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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ダブルブッキング?

 
前書き
前半と後半は構想が完璧に決まっているので進みが早くて良いですね。
私の場合中盤が一番の問題なので、ここからの更新速度が課題ではありますが・・・ 

 
「メルディさん!!なんですかこの依頼!?」
「暗殺の依頼って・・・違反行為じゃないんですか!?」

正気を取り戻したと同時に、思わず立ち上がる俺とウェンディ。そのリアクションは想定の範囲内だったのか、メルディさんは別段取り乱した様子もなく一呼吸置く。

「落ち着いて二人とも!!今から説明するから」

どうどうと座るように指示をするメルディさん。俺たちは馬かよって、突っ込みを入れようかと思ったが、それどころではないのでとりあえず席につく。

「一応標的が現時点では(・・・・・)国王だからってことでそんな依頼書になってるけど、実際はそんなに物騒な案件じゃないから」
「現時点では?」

その問いに小さくうなずくメルディさん。彼女は話を続ける。

「まずこの国も他の国同様、ティオスと天海の被害にあったの。そのせいで魔導士や傭兵といった多くのギルドが無くなってしまったわ」

何度聞いてもこの話題は耳が痛い。直接関わっているわけではないが、それでも原因の一つに自分がなってしまっていることが歯痒くてしょうがない。

「でも、ここからが他の国と大きく変わるところよ」
「何が違うんですか?」
「二人の襲撃の間、フィオーレで言うところの闇ギルドは戦いに参戦せずにじっと身を潜めていたの」

それを聞いて何となく察した。今回の依頼書がなぜこんな風な書き方になっているのか。

「正規ギルドたちが全滅して王国部隊も壊滅状態。そこで目的を達したからなのか、二人はこの国から引いたんだけど、それを見計らって隠れていた闇ギルドたちが国王の首を取ってしまったのよ」
「「「「えぇ!?」」」」

予想していたよりもさらに過激な状況で思わず声が出てしまう。てっきり王座を奪ってしまったくらいだと思っていたのに、その予想を遥かに越えてくるなんて・・・

「それで闇ギルドのマスターが王様を名乗っているんだけど、自分勝手な法律や条例を作ってて、魔法も武力も持っていない一般市民では手が出せない状況なのよ」

だから魔導士たちが顕在しているフィオーレに何とか依頼を出したということか。しかし、わからない点が一つ。

「それで俺たちを指名するのはどういうことですか?」

実質的な討伐依頼なら、俺たち以外にも対応できる人たちはたくさんいる。でも、そうじゃなく今回俺たちは名指しでここに呼ばれた。それがどうにも解せなくて、ついつい聞いてしまう。

「依頼主からの指名じゃなくて、お兄ちゃんからの指名なのよね」
「え?そうなんですか?」

カミューニさんからの指名と聞き、何か裏があるような気がしてきた。いや、別にあの人の性格が悪いからとかではなく、純粋に任務遂行以外の目的があるのではと勘繰ってしまう。

「理由は二人の力がフィオーレでもトップクラスだからって言うのもあるけど、前回二人が行った依頼にも関係があるの」
「あの天使たちとの依頼ですか?」

メルディさんはそれにうなずく。確かにあいつらは強かった。俺たち全員、誰一人歯が立たないなんてことは今までなかっただけに、相当な実力者だということがわかる。

「実は同じ報告が色んなギルドから来てるのよ」
「えぇ!?」

これは驚かざるを得ない。あいつらが天使と言うのは説得力はあったけど、到底信じられるようなものではない。しかし、それが様々な依頼に向かっているギルドから報告されているとなると、話が変わってくる。

「最初は何かの冗談だと思ったのよ。報告したのがソフィアだったっていうのもあるんだけど」
「「あぁ・・・」」

どうやら一番最初に天使に遭遇したと報告したのがソフィアのチームだったらしい。確かにあいつが天使と言ったら、可愛い女の子でも見つけたのかな?くらいに思ってしまいそうだ。

「でも、ミネルバやヒビキたちからも同じような報告が入ってね。だからお兄ちゃんやゴッドセレナ様たちが直接状況の確認に行っているのよ」

俺たちが依頼に失敗したからその原因を調査しに行ったのではなく、同様の報告が多くのギルドからされているのを見て、状況打破のために評議院が動いている・・・そう考えると、あいつらって本当に天使だったのかと改めて認識させられる。

「アルバレス帝国にも天使がいたからね。本当に天使でもおかしくない・・・ただ、各ギルドの実力者たちがことごとく依頼を失敗していることから、私たちと天使では相当な実力差があると思うの」
「それは間違いないと思います」
「私たち、全然歯が立たなかったから・・・」

ティオスと天海も異次元の強さを誇っていたけど、あいつらもそれに近い力を持っている。あの時は絶対的な人数差でティオスを倒したことにより天海の戦意を喪失させたけど、今までの話で出てきた天使が全員別の人物だとすると・・・考えただけで寒気がする。

「もし仮に全員が天使だったとして、その力も考慮すると戦える魔導士は限られてくる。評議院の中でキーマンを定めてるんだけど、その中に二人がいるのよ」
「え?私もですか?」

キョトンとしているウェンディも可愛い・・・そうじゃなくて、なぜ自分も重要人物の一人に位置付けられているのかわからず、ウェンディは俺の顔を見つめてくる。

「ドラゴンフォースも使えるし、最近かなり力を付けてきているからじゃない?」
「それももちろんあるわ。でも、ウェンディには他の魔導士にはないものがたくさんあるの」
「他の魔導士にないものですか?」

メルディさんが何を言っているのかわからず首を傾げるウェンディ。そんな彼女にわかるようにメルディさんが伝える。

「回復魔法、付加魔法(エンチャント)、滅竜魔法・・・通常の魔導士では扱えない魔法を多く持っている。相手が強い以上、サポートとしての魔導士としても、前線として戦える魔導士としても、ウェンディはとっても優秀なの」
「そんな///でも嬉しいです」
「何照れてるのよ」
「いいじゃん~!!期待されてる~!!」

メルディさんから褒められて顔を赤らめるウェンディ。シャルルとセシリーが茶化しているけど、それも耳には届いていないみたいだ。

「もちろん、シリルにも期待してるわ。最前線で戦えるであろう、数少ない魔導士だからね」
「はい!!」

俺も回復魔法などは使えるがウェンディに比べるとどうしても見劣りしてしまう。しかし、評議院の評価としては、天使たちと渡り合える魔導士として計算してくれているらしい。

「本当は強い人と戦える依頼がいいんだけど、今の世界情勢的にそれは無理。だから、数が多い相手と戦うようにすることでそれを賄えるようにと考えてるの」

言われてみればその通りだ。天使たちの実力は言うまでもない。そこまでレベルを上げる方法は強い相手と戦うことが最善手だけど、あの二人のせいで多くの実力者たちは散ってしまったわけでとてもできるような状況ではない。そうなると、相手に数的有利な状況を与えて、こちらが不利な状況から巻き返すような練習をするしかないだろう。

「相手が何人いるかはわからない。でも、それで王様を倒せば相当な練習になるわ!!」
「あ・・・暗殺しなきゃいけないんですか?」
「それはしなくていいわよ。殺しの依頼なんて本来受けちゃダメなんだから」

殺人の依頼を引き受けてしまうとギルド連盟から追放されてしまう。今回の依頼は一般市民たちがそのくらいの気持ちでやってほしいとのことで書いた文章だったらしく、少し安心している。

「闇ギルドに支配されている国を救う。シンプルだけど、人数が少ない分かなり大変になるけど・・・いける?」
「もちろんです!!」
「任せてください!!」

この問いにはイエスで答える以外ないだろう。かなり期待されていることを教えられると、やる気も出るというものだ。

「じゃあ二人とも・・・お願いね」
「「はい!!」」

そうと決まれば早速準備に向かわねば!!シャルルとセシリーに連れてもらい、大急ぎで俺たちは出発の準備へと向かったのだった。

















第三者side

「ジュラさん!!シリルとウェンディ、依頼受けてくれました」
「おぉ!!それはよかった!!」

二人が帰った後、別室で資料を纏めていたジュラに報告に向かうメルディ。彼女からの言葉を聞いて、ジュラは安心したようにホッと一息ついていた。

「ジュラさんもあの二人に依頼のこと、話したんですか?」
「うむ。すぐに向かうと急いで帰っていったよ」

ジュラもメルディ同様に別の魔導士たちを依頼に向かわせたところだったらしく、その時に使った資料を整理していたところだったようだ。その時、メルディはある一枚の紙を見て、あわてふためいた。

「え!?この依頼・・・」
「どうされた?メルディ殿」

机の上に置いてあった依頼書を手に取り冷や汗を浮かべるメルディ。その理由がわからず、ジュラは困惑の表情を浮かべていた。

「もしかして・・・あの二人もこの依頼に行ったんですか?」
「うむ。そうだが・・・」

メルディはそこで自分がミスをしてしまったと思ってしまった。彼女が手に持っている依頼書は、先程シリルたちが向かった依頼と全く同じもの。つまり、ダブルブッキングさせてしまったと彼女は思ったのだ。

「私・・・シリルたちもこの依頼に行かせてしまったんですが・・・」
「あぁ。それならカミューニ殿から聞いておるぞ」

申し訳なさそうに答えたメルディだったが、ジュラは気にした様子もなくそう返答する。その言葉の意味がわからず、彼女は首を傾げた。

「お兄ちゃんが何か言ってたんですか?」
「うむ。この二人とあの二人を同じ依頼に向かわせたいとな」

ジュラの手にあるのは各ギルドの魔導士のプロフィールと写真が乗っている資料。そこに写っているのは、赤紫色のビッグテールの少女と、金髪のボサボサヘアの少年。

「人が少ないこんな時に、この子達を同じ依頼に向かわせるのはもったいないんじゃ・・・」

ただでさえ人手が足りていない現在。その中で、フィオーレでも有数のギルドの主力魔導士を複数名使用しての依頼・・・それほどこの依頼が重要だとは、彼女は思わなかった。

「メルディ殿の言う通りだ。だが、今はこうするしかない」
「それはなんでですか?」
「シリル殿とウェンディ殿には申し訳ないが・・・この二人に大きな問題があってな・・・」

ふぅっと一息ついた彼は、二人のプロフィールに目を落としながら、何とも言えないような表情を浮かべていた。

「この二人はシリル殿とウェンディ殿よりも、今後天使と戦うことになってしまった際に重要な立ち位置になる存在。だが、今の二人では、到底その役割を任せることはできん」

厳しい口調のジュラ。それは期待の現れであることと、もう一つの大きな要因があることは、メルディにもすぐにわかった。

「シリル殿とウェンディ殿なら二人をもう一度引き上げてくれる。そのためなら人手不足はいくらでも我々で補う」

聖十大魔道で構成された評議院。その大半は現在多くのギルドから寄せられた【天使の目撃】により席を外しており、ジュラは一人で活動しているような状態。しかし、そうなってしまってでも、彼らはこの問題を解決しなければならないと奮闘しているのだ。

「この危機的状況を打破するために二人の力を貸してもらう・・・これであの二人も調子を取り戻してくれれば・・・」

窓際に置かれた写真立てに目をやる。かつて自身が所属していたギルドでの記念撮影の姿。そこに写る二人の魔導士のことを考えた彼は、再び大きなため息をついた。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
今回の依頼の詳細と久々登場のキャラたちの何となくの現状を出してます。もう誰かは丸わかりですが笑
次からは依頼開始になると思います。今回は前回の章よりは長くなると思いますので、ゆっくり楽しんでもらえると幸いです。 
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