| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

4-⑵

 僕は、8月に入って、スーパーの品出しのバイトをやっていた。9月中頃までの予定だ。美鈴とは、あれ以来、会うことが出来なかったが、毎日連絡は取っていた。

 9月の初めに越してきて、店のオープンも中頃の予定だと言っていた。駅からは、歩いて10分ほどで少し、離れているが、車だと便利な所なので駐車場も確保してあるらしい。店の中は、テーブル席が5客でカウンターに8席の小じんまりした店だ。だけど、客席同士の間は、余裕を持たせたということだつた。

 9月になって、美鈴が越してきた時、引っ越し祝いをやろうとなったが、「それどころじゃぁ無い」と美鈴は、大変そうだった。店の内装も遅れ気味だし、什器類との納品のタイミングが合わないし、やることがいっぱいあって、少し、イライラしていた。

 僕達は、出来ることを手分けして、手伝うことにした。僕と昇二で開店時の原料、調味料の必要な物の計算と発注書の作成、光瑠は客席サービスをする人の採用面接、そして、光瑠の妹の明璃ちゃんには、メニュー表とか開店チラシの作成を専門とは違うが、友達に協力してもらうからと言って任せていた。美鈴は、工務店との打ち合わせとか、店内のレイアウトにかかりっきりだった。

 開店日の前日、木曜日。僕と昇二、明璃ちゃんとで駅前でチラシを配った。開店から3日間はチラシ持参の人ドリンク各一杯無料という内容だ。文句は「懐かしのナカミチが復活します」というものだったが、もう、知っている人も少なかった。だけど、無料券が付いているので、受け取ってくれる人も多かった。

 その日の夜、プレオープンとかで、僕達に好きな物をオーダーしてくれと言って、招待された。僕達より先に、工務店の4人カウンターに座っていた。僕と昇二は当然のごとく、ステーキを光瑠はクリームコロッケと鯛のハーブ焼き、明璃ちやんはハンバーグと海老フライのセットを頼んだ。新しく入った女の子がオーダーを聞いてきた。短大を卒業して勤めたが、合わなくて辞めたらしい。この娘をどうして、光瑠が薦めたのかは、わからなかったが、少し、ポッチャりめの愛想のいい娘だった。

舞依(まい)さん 2番テーブルのお客様 オーダーを復唱するの忘れていたわよ 落ち着いてね」と、美鈴が厳しく言っていた。カウンターの中では、美鈴のお父さんと若い男の人が二人で調理していた。男の人は、松永さんの所で働いていたということだった。

 料理はおいしかった。僕は、懐かしい感じもした。みんなにも、評判は良かった。タイミング的にも、4人のものが、ほぼ同時に運ばれてきて、美鈴が気配りしているのがわかった。

「明日は、僕と昇二で、各家にチラシ入れて来るヨ」と、美鈴に伝えると

「ありがとう でもね、新聞の折り込みもしてるから、大丈夫だと思うけど」と、美鈴が言っていたけど

「最近は、新聞取っていない人多いし、マンションなんかも独身多いから さーっと配って来るヨ」

「うん 助かるわー 私、これから、お店内で打ち合わせするから みんな 今日は、ありがとう」

 翌日、10時オープンだ。僕達は、1時過ぎに、一度戻ってみた。洗い場に光瑠が控えていたので、様子を聞いてみたが

「午前中は4組7人だけなのよ 大丈夫かなぁー 私、後でお母さんにみんなで来るように電話するわ」

「そうかぁー 俺も、電話しておくわー」と、昇二も心配していた。

「さあ もう少し、マンション中心に配るぞー 大学の前でも、配ってみるかー 女の子なら好きそうかもな」と、僕が言うと、昇二も反応して賛成した。

「3時から、休憩時間で賄い出るから戻ってきなさいよ」と、光瑠に送り出された。

 店に戻る前に大学の前に行って配っていると、昇二が女の子の2人連れに話しかけていた。

「この店 私 知っているわ 小さい頃、よく連れて行ってもらった おいしかったのよー 色んなお料理あってね」と、言っている。

「そうなんだよ 今日だったら、君達、可愛いし、サラダおかわりサービスするよ 友達さそってきてよー」と、昇二は調子のいいこと言っていた。

「昇二 知らんぞー あんな勝手なこと言って」

「いいやん 反応良かったよ きっと、来てくれるよ」と、その後も、女の子中心に配っていた。3時を過ぎる頃、店に戻った。松永さんも、今日は、店を閉めて、応援に来たとのことだった。みんなで、賄いを食べていたが、雰囲気が暗い。

「まぁ 開店間際なんて、こんなもんだよ 味は良いし、値段も安いし、徐々に評判になるから、心配しないで大丈夫だよ」と、松永さんは、元気づけていた。

「そうだよ いっぱい チラシも配ったし なぁ 蒼」

「うん 反応は良かったから 来るよ みんな」と、僕も、少し、不安だったが

 5時のオープンの時間になって、直ぐに、昇二が誘っていた女子大生が4人でやってきた。昇二はそれを見て、あわてて、美鈴にしきりに謝っていた。

「蒼も一緒だったんでしょ あの人等 可愛いもんね 仕方ないよね」と、美鈴は冷たい言い方だった。案の定、4人はサラダもおかわりしていたが、帰りには、

「とっても おいしかったです みんなにも、宣伝しておきますね」と、言って帰って行った。昇二は、また、美鈴に頭を下げていたが、チャッカリ連絡先を交換していたみたいだった。

 その後は、光瑠のお母さんが友達2人と来て、「昔、良く、来たのよねぇー」とお互い言っていた。後は、ポツポツと2組の家族と独り者が2人来店したきりだった。僕と昇二も洗い場に居たが、暇なので、もう、引き上げようかと言って居た8時頃、あの肉の卸会社の所長さんが家族で駆けつけてくれたみたいだった。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧