ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
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第9話:変身するカクゴ
前書き
様々な手掛かりが浮かび、捜索しようとした一行。
だがしかし、ネオライダーの魔の手は既に忍び寄っていた。
突如士達へ降りかかったネオライダーの襲撃。
ライオトルーパー達を引き連れた黒服の人物は、一同へ指差しながら高らかに言い放つ。
「ハン!このオレ、モーニス様にやられる覚悟はできてんだろうなぁ!?やろうども!!」
黒服の様相から少し気崩した男勝りな口調で話す白髪の女性……『モーニス』と名乗った彼女は背後に控えているライオトルーパーへ指示を出す。
ライオトルーパー達はアクセレイガンを構え、士達を狙う。
「まったく、見つけると否やお構いなしか!ユウスケ!」
「ああ!夏海ちゃんはサクラちゃんを!」
「分かりました!」
ユウスケの言葉に従ってサクラとモコナを連れてこの場から夏海は退避する。
士とユウスケ、そして小狼・黒鋼・ファイを加えた五人はネオライダー達と対峙する。
その最中、士は小狼達三人へ伺ってみる。
「お前ら、大丈夫か?ちゃんと変身できるのか?」
「いえ、いまだに変身できるのかがわかりません」
「まったく、肝心な事は教えねぇでいやがって」
「でも変身できない今どうやって乗り切るか考えないとね」
今現在、小狼達は自分の手にしたどうやって変身するのかが分からない。
壱原侑子によると、【彼らが教えてくれる】と言ったのだが、その彼らとは一体誰なのか…?
そんな中、何時まで経っても仕掛けてこない事に苛立ちを隠せないモーニスは声をあら上げながら構えを取る。
「なんだなんだ?お前ら変身しねえのか?だったらこっちから行くぞ……変身!」
モーニスはそう言いながら金色の紋章が描かれた銀色のカードデッキを取り出して構える。
腰に出現したベルトにカードデッキを差し込み、その姿を変えていく。
どことなく仮面ライダーに似たボディにコオロギを模した意匠が施された仮面の戦士に、黒鋼は士に尋ねる。
「ありゃなんだ?」
「確か、疑似ライダーのオルタナティブだったな。仮面ライダーじゃないが強さが厄介なのは変わりない」
【SWORD-VENT】
「オラァ!やるぞてめぇら!」
モーニスが変身した疑似ライダー『オルタナティブ』は棘のついた大剣・スラッシュダガーを呼び出し、ライオトルーパー達と共に突っ込んでいく。
五人はそれぞれ散ってゆき、士とユウスケは向ってきたライオトルーパーの何人かを軽く避けると、それぞれの変身準備を終えて掛け声を口にする。
「「変身!」」
【KAMEN-RIDE…DECADE!】
変身を終えたディケイドとクウガは、襲い掛かってくるライオトルーパー達へ応戦をしていく。
そんな中、混戦するライオトルーパー達を押しのけてオルタナティブがディケイド目掛けてスラッシュダガーを振り下ろす。
ディケイドは咄嗟にライドブッカーをソードモードへ変形させて受け止めると、鍔迫り合いのオルタナティブから話しかけられる。
「よぉ、お前がディケイドだったな!」
「なんだお前、俺のサインでも欲しいのか」
「冗談言ってんじゃねえぞ、殺すぞ。俺が欲しいのはお前の首と手柄だぁ!」
「まったく口が悪い奴だな!!」
ライドブッカーで力づくでオルタナティブを押し切るディケイド。
その横では、ライオトルーパーの集団に取り囲まれた小狼達の姿があった。
自分達を狙うライオトルーパー達を見やりながらファイは他の2人に話しかける。
「あらら、囲まれちゃったね」
「囲まれた、じゃねえぞ。変身できないままでいけなくもないが、どうするんだ!」
黒鋼は懐に忍ばせた音角を握りしめながら、荒っぽく答える。
そんな彼らへライオトルーパーは凶刃を振り下ろしてきて、対して三人は応戦する。
「変わりませんよ。変身できなくても戦います…!」
小狼はキックで往なし、黒鋼は白兵戦を駆使して殴り飛ばし、ファイは自分の身を翻して躱していく。
三者三様の応戦の仕方をしていく彼らを、夏海とサクラはひっそりとその光景を見守っている。
「小狼君達、大丈夫でしょうか……」
「……小狼君、ファイさん、黒鋼さん、頑張って!」
「いけー!みんなー!そこだー!!」
まだ変身しない小狼達を心配する二人、その横ではモコナが三人の戦いぶりに応援している。
そこへ彼女達に近づく黒い人影の姿があった。
ゆっくりと近づく黒い人影はサクラ達へ手を伸ばし、……咄嗟に気付いたモコナが触れる直前のその手に体当たりをした。
「サクラあぶなーい!」
「え!?きゃっ!?」
「サクラちゃん!!」
夏海が自分達の降りかかってきた危険に気づくと、サクラを連れてその場から走っていく。
サクラの悲鳴に気づきディケイド達が振り向くと、そこには彼女達を追い詰めるライオトルーパーと……モーニスが変身したものとは別のオルタナティブの姿があった。
「なに、あれって!?」
「チッ、別のオルタナティブもいたのか!」
「何もオレ一人だけが相手すると思ってんだ!!喧嘩は頭数が重要ってなぁ!」
「ぐあっ!?」
モーニスのオルタナティブはディケイドとの鍔迫り合いを一旦やめて離れると、右足で腹部を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたディケイドは駆け寄ってきたクウガに助け起こされる。
「大丈夫か士!」
「心配するな。しかし、コイツ言動の割には手練れだ」
「当然だ!そんじょそこらのライダーと一緒にするんじゃねえ!」
モーニスのオルタナティブはデッキから人型の怪人の姿が描かれた一枚のカードを抜き、それを右腕についた召喚機・スラッシュバイザーのスリット部分へ通す。
【AD-VENT】
オルタナティブの傍にコオロギ型の二足歩行モンスター・サイコローグが出現。
呼び出されたサイコローグは頭部の顔面にあるいくつもの穴からミサイルが放ち、ディケイドとクウガへ襲い掛かる。
『■■■ーーー!』
「まずい……!」
「しまっ…!」
ディケイドとクウガが避けようと回避しようとするも、間に合わず爆風に飲み込まれていく。
その様子を襲い掛かるライオトルーパー越しに見た小狼が叫ぶ。
「士さん!ユウスケさん!」
「小僧、よそ見をしている場合か!」
「流石にやばいかもね。サクラちゃん達も追い詰められてるし……!」
ファイの言葉通り、夏海とサクラは今は逃げているものの別のオルタナティブに追い詰められている。
しかし、彼女達を助けに行こうにも立ち塞がるライオトルーパー達相手に生身で突破するには難しい。
一方、夏海とサクラはモコナを引き連れてオルタナティブ達から逃げるために走っていた。
途中で夏海が手元にあった置物や物障害物として仕掛けるもオルタナティブ達は障害物を何ともせず突破し、間の距離を縮めていく。
「待て!!」
「うわーん!こっちに来ないでー!」
「サクラちゃんこっちです」
「はい!」
何とかして引き離せるように必死に走る夏海とサクラ。
だがそこで二人は立ち止まってしまう……逃げるその先にいたのは、二体のライオトルーパー。
背後からもライオトルーパー達を引き連れたオルタナティブが追いついて立ち塞がる。
「これは……!」
「いやーん、万事休すだぁ!」
「……(……小狼君!!)」
サクラは拳を握りしめる。身に迫る恐怖に耐えながら、迫ってくる相手を見据える。
彼女の脳裏には今にも戦っているであろう小狼の姿が映った。
次第にネオライダー達により追い詰められていく一同。
そんな中、小狼は心の中で必死に思う。
(サクラ……!おれはサクラを、みんなを、守りたい……サクラのために手伝ってくれた士さん達のために!)
小狼は心の底から強く願う……愛する少女と頼れる仲間達、そしてこの世界で巡り合えた旅人達の事を。
(ハッ、冗談じゃねえぞ……二度も失ってなるかよ!)
黒鋼は心の底から強く抗う……かつて大切なモノを失った己が誓いのために。
(流石にオレも本気出さないといけないかな……!)
ファイは心の底から強く悩む……自ら打ち立てた信念を捻じ曲げるために。
想う気持ちは異なっていても、仲間を助けるために戦う。
―――その時だった、三人の視界が真っ白に染まる。
――――
次に立っていたのは、真っ白な空間……そこには小狼以外にも黒鋼とファイの姿があった。
先程まで戦っていたのに謎の場所に放り出せた三人は戸惑う。
「ファイさん!?黒鋼さん!?」
「なんだ、ここは」
「……ただの広い空間、じゃないってのはわかるよね」
なぜこんな所へ呼ばれたのか戸惑う三人……そこへ、姿を現すのは三人の男性。
一人は和服の衣装を纏った男性。
もう一人は西洋風の貴族服の男性。
そして最後は黒髪を逆立てた現代服の男性。
突然現れた男達は、まず和服の男性から話してく。
『hello!お前達が俺達の力を受け継いだ奴らか!』
「受け継いだ?」
「えっと、貴方達は一体何者?」
『お前達の受け取ったアイテムの前任者、と言えば分かるかな?』
貴族服の男はそう言いながら、小狼達へ人差し指を向ける。
三人の手元にはカードデッキ、変身音叉、サガークが浮かび上がる。
それを目に移した後に現代服の男が小狼へ視線を移し、その口を開く。
『……お前達にも、叶えたい願いはあるんだろ?』
「―――あります。どうしても叶えたい願いなら」
『その願いの先に生き残れなかったとしても、か』
「……死ねません、おれの願いを……サクラの記憶を取り戻すためには、絶対に」
小狼の真っ直ぐな瞳を現代服の男は暫し眺める。
やがて三人の男は口元に笑みを含め、三人に言葉を告げる。
『だったら、その願いを決して諦めるな。命半ば落とした俺達の代わりに』
『へへっ、仲間を裏切ったりロクな最期迎えられなかった俺が言うのもなんだけどよ……守ってやれよ、お前達こそ』
『少々不安だが、任せるとしよう。存分に使いたまえ。人間達』
その言葉と共に、三人の男達の姿は透けるように消えてしまう。
やがて、小狼達がいた謎の空間はまばゆい光と共に消えてゆく。
――――
夏海とサクラを追い詰めたオルタナティブはライオトルーパー達に逃げ場を生み出さないように取り囲むと、抵抗させないように捕まえるため近づく。
「大人しく捕まれ!」
「やーん!モコナ達ぴーんち!」
「いや…!」
オルタナティブがサクラへ手を伸ばそうとする。
その時、巨大な"翼"が通り過ぎ、サクラ達を取り囲むライオトルーパー達を掻き切って吹っ飛ばした。
オルタナティブが振り向くと、巨大な蝙蝠型のモンスターがこちらへ突っ込んでいく光景が広がっていた。
『ギシャアア!!』
「コイツは……ぐあああ!?」
「え、なんですか!?」
夏海が視線を向けると、オルタナティブが蝙蝠型のモンスターに空高く突き飛ばされる光景が広がっていた。
一体何が起きたのか、サクラが辺りを見回すと小狼達の姿が目に入る。
「小狼君!」
一方、小狼達三人。
彼らは先程会った男達が言った言葉と共に、流れ込んできたのは【自分の変身する仮面ライダーの光景】。
脳裏に流れる記憶に従い、それぞれ変身の準備を行う。
黒鋼は折りたたんでいた変身音叉を展開、指で弾いて鳴らすと額に翳す。
音角から波動が体全体まで包み込んで桜吹雪が舞うと、その体を変貌させていく。
「ハァ!!」
右腕で振り払う動作をすると、そこにいたのは緑と赤で縁取られた鬼の戦士だった。
歌舞伎にも見える姿は豪華絢爛と言えており、現代の『鬼』とは別の雰囲気を纏った音撃の戦士。
その名は、『仮面ライダー歌舞鬼』。
ファイが指笛を吹くと、何処からかやってきたサガークがリコーダー型武器・ジャコーダーを持ちながら出現。
ジャコーダーをファイに手元へ渡した後、サガークはファイの腰に装着される。
そして、ファイはバックルとなったサガークベルトへジャコーダーを挿入する。
「変身」
『HENSHIN』
ジャコーダーを引き抜くと、サガークベルトから青い波動が放たれ、体は銀色へ色が変わっていく。
やがて砕け散ると、漆黒のボディに銀色の装飾と蛇の頭部を模した青い双眸の複眼が特徴の仮面の戦士へと変わる。
その名は、『仮面ライダーサガ』。
小狼が近くの窓ガラスへカードデッキを映すと、鏡像から出現した銀色のベルト・Vバックルが腰に装着される。
独特の構えを取り、決意がこもった声で言い放つ。
「変身!」
カードデッキをVバックルに装填すると、いくつもの鏡像がオーバーラップして小狼の姿と重なり合う。
やがて紺色と蝙蝠の意匠を持った仮面の騎士がその場に姿を現した。
その名は、『仮面ライダーナイト』。
「小狼君達が、変身した……!」
サクラは驚きながら、その光景を目を張って見ている。
小狼が、ファイが、黒鋼が、彼ら三人が士達と同じように変身した事に驚いたのだ。
「よし、こっからが反撃だ」
「さーて、いきますか」
「はい…!」
今ここに、三人の仮面ライダーが立ち上がった。
ナイト、サガ、歌舞鬼の三人のライダーは蝙蝠型モンスター・『ダークウィング』と共にライオトルーパーへ立ち向かっていく。
後書き
どうも地水です。この話書いてる途中はキンヤの「aerial」(劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君のOP主題歌)をキメて書いてました。
ネオライダーの新たなる刺客・モーニス。疑似ライダーのオルタナティブに変身する彼女ですが、不良キャラには少々あってない気が……。
イメージ的にはスマホ向けゲーム『Fate/Grand Order』に登場するモードレッド(セイバー)とカイニス(ランサー)のような女性不良キャラを足したままかけたキャラで、言動や性格などもろ意識してます←
オルタナティブは一人だけじゃない。もう一人のオルタナティブがサクラの魔の手が迫る!
元々原作龍騎だと13人のライダーに対抗するためオルタナティブも13体複数に作られている予定(とある媒体だと13人のオルタナティブが登場)
そのため、ネオライダーにおけるオルタナティブはロボット作品におけるエース機という扱い。
分かりやすく言えば…
ネオライダー所属の仮面ライダー>オルタナティブ>ライオトルーパー
という感じですね。
やりたかった演出……先代ライダーとの対面。
当初は1話かけて対話シーンをぶちこむ予定でしたが、プロットとの相談により断念しました。
ちなみに『現代服の男』と『和服の男』は言わずもがなあの人達ですが、貴族服の男は設定上は存在している半オリジナルのキャラクターです。
彼らが登場したのは「ただ変身するにしては何かきっかけが欲しい」→「小狼達より前の先代ライダーを登場させよう」という決断
ようやく変身した三大ライダー!
小狼はナイトに。
ファイはサガに。
黒鋼は歌舞鬼に。
ちなみに選抜理由は「これの下になった小説でもこのチョイスだった」からです。
詳しい理由は私も分かってない←
次回、ライダーに変身した3人の初陣!
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