを無視して慎二さんを倒そうとして、人間の弱点である延髄に釘を刺されてそのままぽっくりだったりしたり……?
後書き
『吸血鬼になったエミヤ』を読んでいる方もいるでしょうが、あちらを書いているとなんか内容が内容ですからカルマが溜まっていく気分にされるので息抜きも大事ですよね。
次回、慎二との決着までを書こうと思います。
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