八条学園騒動記
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第六百二十七話 変わらないモンゴル人その八
「もう人生の楽しみの何割かはね」
「なくなってるっていうのね」
「モンゴル帝国の頃はクミズを馬に乗ったまま飲んで」
そうしてというのだ。
「お食事にもね」
「してたのね」
「朝ビールと同じよ」
「ビールって飲むパンっていうしね」
「それと同じ感じでね」
「クミズをお食事代わりにしてたのね」
「そうだったのよ」
かつてのモンゴル帝国ではというのだ。
「今はする人少ないけれど」
「というか何でも馬ね」
「馬は絶対よ」
モンゴルにとってはというのだ。
「足だから」
「普通の家畜とは違うのね」
「狼と鹿はご先祖様で」
そしてというのだ。
「馬は家族なのよ」
「そこまでのものなのね」
「だから馬は食べないの」
モンゴルではというのだ。
「他の国の人が食べても何も言わないけれど」
「それはあんたもなのね」
「当り前よ、馬は食べないわよ」
絶対にというのだ。
「何があっても」
「そうなのね」
「馬のお乳は飲んでも」
「お肉は食べないのね」
「絶対にね」
コゼットに強い声で告げた。
「そうなのよ」
「馬は家族だから」
「モンゴルでは昔から食べなくて」
そしてというのだ。
「家族として接しているのよ」
「成程ね」
「そもそも馬がないと生きていけないのよ」
「モンゴルはそうね」
「だからよ」
「そうなのね、それと」
コゼットは今度はチーズを食べつつナンに問うた。
「あんたさっきも言ったけれど」
「どうしたの?」
「いや、狼と鹿がご先祖様ってね」
「そのことね」
「よく言ってるわね」
「モンゴル人はそう言われてるのよ」
実際にというのだ。
「青き雄狼と白き牝鹿がね」
「モンゴル人の祖先なのね」
「モンゴルの歴史書にもそう書かれているのよ」
元朝秘史による、トーテミズムである。
「そうね」
「何か恰好いいわね」
「そうでしょ、それで狼は特別なのよ」
モンゴルではというのだ。
「最も尊いね」
「生きものなのね」
「そうされているのよ」
「そうなのね」
「ただ犬はね」
犬が狼を家畜化したということから話した。
「狼より下なのよ」
「そうなの」
「扱いはね」
「狼とは違うの」
「だって狼は野生で誇り高いけれど」
それでもというのだ。
「家畜になってるからね」
「犬は」
「だからね」
それ故にというのだ。
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