FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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らしくない
前書き
個人的な私情により完全にモチベーションを落として更新が遅れておりました。
私的にようやく心が落ち着いてきたので新しく進んでいこうと思います!
「へぇ!!思ったより広いね!!」
俺たちが今いるのはこの街中に張り巡らされているという通路。予想していたよりも幅があることに興奮している俺はそう口走っていた。
「昔の人たちが物の運搬を楽に行うために作っていたみたいよ。最近はほとんど使われていないけど」
「その割に古びている感じがしないですね」
「前に俺たちが使ったことがあるからな。今でも避難場所として確保してるし」
避難場所にするなら崩れたりしないように管理をしておかないといけない。だから予想していたよりも綺麗になっているわけか。
「でもよぉ、この通路は以前使ったから奴らも各出口に警備を配置してるはずだぜ?」
「そうね。おまけに相手に動向が漏れてる状態で、この通路を使ったら・・・」
一網打尽にされる可能性が高い。ユウキさんとジェリーはそう言いたいんだろう。でも、その考え方は間違っていない。
「いえ。それでいいんです。むしろその方がいい」
「「「「「??」」」」」
俺の言葉に意味がわからず顔を見合わせる皆さん。彼らの気持ちもわかるが、今回はこれがいい。むしろ相手がわかっていてくれなければ意味がないと言ってもいいだろ。
「さっき言ったものは準備できましたか?」
「あぁ。結構量もあるから問題ないと思うぜ」
ずっしりと重そうな箱を数個持ってきてくれたミハエルさんたち。思ったよりもずっと量があって驚いたけど、これくらいあった方がいいかな?
「よし、じゃあ準備も整いましたし・・・」
全員が身構えたのをすぐに感じた。やっとこの絶望的な状況から逃れられるのだろうという期待からか、すぐにでも動き出したいというのがわかる。
「一休みしてからいきますか」
俺がそう言うと一斉にずっこけていたのがわかった。そりゃそうだよね、ここまで入念に準備させておいて突然そんなこと言われたらそうなるよね。
「すぐにでも行くんじゃねぇのかよ!!」
「先手で動かないとあいつらにまた待ち伏せされちゃうよ!!」
ユウキさんとジェリーさんの言葉に周りの人も頷く。普通だったらそう考える。しかし、俺の考えは全く違う。
「いえ、大丈夫です。むしろその方がいい」
「え?」
「どういうこと?」
疑問符を並べられて頭をかく。反対されそうだから本当は言いたくなかったけど、いざやる時にごねられても厄介だから、先に話しておくか。
「実はですね・・・」
ウェンディside
ようやく作戦の全貌を教えてくれたシリル。でも、それを聞いた皆さんは困惑の表情を浮かべていました。
「マジで?」
「それを俺たちがやるのか?」
あまりにも危険な指示に顔を見合わせる皆さん。でも、シリルはその問いに力強く頷きます。
「はい。こうでもしなければ、今の状況を打破することはできません」
その瞳に宿る意志の強さにざわついていた皆さんが一斉に静かになります。確かに彼の考案した作戦は効果的ではあると思います。でも・・・
(全然シリルらしくない作戦・・・どうしたんだろ?)
普段の彼なら絶対に思い付かないような作戦。それを聞いて以前の嫌な記憶が蘇ります。
真っ白な翼を背にしているのに、まるで悪魔のような表情を浮かべる少年。荒くなった言葉遣いと周囲を気にしない攻撃を放っていたあの時の姿と、今の姿が重なってしまいます。
ギュッ
「??どうしたの?ウェンディ」
心配して思わず彼の服を摘まむと、肝心の彼はキョトンとした表情を見せます。その姿は、あの時の彼とは全く異なっており、少し安心しました。
「ううん。なんでもない」
たぶんぎこちない笑みを浮かべていることでしょう。無理に作ったそれを見て、シリルは首をかしげますが、今はそれよりも皆さんにさらなる詳細を話すことにしたようです。
(大丈夫・・・あの時だって問題なかったんだから)
彼はいつだってなんとかしてきました。あの時も色々あって元に戻れましたし・・・でも、この心の中にある不安は一体何なんでしょうか。
第三者side
「・・・すぐに配置を変えられるか?」
「何かありましたか?」
黒髪の青年の問いにわずかに白髪が混じり始めている中年の男が答える。質問に質問を返された彼は特に表情を変えることなく小さく頷いた。
「以前市民たちが襲撃に使ってきた地下通路・・・あの出口に人を固めろ」
「わかりました。おい!!」
「はい!!」
すぐに部下を向かわせる男。指示を受けた青年はすぐに他の者に指示を出すために部屋を出る。
「・・・?」
「今度はどうしました?」
外の様子を見ていた彼の表情が曇ったことで同じ景色を見ようと横に立つ。だが、案の定そこには何もいない。
「追加の指示だ。出口からはある程度距離を取っておけ。蓋が開いたからといって、すぐに突っ込まないように」
「承知しました」
通信用の魔水晶でその指示をそのまま伝える。それに部下たちは納得していない様子だったが、とにかく指示通りに動かすことしか彼にはできない。
(理由を教えてくれればもっとしっかり動かせるのに)
言葉数の少ないリーダーに思わず苛立ちが立ち込める。窓に映る彼を睨み付けようとした時、不意に青年がこちらを向いたことで体が震えた。
「不満か?」
「い・・・いえ」
「嘘をつかなくていい。君たちの思考は全部わかっている」
ニヤリと笑みを浮かべる彼を見て額から汗が止めどなく流れ出る。先ほどまでの静かな雰囲気から一転したオーラを纏った姿を見て、彼はただ黙することしかできない。
「別に従いたくないなら好きにしてくれ。ただ、何かあった時はそれ相応の罰を与えるだけだ」
「相応の罰とは・・・」
何をされるのかはすぐにわかった。かつての自分たちのリーダーが歯向かった際に起きた悲劇が脳裏をよぎる。
「私が直接指示を出してきます」
嫌な汗が止まらない。恐怖に震えながらも懸命に彼はその部屋から飛び出すと、一目散に走り去っていった。
「やれやれ・・・これだから人間は・・・」
大きなタメ息をついて目を閉じる。その瞼の裏に映るのは果たして何なのか・・・それは彼のみしか知ることはできない。
シリルside
タッタッタッタッ
先頭のユウキさんたちに案内してもらいながら地下通路を駆けていく俺たち。しばらく進むと別れ道が現れる。
「よし。じゃあここで別れるよ。あとは時間が来たら全員予定通りに動いて」
「「「「「了解!!」」」」」
連絡を取る手段が生憎だがなかったため、時間を決めて対応するしかなかった今回の作戦。そのため、時間に遅れないように・・・ただし、早く着きすぎて相手に逆に奇襲を仕掛けられないようにとペースを調整しなければならない。そのため、ペースメーカーとしてジェリー、ミハエル、ウェンディをリーダーにしたグループ。そしてもっとも重要なグループは俺とユウキさんをリーダーに据えていた計4グループになっている。
「シリル!!」
「ん?」
自分の進むルートを行こうとしたところでウェンディに呼び止められる。その彼女の表情は明らかに硬い。
「・・・無理しないでね」
「え?うん。大丈夫だよ」
何か迷ったような間があったけど、今は時間がない。俺はそれだけ答えてすぐに先を行くユウキさんたちを追いかける。
「大丈夫だよね・・・シリル」
彼女のボソッと呟いた声は聞こえたが、その内容まではわからなかった。俺はそのまま、振り返ることもせずに現国王がいる城へと向かっていくのであった。
後書き
いかがだったでしょうか。
次からは本格的にシリルの作戦が進んでいくと思います。
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