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潮騒の中で

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第五章

「何か急に泳げなくなったからな」
「助けたんだな」
「咄嗟に」
「そうしたのね」
「左足に急に凄い痛みが走って」
 黒部は意識はしっかりとしていた、そうして吉永に肩を担がれたまま話した。
「それでなの」
「?凄い腫れてるな」
「まさかと思うけれど」
「クラゲ?」
「それか魚か」
「それはわからないけれどな」
 それでもとだ、水泳部の顧問がここで言った。
「何はともあれ刺されたんならすぐに病院だ」
「それで診てもらうことですね」
「足を」
「そうした方がいいですね」
「クラゲでも魚でもな」
 どれでもというのだ。
「毒だったらすぐに手当てをするんだ、いいな」
「はい、それじゃあですね」
「すぐに病院にですね」
「行くべきですね」
「先生は車に乗って来たからな」
 水泳部の顧問が言ってきた。
「だからすぐに病院に運ぶぞ」
「わかりました」
「じゃあお願いします」
「黒部さん病院に連れて行って下さい」
「そうするな」
 先生が言うとだった、彼女の肩を抱えている吉永も言った。
「俺も」
「付き添ってくれるか」
「勝負しましたから」
 それでというのだ。
「そうします」
「そうか、それじゃあな」
「いいですか」
「ああ、むしろ付き合いたいとか言ってな」
 それでとだ、先生は吉永に答えた。
「来ないとかな」
「駄目ですね」
「そんなこと言うなら絶対に付き合うな」
「そうなりますね」
「だからな」
 それでというのだ。
「お前も来い」
「そうします」
「それでこそだ」
 先生は彼に笑顔で言った、こうしてだった。
 吉永は黒部に付き添って病院に行った、その彼女を診察した医師はこう言った。
「クラゲですね」
「クラゲに刺されたんですね」
「はい、この季節結構海にいますから」
 それでというのだ。
「こうしたこともあります」
「そうですか」
「ただ命に別状はありません」
 医師はこれは大丈夫だと話した。
「ただ腫れているだけで」
「それだけですか」
「痛いでしょうが」
 それでもというのだ。
「薬は出しますしそれだけです」
「後は痛みが引いたら」
「心配はいりません」
 黒部に笑顔で話した、そして実際にだった。 
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