女性の住職
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第一章
女性の住職
住田重美出家名を青明はもう還暦になる女性である、茨城のある寺の住職である。近所の高校に通っている荒木道夫は彼女の話を聞いてこう言った。
「女の人でも住職なんだな」
「そうしたお寺もあるんだよ」
クラスメイトで同じ野球部で三遊間を組んでいる藤原義彦が答えた。二人共髪の毛は短くしていて色は黒だ。だが荒木は細い目で長方形の顔で耳が大きい。藤原はホームベース型の顔で丸い目で唇は小さい。二人共背は一七五程だがショートであるせいか藤原の方が細い。
「中にはな」
「そうなんだな」
「尼さんだっているだろ」
藤原は尼僧の話もした。
「だったらな」
「女の人の住職さんもいるか」
「そうだよ、そりゃ昔は男の人ばかりで今も男の人の方が多いけれどな」
それでもというのだ。
「女の人が住職のお寺もあるってことは覚えておけよ」
「ああ、それでその住職さんどんな人なんだ」
荒木は今度はこのことについて言った。
「何でも立派な人らしいぞ」
藤原はすぐに答えた。
「物凄く徳のあるな」
「いいお坊さんなんだな」
「そうらしいな」
「そうか、それじゃあな」
荒木はその話を聞いて述べた。
「一度会ってみたいな」
「その人とか」
「ああ」
是非にというのだ。
「やっぱり人間立派な人と会うべきだろ」
「それはな」
その通りだとだ、藤原も頷いた。
「碌でもない奴と会うよりな」
「碌でもない奴と会ってもいいっていうけれどな」
「何でだよ」
「だからそうした奴になりたくないって思うだろ」
ああはなるまいと、とだ。荒木は話した。
「そう思うだろ」
「反面教師ってやつだな」
「それだよ、だからな」
それでというのだ。
「碌でもない奴と会うのもな」
「いいか」
「ああ、だからな」
それでとだ、荒木はさらに言った。
「それもな」
「いいか」
「そうだろ、しかしそうした奴に会うよりもな」
「いい人と会う方がな」
「いいのは事実だよな」
「ああはなるまいも必要だけれどな」
藤原も反面教師の存在価値を認めて述べた。
「それでもな」
「それ以上にな」
「ああなりたいだな」
「こでないといけないだな」
「しう思うことこそな」
まさにというのだ。
「大事だからな」
「それでか」
「ああ、是非な」
ここはというのだ。
「その住職さんにもな」
「会いたいんだな」
「だからな」
それでとだ、彼はさらに言った。
「今度な」
「その人に会いに行くか」
「お寺お邪魔するな」
「そうか、じゃあ俺もな」
藤原は荒木の言葉を聞いて言った。
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