昔の江戸っ子爺さん
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第三章
「お風呂もゆっくりよ」
「普通の温度のお湯に」
「そうすべきっていうのね」
「それが身体にいい」
「そうだっていうのね」
「そう、火事と喧嘩は江戸の華とか」
これも義龍がよく言う言葉だ。
「それで宵越しの銭は持たない、何でも竹を割ったとかね」
「そうした風なのね」
「威勢がよくて」
「それであっさりしてるのね」
「そう、あっさりしてるのはね」
このことはとだ、円香も認めた。
「事実よ」
「それって恰好よくない?」
ここで友人の一人がこう言った。
「むしろ」
「そうよね、あっさりして竹を割ったなんてね」
「いいじゃない」
「もうそんな人減ったしね」
「江戸っ子じゃなくて東京の人って感じで」
「それでね」
「かえっていいわよね」
他のクラスメイト達も言った。
「むしろな」
「一周回ってね」
「裏表ないし」
「人間としてね」
「あっさりしていて」
「それじゃあ」
「いや、よくないわよ」
円香はどうかという顔で述べた。
「不健康でしょ」
「噛まないし心臓に悪いお風呂の入り方で」
「それでっていうのね」
「だからなのね」
「円香ちゃんとしてはなのね」
「そうよ、というか皆いいって言うけれど」
それはというのだ。
「何処がいいのよ」
「いや、裏表ないでしょ」
「腹黒さとかないでしょ」
「それで気風もいいでしょ」
「明るくて」
「腹黒い?それはないわ」
円香が見てもだ。
「何一つとしてね、気風もいいし」
「そして明るい」
「そうなのね」
「それじゃあね」
「かなりいいわよ」
「かえって恰好いい」
「そう思うわよ」
こう円香に言うのだった。
「だからね」
「円香ちゃんもそう言わないでね」
「ひいお祖父さんのこと認めたら?」
「そうしたら?」
「いや、正直困るから」
円香は自分の素直な気持ちを述べた。
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