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歪んだ世界の中で

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第十八話 クリスマスの光その四

「イルミネーションもね」
「そこに二人で行って」
「楽しく過ごそうね。今日みたいに」
「今日も楽しいよ」
 千春もだった。とても明るく曇りのない笑顔だった。
 そしてその笑顔でだ。答えたのだった。
「こうして希望と一緒だから」
「僕もだよ。だから今日みたいにクリスマスも」
「楽しく。だよね」
「一生の思い出にしよう」
 このことは夢になっていた。今の希望にとって。
 そしてその夢をだ。千春に話すのだった。
「そうしようね」
「そうだね。けれどそれってクリスマスだけじゃないよ」
「一生の思い出は?」
「はじめて会った時もプールに行った時も中華街で遊んだ時も二学期がはじまった時も希望が新しいお家に入った時もあのレストランに行った時も」
 そうしたこれまでの全ての時がだというのだ。
「全部ね。千春にとっては一生の思い出だよ」
「言われてみたらそれって」
「希望もだよね」
「うん、絶対に忘れないよ」
 忘れられない。そこまでだった。
「何があってもね」
「そうだよね。だからね」
「うん、忘れないよ」
 一生の思い出だった。これまでの全てのことも。
「嫌なことは忘れるけれど楽しいことは」
「それでいいんだよ。幸せになればね」
 それでいいとだ。千春に言えた。
「そうなんだよ」
「そうだよ。だから」
「これまでのことも」
「クリスマスと同じでね」
「ずっと忘れられない。一生の」
「思い出だよ」
 そうだというのだ。希望に言う千春だった。
「けれどクリスマスもね」
「うん、その明日も」
「そうした日にしよう。二人でね」
「そうだね。ただ何もしなくてそうした日にはならないよね」
 考える顔になってだ。希望は今度はこう言ったのだった。
「絶対にね。そうした日には」
「千春達がいて。そうした日にするからだよ」
「そうだよね。僕達がそうした日にするからね」
「だからしようね。一生の思い出になる日に」
「うん。それじゃあ」
「じゃあ今日はね」
 話をここで終わらせてだ。千春は今度は希望にこんなことを言った。
 鍋から糸蒟蒻や豆腐を取って食べながらだ。こう言ったのである。
「このお鍋とね」
「そうしてだよね」
「楽しい思いしよう。じゃあ」
「これの最後は雑炊だよ」
 このことは忘れなかった。最後に食べるものは。
「それも食べようね」
「うん、じゃあ」
 こうした話をしながら食べていく。そのうえで。
 鍋の中のものは全て食べ終えてメイドが御飯を入れる。それからといだ卵を入れて。
 すぐに雑炊になった。希望はその雑炊も食べて言った。
「お鍋の最後はね」
「雑炊だよね」
「何かこれがないとね」
「お鍋食べた気になれないよね」
「うん、なれないよ」
 こう言うのだった。
「ちょっとね」
「千春もだよ。お鍋の最後はね」
「うどんもあるけれどね」
「うどんよりもね。水炊きだとね」
 雑炊の方がいいと言うのだ。これが千春の好みだった。
 そして希望もだ。千春と同じだった。
「そうそう。雑炊の方がいいよね」
「だからね。一緒に食べてね」
「僕この水炊きも雑炊も忘れないよ」
「一生?」
「そう、一生ね」
 まさにだ。それだけだというのだ。 
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