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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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悪者の王国
  ありえない依頼書

 
前書き
今週は休みが多かったので時間が取れて更新早いです。
代わりに来週は忙しくて更新遅れそうです。 

 
シリルside

「んん・・・」

なんだか妙に眩しさを感じてゆっくりと目を開く。少しずつ光に慣れてきた目が最初に捉えたのは、どこかで見たことがあるような天井・・・

「シリル!!起きた!!」
「よかった~・・・」

頭を必死に働かせようとしていると、いきなり飛び付いてくる少女に再びベッドに押し付けられる。その少女の顔は、涙でグチャグチャになっていた。

「どうしたの?ウェンディ」
「あんたがずっと起きないから付きっきりで看病してたのよ」
「もう三日は寝てたよ~」

シャルルとセシリーの言葉に驚いた俺は窓の方へと目をやる。そこから見える景色といい、この天井といい、俺はいつの間にか妖精の尻尾(フェアリーテイル)に帰ってきていたみたいだ。

「え!?じゃあ依頼は!?」

俺やナツさんたちまで倒されてしまったあの依頼。ウェンディ一人の状況で解決したのかと思ったが、彼女は首を小さく振る。

「依頼は失敗したの。私は皆さんを連れて帰ってきただけ・・・」
「ウソ・・・」

クエスト失敗・・・それは俺たちにとって初めての経験で、到底受け入れることなどできないものだった。

「今カミューニが現状調査のためにあの国に行ってるみたいよ」
「一人であいつらを倒しに行ったの?」

カミューニさんの実力はよくわかっている。しかし、とても彼一人で何とかできる相手だとは思えない。

「誰か連れていくって言ってたみたいよ」

すると、お盆に飲み物を乗せたミラさんが部屋に入りながらそう答えてくれた。

「よかったわね、ウェンディ。シリルが起きて」
「はい!!本当によかったです!!」

ずっと看病してくれていたウェンディに飲み物を持ってきてくれたタイミングで俺が起きたらしい。ミラさんは彼女に飲み物を渡すと、こちらに目を向ける。

「本当・・・シリルだけ(・・)でも起きてくれた安心したわ」
「え・・・」

俺だけ?その言葉が何を意味するのか察した俺は、寝起きとは思えない勢いでベッドから飛び起きると、隣のベッドの前に立つ。

「そんな・・・」

あれから三日経ったという話だった・・・それなのに、エルザさんとナツさん、グレイさんとルーシィさんはみんな目を閉じたままでいる。

「私たちはルーシィたちの下敷きになって気を失ってたからすぐに意識が戻ったけど・・・」
「あいつらにやられたみんなは全然起きないんだよ~」
「あい・・・」

ナツさんにへばり付いているハッピーの目は赤く腫れている。皆さん、息はあるけど、とても目が覚めるような様子には見えない。

「あいつらはあの国にいるんだよね?」
「ううん。どこかに行くって言ってた」
「でも、あの国はいまだに異常気象に覆われたままらしいわよ」

今思い出しただけでも怒りが沸き上がってくる。身勝手なあいつらにも、なす統べなくやられた自分にも。

「落ち着け、シリル」

今にでも動き出しそうなほどに気持ちが昂っていたタイミングでポンっと頭を叩かれる。隣にいたのは、いつの間に来たのだろうか、ラクサスさんだった。

「敵の情報もわかってねぇ上に居場所も把握できてねぇ。そんな状況で闇雲に突っ込んでも意味ねぇだろ」
「ラクサスさん」

そう言われると、まさしくその通りである。今のまま行ったら間違いなく先程と同じ未来を辿ってしまう。そうなっては本末転倒ってものだろう。

「って、さっきカミューニに言われてたわよね、ラクサスも」
「それは言わなくていいだろ!!」

すごいどや顔で俺に注意していたラクサスさんだったけど、どうやらカミューニさんからの受け売りだったらしい。そんなこと言って、あの人もあの国に向かっているって言うんだから、結局誰もいうこと聞いてないじゃんと思ってしまったのは内緒です。

「あ、そうそう。シリルとウェンディにカミューニから伝言をもらったわ」
「え?私にもですか?」

俺はともかく、ウェンディにまでカミューニさんからの伝言とは一体何なのだろう。

「うん。シリルが起きて大丈夫そうだったら、評議院に来てくれって。二人にお願いしたい依頼があるみたい」
「はぁ!?何考えてんのあいつ!!」
「シリルは起きたばっかりなのに~!!」

カミューニさんからの伝言を聞いて顔を真っ赤にして怒り狂ってるエクシードコンビ。二人の意見は最も・・・でも・・・

「ウェンディ、行こ」
「大丈夫なの?シリル」

心配そうな表情のウェンディ。シャルルたちも同じような反応をしているけど・・・

「なんか・・・じっとしてられないんだよね」

今はとにかくこの悔しさを何とかしたい。十分な力を付けたと思っていたはずなのに、それをあっさりと打ち破ってきた強敵を前にして、何もしないでいるなんてできるはずがない。

「シリルが大丈夫なら私も行くよ」
「あぁ!!わかったわよ!!」
「どうなっても知らないからね~!!」

快く承諾してくれるウェンディと渋々といった様子のシャルルとセシリー。結局、いつものメンツで依頼の内容を聞きに行くことになった。

「そうそう、シリル」
「なんですか?」

出発のための準備に向かおうとしたところ、ミラさんに呼び止められる。何かと思って振り返ると、彼女はいつも通りの笑顔でこういった。

「シリルならじっとしてられないって依頼引き受けてくれると思うってところまで、カミューニ言ってたわよ」
「うわ!!それはそれでムカつく!!」

なんだか自分の心を見透かされていたようで非常に腹が立つ。最も、それで依頼を断るなんてことはしないんだけどさ。













第三者side

「いやぁ・・・それにしてもホント・・・あっちぃな」

額を伝う汗を拭いながら船から降りていくカミューニ。この国は夏でも起こり得ないほどの異常気象に見舞われている。

「で?どうよ。変な奴の気配とかする?」

赤色の髪をかき上げながら、少しでも風が当たる面積を増やすカミューニ。しかし、後ろにいて声をかけられた人物は、彼と逆行した格好をしていた。

「いや・・・特に殺気もないな」

黒装束に身を包んでいるその人物は、前に立つ彼よりも頭一つ分背が高い。彼は周囲を見回した後、そう答えていた。

「そっか・・・じゃあやっぱりウェンディの言った通り、もうどっかに行っちまったのかもな」

ウェンディから事の詳細を聞いていたカミューニ。彼は現在の状況を把握するためにやってきたのだが、案の定目的の人物たちとは入れ違いになっていたようだ。

「俺はもう少し見ていくけど、お前は待ってるか?」
「お前に死なれでもしたら敵わん。付いていってやる」
「そう言ってもらえると助かるぜ」

欲しかった回答を得られたからか、満足げな表情で先を行くカミューニ。後に付いていく人物は、仕方ないといったようなタメ息を付きながら、ゆっくりとした足取りで後をついていった。
















シリルside

「なんか新しくなった?評議院」

呼ばれたその場所に着くと、真っ先にそんな感想が口から出てしまった。なんか建物が妙に新しいような気がするけど・・・なんで?

冥府の門(タルタロス)との戦いの時に一度壊れてるからね。その時に直したんじゃないかな?」
「あったね、そんなこと」

ずっと昔のような気がしてたけど、まだあれから二年くらいしか経ってないんだよね。そう考えると時間が流れるのって早いなぁ・・・

「シリル!!ウェンディ!!」

そんなことを思っていると、上から懐かしい声が聞こえる。そちらを振り向くと、そこには窓から身を乗り出してこちらに手を振るメルディさんがいた。

「メルディさん!!」
「カミューニさんから呼ばれて来ました!!」
「わかってる!!早く上がっておいで!!」

呼ばれるがままに中に入り、階段で上へと上がっていく。二階に着くと、階段のところでメルディさんが俺たちを温かく迎えてくれた。

「待ってたよ!!こっちこっち!!」

有無を言わさずどんどん先へ進んでいくメルディさん。俺たちも慌てて追いかけ、案内されるがままに席に着く。

「いやぁ、大変だったね。二人とも」
「聞きましたか?」
「うん!!ウェンディが大泣きしながら来るからビックリしちゃった!!」

そんな笑顔で言わなくてもと思いながらも、彼女らしさ全開で安心している自分もいる。ウェンディは恥ずかしそうにうつ向いているけどね。

「さてさて、ミラから聞いてると思うけど、二人にお願いしたい仕事があるんだよね」
「俺たちじゃなきゃダメな依頼なんですか?」
「お兄ちゃんの話だと、そうみたいよ」

俺たち指名の依頼ということなのだろうか?フィオーレならある程度名前も知られているだろうからあり得なくはないだろうけど、今は世界中から依頼が来ている状態。
そんな状況で誰か一人を指名してくるとは思えないんだけど・・・

「じゃん!!これだよ!!」

カミューニさんから事前に言われていたのだろう、準備されていたと思われる依頼書をこちらに差し出すメルディさん。それを受け取って四人で覗き込むように見る。

「え?何これ・・・」

俺たちはその依頼の内容に言葉を失ってしまった。だってそこには、《国王の暗殺》を依頼する旨の文面が載っていたのだから。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
早くも今回から新章です。
前回は短かったですが、今回はそこそこの長さになりそうな気がします|ョω・`)キガスルダケカモシレナイ
次は依頼の詳細に触れていきます。もしかしたらストーリーもある程度進むかもしれませんね。 
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