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ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜

作者:むぎちゃ
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第七十四話 迷いの森

 
前書き
今年中にはこの小説完結させられたらいいな…………。 

 
 河や山を乗り越え、鬱蒼とした森に辿り着く。
 それだけだったらいつもと変わりはない。森なんかこれまでの旅路で何度通ったか数えきれない。
 けれどこの森がいままでのそれとは明確に異なるものであると示していたのは、その幻想的な雰囲気だった。
 それこそ童話に出てくるようなキノコが森のいたる所に生え、あちこちで赤や青、あるいは緑の光が暗闇を塗りつぶさない程度に、どこからか放たれている。
 まさしく妖精が棲むところに繋がっているという言葉がそのまま当てはまる森だった。
「すごいキレイな森だね!」
「本で読み聞かされてたよりも、ずっと素敵な場所です……!」
 初めて訪れる神秘的な光景に、レックスとタバサは目を輝かせる。
 無邪気なその二人の様子をずっと眺めていたかった。
「二人とも。そろそろ行くわよ。ここに来たのは遊びじゃないんだから」
 この神秘的な森を二人に楽しませてあげたいという思いを胸にしまいつつ、当初の目的を思い出させる。
 必要なこととはいえ、まだ子供のレックスとタバサにそうしてしまうのは胸が痛んだ。
「うん、わかったよ」
「行きましょう、先生」
 けれど二人は素直に聞き入れてくれた。残念そうでもなく、それがさも当然というように。
「闇雲に先に進んでも、そう簡単に妖精郷にはたどり着けない。タバサ、あなたの感知能力が必要よ」
 タバサには天性の魔法の才能と、アベルから受け継いだエルヘブンの民の能力がある。それに加えてここに来るまでに聞いた伝承ーー妖精は幼い子供にしか見えないーーことを照らし合わせると、この迷いの森の攻略にはタバサが最適解だった。
「ありがとうございます。私、がんばります」
「ボクは力になれないの?」
 タバサと同じ子供なのに必要と言われたのがタバサだけだったから、ややレックスは拗ねていた。
「一見静かに見えても、この森には確かに魔物の気配がある。その時にタバサを守ってあげられるのはレックスだ。頼んだよ」
 父親にフォローされ、パァッとレックスは顔を輝かせた。
「大丈夫!僕絶対、タバサを守ってみせるから!」
 これから向かうのは死と隣り合わせの戦いと探索だというのに、無邪気に励むその様子があまりにも子供らしくて、やはり微笑ましくなってしまった。
「それじゃあ進みましょう」
 タバサを先頭にして隣にレックス、中心が私で後ろがアベルという編成で攻略を開始する。
 一歩足を踏み出した途端、たちまち神秘的な森は自然の迷宮へと姿を変えた。美しい風景など見せかけ。その本質は立ち入るものを決して許しはしない。
 木々の隙間から、茂みから一斉に魔物が現れ襲い掛かってくる。
 敵の数と位置を把握しながら、私は鞭を握る手に力をこめた。
「ライデイン!」
 聖なる雷が森に降り注ぐ。
 それを合図に戦いの幕が上がった。


  
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