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姉に負けない

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第四章

「やっぱり傍にいる人だから意識するけれど」
「それでも」
「あんたはあんただから」
 だからだというのだ。
「気にしても意味ないのよ」
「そうよね、けれど資格や免許の為に頑張っていたら」
「そんな気持ちはでしょ」
「なくなったわ」
「そうでしょ、人間一生懸命努力していれば」 
 そうしていればというのだ。
「いいのよ」
「そうなのね」
「そして脇目も振らずにやっていったら」
 それならというのだ。
「もうね」
「それでなのね」
「劣等感なんてのもね」
「忘れるのね」
「自分が達成されてね」
「そうなのね」
「只今」
 ここでだった、姉の声がした。すると。
 彩花によく似た顔立ちだがきりっとしていて目鼻立ちが整っている黒髪をロングで整えた背の高いすらりとしたスーツの女性が帰ってきた、彩花の姉である麻衣である。
 麻衣は家に帰るとすぐに着替えて普段着になってこう言った。
「彩花就職決まったのよね」
「今そのお話してたのよ」
 彩花は姉ににこりと笑って答えた。
「実はね」
「そうだったのね、おめでとう」
「大学に残ってね」
「それでよね」
「図書館の司書やって」 
 そうしてというのだ。
「博物館のお手伝いや英語の講義もして」
「忙しそうね」
「そうしてやってく」
「頑張ってね、私もね」
「市庁でよね」
「頑張っていくからね」
「お互いね」
 姉に笑顔で話した。
「そうしていこうね」
「私も市庁で頑張るから」
「私もね」
「二人共頑張っていればそれでいいんだ」
 父は笑顔で話した。
「だからこれからもそれぞれな」
「頑張っていきなさい」 
 母も笑顔で話した。
「そうしていきなさい」
「そうしていくわ」
 彩花は笑顔で話した。
「これからもね」
「そうしていくわ」
 姉も言った、そしてだった。
 姉妹それぞれで頑張っていこうと話もした、彩花はもう姉への劣等感はなかった。
 そして二人はそれぞれ頑張り充実した人生を送った。そこにはもう負の感情は何処にもなかった。努力と充実だけがあった。


姉に負けない   完


                    2021・4・12 
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