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猛獣達への愛情

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第一章

                猛獣達への愛情
 シベリアにある動物園でのことだ。 
 動物園のスタッフ達はルナと名付けられた雌の黒豹を見て困り果てていた。見れば近くにいる母親は彼女に見向きもしない。
 ルナは一匹だけでいてミルクを貰っている、スタッフ達はその彼女を見て言うのだった。
「参ったな」
「まさか母親が育てないなんてな」
「身体が小さいから育てても無駄だと思ってるのか?」
「この辺り人間と違ってシビアだからな」
「生きられないと思ったら育てないか」
「ここは動物園で野生でないのに」 
 過酷な状況ではないのにというのだ。
「黒豹だし雪ばかりのシベリアじゃ目立つしな」
「シベリアは雪ばかりなのに黒だとな」
「目立って仕方ないからな」
「どうしてもそうなるからな」
「哺乳類の殆どは色がわからないが」
 わかるのは人間と猿だけだ、他の哺乳類は色がわからず目に見えているものは全て白と黒のモノクロの世界なのだ。
「白の中に黒だとな」
「こんなに目立つことはない」
「それだと狩りもしにくい」
「姿が目立つと」
「そのこともあって育てないか」
「全くドライだな」
「しかしな」
 それでもと言うのだった。
「ここは動物園だからな」
「見捨てておけないぞ」
「何とか育てないとな」
「さもないと本当に死ぬぞ」
「どうするか」
 彼等は必死に考えた、彼等も出来る限りのことをしているが人手不足でルナまで中々手が回らない。それでだ。
 動物園の外の猛獣を育てられる資格を持っていてかつ経験のある人にルナの飼育を依頼することにした、それでだった。
 動物園のある街に住むイリア=コルシコワ黒髪と黒い目のアジア系の女性夫のピョートルと共に住んでいる彼にだ。
 飼育を依頼した、すると。
「わかったわ、ではね」
「お願い出来ますか」
「そんな子を見捨てていられないから」
 こうスタッフに答えた。
「だからね」
「それで、ですか」
「そのお話受けさせてもらうわ」
「それでは」
「そしてね」
 イリアはさらに話した。
「無事に育てるわ」
「そうして下さい」
 こうしてだった、イリアは自宅にルナを引き取った、そして。
 すぐに夫と家の犬のヴェンザ黒と茶色のロットワイラーの雌と会わせた、黒髪と黒い目で妻と同じアジア系でやや背の高い彼は。
「これから宜しくな」
「ガウ」
 妻と同じく彼女に優しく接した、そして。 
 ヴェンザは自分からだった。
 ルナに歩み寄った、そして彼女の顔を舐めて鳴いた。
「ワンッ」
「ガウッ?」
「ワンワン」 
 幼い豹に母親の様に接した、そしてだった。
 乳は子供がいないのであげられないがそれでもだった。
 いつも一緒にいてそのうえで育て。
 食事やトイレそれに躾を教えかつ一緒に寝た、すると。
 ルナは大きくなってヴェンザと同じ位になってもだった。
 彼女に心から懐き一緒にいる様になった、するとだった。
「ガウガウ」
「何かね」
「そうだね、ルナはね」
 夫はルナを見つつ妻に応えた。
「豹というよりか」
「仕草は犬よね」
「ヴェンザそっくりだね」
「身体の仕組みは違うのに」
 犬と豹ではだ。
「けれどね」
「それでもだね」
「いつも一緒にいるから」
「そうなっているね」
「もう正式にうちの家族に迎えたけれど」
 動物園と話してだ、一緒にいるうちに愛着が湧いて話をすると動物園側もそれならと頷いてくれたのだ。 
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