| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

イベリス

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十三話 愛と二人でその十

「それでもね」
「私利私欲には使わなかったのよ」
「意外ね」
「それでその会議に出たら」
 作戦会議にというのだ。
「かなりね」
「異様だったのね」
「ヒトラーはね」
「そうした人だったの」
「あの時代色々な人が煙草吸ってたけれどね」
 今よりも遥かに喫煙者が多かったというのだ。
「けれど大の煙草嫌いで」
「吸わなかったのね」
「色々言われてる人なのは事実でも」
 このことは事実だがというのだ。
「私人としてはね」
「そんなに悪い人じゃなかったの」
「人種的偏見は強かったわ」
「それがナチスよね」
「社会主義を掲げて」
 ナチスはドイツ国家社会主義労働者党の略である、自由経済を制限し労働時間を短縮し福祉や教育に力を入れた。雇用も確保したそれはまさに社会主義政策であった。
「そしてね」
「人種政策もしたわね」
「ユダヤ系やロマニの人達への迫害もしたし」
「身体障害者の人達もよね」
「迫害したけれどね」
 虐殺もした。
「しかしね」
「それでもなのね」
「私人としてはね」
「真面目な人だったの」
「趣味は読書と音楽鑑賞でね」
「その二つなのね」
「どんな難しい本も読破して」
 このことはヒトラーを間近で見て来たドイツ軍の名将グーデリアンが彼の自伝でも書き残している。
「そして音楽もね」
「好きだったの」
「ワーグナーとかね」
「ああ、ニーベルングの指輪の」
「あの人の音楽が好きで」
 それでというのだ。
「今言った通りお酒も煙草もしなくて」
「菜食主義者で」
「女性にも清潔だったの」
「本当に真面目だったのね」
「あと馬とか犬が好きで」
 競馬も好きだったというがギャンブルが好きだったという話はない様だ。
「動物愛護もね」
「していたの」
「そっちにも積極だったのよ」
「本当に悪い人じゃなかったのね」
「子供にも親切だったしね」
「ううん、イメージ違うわね」
「とんでもないことをしたけれど」
 独裁者としての政策はそうだったがというのだ。
「お付き合いする分にはね」
「悪い人じゃなかったのね」
「そうだったのよ」
「意外ね」
「元々画家になりたかったしね」
「そのことは有名ね」
 咲も知っていることだ。
「もうね」
「それでも落ちてね」
「ああなったのね」
「まあああした人は出たかもね」
 ヒトラーが美大に受かって彼の望み通り画家になり夢を適えてもというのだ。
「ドイツにね」
「出たかしら」
「だってドイツ大変だったから」
 一次大戦の後のこの国はというのだ。
「もうボロボロだったでしょ」
「戦争に負けて物凄い賠償金課せられて」
「それで世界恐慌もあってね」
「もうどうしようもなかったわね」
「おかしな犯罪者も出たしね」
 一次大戦後のドイツは異常犯罪者が目立つことでも知られている、フリッツ=ハールマン等がそうである。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧