レーヴァティン
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第二百二十四話 大雪はその十一
「そのことを思いますと」
「妥当な刑罰もな」
「考えるべきであります」
「そうだな、そして俺も刑罰は判決よりもだ」
「軽くしているでありますな」
「悪くて現状維持だ」
これは重罪人に対してのみである。
「悪人は容赦せずとも過ちはな」
「寛容にでありますな」
「そうすべきだからな」
「その方がこちらも気が楽であり」
「また幕府の寛容や慈愛の喧伝にもなる」
「悪人には容赦せず」
それと共にというのだ。
「過ちには慈悲を見せる」
「その両方を行うことがな」
これがというのだ。
「大事だ」
「その為に」
「大抵の刑罰は軽くし」
「悪くて現状維持で」
「重くすることはしない」
決してというのだ。
「評定所もわかっているから重罪人にはな」
「死罪でも重い処罰にしているであります」
「八つ裂きや皮剝ぎや鋸引きにな」
「そうしているであります」
「だからだ、そのままだ」
刑罰はというのだ。
「重くしない、あの男の轍は間違っても踏まない」
「踏めばああなるやも知れないであります」
「あの男がこの世界に来て世界を救えるか」
「無理でありますな」
「必ず徳を失い途中で滅んでいた」
そうなっていたというのだ。
「とかく硬直した考えしか出来なかったというしな」
「そうらしいな」
幸正も言って来た。
「そのまま埋もれると思っていた時に学問や陶芸、和歌、茶道、禅に打ち込んだらしいが」
「常に完全を求める様になったらしいな」
「それが悪く出てな」
「非常に硬直した考えしかだ」
本質的に芸術家であったのではとも言われている、事実残した陶芸品は見事なものが多かったりする。
「出来なかった」
「そこも問題だった様だ」
「そうしたことでは」
英雄は厳しく責める声で語った。
「途中でだ」
「自ら身を滅ぼしていたな」
「そうだっただろうな」
「悪人だったか」
幸正は真剣な顔で述べた。
「そう言われるとな」
「どうかわからないな」
「善人も罪を犯す」
「それも人の世だな」
「浄土真宗では善人は罪を自覚していない者だと言う」
「人は誰でも罪を犯す」
「ならだ」
このことから考えると、というのだ。
「善人は何か」
「罪を自覚していない」
英雄も言った。
「そうした者だな」
「しかし悪人はな」
「罪を自覚している」
「そうした者になる、人は誰でも罪を犯す」
「善人でもな」
「浄土真宗ではそうした考えだが」
「善人をまた罪を犯すなら」
英雄は印を押し続けている、そのうえで言うのだった。
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