東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.
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招かれし者(松上敏久)
挨拶まわり
翌日、博麗神社から人里へ続く道を歩く霊夢と敏久の姿があった。
敏久「悪いな、ついてきてもらって」
霊夢「なんのなんの、お安いご用よ」
朝食後、敏久は『これからここで暮らすんだし、ご近所さんとは仲良くなっておいたほうがいいわよ』という霊夢の助言で挨拶まわりをすることにした。
それならばと霊夢も道案内も兼ねて一緒に行くことになった次第である。
ー
ーー
ーーー
出発してから1時間。ようやく人里に着いた。
道の両側には店舗がひしめきあい、大勢の人が忙しげに道を往来している。和装の人が大半を占め、洋装の人はほんのわずかだ。
その様子は幕末から明治初期にかけての日本の姿そのものだった。
霊夢「ここが寺子屋よ。半人半獣の先生が勉強を教えているの」
霊夢が指差した先には「志学館」の看板が掛かった建物があった。中から子どもの元気な声が聞こえてくる。
敏久「後ほど伺おう。先に阿求のところへ案内してくれ」
霊夢「分かったわ、こっちよ」
活気に溢れるメインストリートを抜け、2人は裏道に入っていった。
ー
ーー
ーーー
稗田邸は志学館から歩いて2分のところにあった。
広々とした平屋建ての家で一人で住むには何かもったいない気がする。庭にはたいそう立派な枯山水まであり、まるでどこかの日本庭園に来ているかのようだ。
阿求「松上様、初めまして。私が九代目阿礼乙女・稗田阿求でございます。本日は遠い所からようこそお越し下さいました」
紅色の髪に椿の花簪を挿した和服姿の少女ーーー稗田阿求が上品な立ち振舞いでお辞儀する。
敏久「いや、そんな改まらんでええよ。あと俺のことは名前で呼んでくれ」
阿求「承知いたしました」
枯山水が見える応接間。そこに2人は通され阿求と面会している。
霊夢には緑茶が、敏久には紅茶がそれぞれ出された。
阿求「あの、質問してよろしいでしょうか?」
敏久「何だいや?」
阿求「敏久さんは先ほど『外界から来た』と仰いましたが、外界とはどのような場所なのですか?」
敏久「ああ、向こうの世界はーーー」
そのとき、玄関で声がした。
?「阿求はいるか?私だ、慧音だ」
阿求「慧音さん…。すみません、少し席を外しますね」
阿求はそう言うと玄関へ小走りで向かった。
ー
ーー
ーーー
数分後、阿求が妙な角帽を被った髪の長い女性と共に応接間に戻ってきた。
阿求「お待たせしました、ご紹介します。こちらは寺子屋で教師をしておられるーーー」
慧音「上白沢慧音だ。敏久といったか?君のことは阿求から聞いたぞ。よろしくな」
敏久「おう、よろしく。俺も阿求や慧音のことはよう知っとるけえ別に自己紹介はいらんよ」
阿求「何で私たちのことをご存じなのですか⁉︎」
その問いに霊夢が答える。
霊夢「ああ、それはねーーー」
※少女説明中・・・。
霊夢「ーーーというわけなのよ」
慧音「ふむ、私たちが起こした異変をゲームにするとは外界人もなかなか面白いことをするものだな!」
阿求「実に興味深いですね…!」
敏久「いやいや、そもそも君たちは(スキマ送り)の人物で、この幻想郷も所詮は(スキマ送り)の世界に過ぎないんだが」
・・・。
慧音「今、何か言葉が抜けていなかったか?」
敏久は何度か先ほどの言葉を繰り返すが、なぜかある部分で言葉が抜け落ちてしまう。
そのうち敏久の脳内で『夢を壊しちゃダメよ?』とか『この幻想郷では常識に囚われてはいけないのです!』などという声が聞こえてきたので、彼は別の話題に切り替えた。
敏久「ところで慧音は何をしに来たんだ?」
慧音「私を知っているのなら分かるだろう?阿求に資料を借りに来たのさ」
阿求がいつの間にか本が山ほど入った紙袋を持ってきていた。
霊夢「すごいわね!これ、全部資料なの?」
慧音「ああ。歴代の阿礼乙女が編纂した幻想郷縁起から外界の本まで色々あるぞ」
敏久「外界の本って例えばどんな本だ?」
慧音「そうだな…『古事記』に『万葉集』、『平家物語』、『古今和歌集』、『太平記』、『三国志』、『山月記』、『ハリー・ポッター』、『海底二万哩』、『東方儚月抄(とうほうーぼうげうしょう)』、『博多っ子純情』、『ウルトラマン大全集』などだ」
敏久「慧音は国語も教えているのか?」
慧音「ご名答。文学は歴史とも深い繋がりがあるからな。教えていてなかなか面白いぞ。私自身も勉強になるしな」
敏久「そ、そうなのか…」
その後も話しが尽きることはなかった。
ー
ーー
ーーー
夜になってようやく霊夢と敏久は神社に帰ってきた。話しが予想以上に弾んだことと稗田邸で夕食をご馳走になったこともあり、それで帰りが遅くなったのだ。
霊夢「すっかり遅くなってしまったわね…。明日はしっかり働いてもらうから敏久もそのつもりでいなさいよ?」
敏久「ああ、分かったよ」
2人は交代で風呂を済ませ、それぞれ床に就いた。
敏久「お休み」
霊夢「ええ、お休みなさい」
ーーーこうして一日は過ぎていった。
~おまけ~
霊夢「作者、最後のほう投げやりになってないかしら?」
福岡市民「眠かったっちゃけん仕方なかろうもん!」
敏久「博多弁で開き直るなや!」
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