旱魃の中で
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第二章
後日ハーグは同僚達に象のことを話した。
「あの象雌でマリーと名付けられてな」
「そうしてか」
「今はセンターで保護されてか」
「そこで暮らしているか」
「ああ、それでな」
それでというのだ。
「今はすくすく育っているそうだ」
「それはよかったな」
「助かってよかったな」
「本当にな」
「ああ、よかったよ」
ハーグ自身もこう言った、彼等は旱魃の中で自分達が助け出した象の赤ん坊が今は幸せに暮らしていることを喜んだ。
その後でだ、ハーグは今度はヨハネスブルグから見て相当遠いケニアに仕事に行った、この時のケニアは旱魃で。
彼は乾ききった周りを見て眉を顰めさせて仕事で来た自然保護センターのスタッフに対して話した。
「前ボツワナが酷くてな」
「あそこ以前旱魃で大変でしたね」
「洒落にならない状況見たけれどな」
「今は我が国が、ですね」
若いアフリカ系のスタッフはハーグに暗い顔で話した。
「この通りです」
「旱魃でか」
「大変です」
「全く、どうにかなって欲しいな」
「自然のことは」
「そうだな」
「私緒そう思います、ですが」
ここでだった、スタッフはハーグにこう話した。
「そんな中凄い人がいます」
「凄い人?」
「来られました」
スタッフがこう言うとだった。
一台の給水タンクを付けたトラックが来た、そしてだった。
そのトラックから中年のアフリカ系の男性が出て来てセンターの中の多くの生きものに水を振舞っていた、スタッフはその彼を見つつハーグに話した。
「パトリック=キロンゾウ=ブワルワさんといいまして」
「センターの生きものに水振舞ってるな」
「わざわざトラックを運転して」
「水も調達してか」
「タンクも、ガソリン代も出されて」
「全部自前でか」
「結構なお金もかけて」
手間だけでなくというのだ。
「それで、です」
「ここの生きものを助けているんだな」
「旱魃から」
「凄い人がいるな」
ハーグは唸って述べた。
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