ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
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第7話:次元のマジョ
前書き
幽汽の狂乱の戦いぶりにより、撤退を余儀なくされたディケイド一行。
謎の手助けにより窮地を脱した彼らがするのは……。
光写真館の撮影室。
士とユウスケが小狼を担ぎ上げ、合流した黒鋼とファイと共に帰ってきた。
既に帰っていた夏海とサクラは戻ってきた彼らを見て、傷ついた小狼の姿に驚く。
「小狼君!」
「これは一体!」
「とりあえず手当だ。誰か救急箱を持ってこい」
士に言われた通りに夏海が救急箱を持ってきて、サクラと共に小狼の手当を始める。
その隣では黒鋼が舌打ち交じりに拳を空いた手で打ちつける。
「チッ、あいつら俺達を見逃しやがったな」
「どうやらオレ達、格下扱いしちゃってたねぇ」
「フン、次あったらただじゃおかねえ」
ファイは近くの壁に寄り掛かり、あの時の事を思い返す。
ネオライダーの一人であるウワバミに仮面ライダーカイザ、そして鬼頭尚樹が変身した仮面ライダー幽汽。
今の所3人と遭遇したが、他にもいるとなると仮面ライダーに変身できる士とユウスケだけじゃ足りない。
現在何処かにいる【三人目】でもいない限り、対抗策はない。
そこへ手当の最中の小狼が話に加わる。
「あいつらはおれ達を目の敵にしています……あのままじゃ、羽根を探すどころじゃないです」
「小狼君!」
「姫、おれの事は大丈夫ですって」
「無茶するなよ。防げなかった俺達が悪いんだ」
士は苦虫を噛み潰したかのような顔をして、小狼に責任はないと告げる。
だが、対して小狼は険しい表情を変えない。当然と言えば当然だろう。自分が窮地に陥って招いた事によりこれからのこの世界における羽根探しの危険を身を以て知ったのだから。
無事に出歩けない以上、ネオライダーに対応できる変身できる二人に迷惑がかかるだろう。
「小狼君……」
「でも小狼、サクラちゃんの羽根探しは決して諦めるつもりはないんだろ?」
「それは、もちろん……」
この世界に羽根がある以上、探して取り戻す以外の以外はない。
……小狼達の間に決して明るくはない何とも言えない空気が支配する中、そこへ光写真館に戻ってきた者達がいた。
買い物に行っていた栄次郎と、彼についていったモコナだった。
「みんなーただいまー!」
「増えっちゃったから色々買い込んだよー。おや?みんなどうしたんだい?」
「栄次郎さん、モコちゃん、おかえりなさい」
「サクラーただいま!で、皆何話していたの?」
栄次郎の肩から乗っかっていたモコナは彼から降りると、とことこと小狼達の元へ近づく。
近くの机の上へと飛び乗り、サクラ達の話を聞き始める。
小狼達が遭遇した事情を聴き終えると、モコナは何度か頷いて確かめる。
「なるほど、他の仮面ライダーに邪魔されて羽根探しどころじゃないってことだよね」
「ああ。士さん達もいつもいるわけじゃない。せめて対抗できる手段がないか探さないと」
小狼は悔しそうに顔をゆがめる。
モコナは何度か頷くと、自分の手を打つ仕草を打つと『とある人物』の名前を告げる。
「そうだ!侑子に聞いてみよう!」
「「「侑子?」」」
士、ユウスケ、夏海はいきなり出てきた謎の人物の名前に首をかしげる。
黒鋼は苦虫を噛み潰した表情でモコナに言い放つ。
「おい、まさか次元の魔女に尋ねるのか?やめとけ」
「えー、そんなに邪険に扱う事ないじゃよくろろん。侑子に言いつけるよ?」
「黒鋼だ!」
鬼の形相でモコナに迫る黒鋼。その横では士がファイに質問を問いかける。
「おい、誰だ?侑子って」
「ああ、士君。侑子さんってのはオレ達を旅に出させてくれた凄い人っていったところかな」
……侑子、もとい、壱原侑子。
こことは別の次元にある『日本』にて願いを叶える店の主を営む女性であり、彼女は店へやってきた客の願いをそれ相応の対価と引き換えに叶えるという。
小狼達が初めて居合わせた時には四人の次元の旅を叶えた人物でもあり、その後も旅先での難題に直面した時にはちょくちょくお世話になっている。
その話を聞いたユウスケは、侑子の話を聞いて感心する。
「凄いな、他の世界にまで知ってるなんて侑子さんって何者なんだ?」
「さてね、オレ達もよくわかってない事多いな」
「はん、胡散臭いにもほどがあるな。信用するのはどうかと思うぞ」
士はそう言いながら鼻で笑う。それに対して『お前が言うか』と言わんばかりにユウスケは呆れた表情をする。
やがて一旦静かになると、モコナの額の赤い宝石から光が出て、そこから映像が浮かび上がる。
映ったのは、妖艶な雰囲気を醸し出す黒髪の女性。彼女……『壱原侑子』は振り向くと一同に対して口を開く。
『――あら、モコナ。それと貴方達久しぶりね。元気にしていたかしら』
「侑子!久しぶり!」
「侑子さん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」
モコナとサクラは純粋に笑顔で挨拶をする。
その傍では夏海が驚いたりしており、士に突っかかる。
「士くん!モコナから映像が出てます」
「落ち着け!しっかしあの白毛玉、あんなに便利なものだったとはな」
『あら?どうやら他にも人がいたようね』
騒ぐ二人の存在に気が付いた侑子は目を細める。
まるで何かを見透かすような瞳を見て夏海はたじろぐが、一方士は臆せず会話に参加する。
「アンタが次元の魔女ってやつか」
『ああ。貴方はもしかして、ディケイドかしら?』
「…!!」
「え、士の事を知ってるのか!」
『ええ、世界の破壊者ディケイド。その悪名高さは次元を超えて色々と入ってくるのよ』
士のことを知っていた事に驚くユウスケへ、侑子は笑みを浮かべて返す。
そのあと、小狼達はこの世界で起きた事を話した。
この世界で士達に会った経緯。
一緒にサクラの羽根を探してくれると約束してくれた事。
そこに現れたネオライダーと名乗る集団。
その話を聞いた侑子は、口元に笑みを浮かばせて喋る。
『なるほどね、仮面ライダーが存在する世界に来るとはね』
「なんだ?仮面ライダーがまるで存在しないような口ぶりだな」
『少なくとも、私の世界では絵空事のモノなのよ。その世界で実在するモノが別の世界なんてないなんてこと珍しくもないでしょ』
「確かに。ライダーが存在しない世界もあるんだ、そういう世界もあるってことか」
士は一人納得したような様子で侑子の言葉に納得する。
やがて侑子は、小狼達へ願いについての尋ねる。
『要は貴方達に突っかかってくるライダー達をなんとか対抗できるようにしたい』
「……はい。仮面ライダーに変身できる士さん達に頼ってられない。おれ達も戦いたいんんです」
『なら、こういうのはどうかしら?』
侑子は口元を笑みを再び浮かばせ、小狼達へ言い放つ。
小狼、黒鋼、ファイの参人を指差しながら。
『―――ライダーにはライダーを、貴方達が仮面ライダーになりなさい』
「えっ!?」
「なっ!?」
「ほほぉ…」
小狼、黒鋼、ファイは侑子の言葉を聞いて思わず声をあげる。
その話を聞いていたユウスケが侑子へ尋ねる。
「待ってくれ!侑子さん、小狼くん達を仮面ライダーにできるんですか?」
『その手段はなくはない、と言ったところよ』
「マジで!?」
『但し、ただで仮面ライダーになれるわけではない。その対価も決して安くはないわ』
「まあ、そうだよね。その対価って今のオレ達に払えるの?」
分かっていたかのようにファイが侑子に尋ねる。侑子はその問いに首を横に降りながら答えた。
『本来だったら貴方達だけでは足りない。だけど、この場に巡り合ったからこそいけるのよ』
「あん?この場に巡り合っただぁ?」
「もしかして……士さん達が?」
黒鋼は侑子の首を傾げ、小狼は何かに気付いたのか士達を見やる。
この世界で巡り合った人物といえば、士達以外にいない。
小狼達の視線に気づいた士は、溜息を付きながら切り出す。
「まったく、俺の万能さも罪なものだ……で、どうするんだ?小狼」
「え?」
「お前、いやお前達はライダーになる覚悟はあるのか?」
士は真っ直ぐな小狼に尋ねる。
尊大な彼だが、その瞳に宿す真剣さは伝わった。
―――この人がどんな旅をしてきたのかは知る由もないが、その経験からくるものだろう。
それでも、取り戻したいものがある。
助けたい人がいる。
その思いを胸に宿した小狼は、士と侑子に頭を下げた。
「―――士さん、侑子さん、おれ達をライダーにしてください」
「だいたいわかった……おい魔女、対価は払ってやるから願い叶えろ」
『ええ、その願い、承ったわ』
士はやれやれといった表情で侑子に言った。
対して彼女は『対価の内容』を一同に告げた。
『ではディケイド、あなたの空白のカードの一部あるでしょう?それをモコナへ渡しなさい』
「士のカードを?」
『ええ、ディケイドの力はその一端でも強大よ。対価にするには十分に値するわ』
「まあいい、毛玉。ほれ」
「あーい!ぱこーん!」
士は手元にあったライドブッカーからブランクのカードを取り出し、モコナに差し出した。
モコナはそれを吸い込み、そのあと口から三つのアイテムが飛び出てくる。
飛び出たアイテムたちは小狼、黒鋼、ファイの元へ渡される。
小狼には蝙蝠の紋章が描かれた黒いカードデッキ。
黒鋼には鬼の意匠が入った黒い音叉。
ファイには蛇を彷彿とされる銀色の円盤。
三人は物珍しそうに眺める中、士は渡されたアイテムについて侑子へ尋ねる。
「何故アンタがライダーのベルトを持っているんだ?」
『昔の客にそれを出した人いたのよ。対価として受け取っただけのこと』
「え……それって、それを渡したライダー達と会ったってこと?」
ユウスケは侑子が対価に渡した人物達と会った事に気づく。
それに対して侑子は何も答えず、にこやかな笑みを一同に向ける。
『ではこれで用は済んだようね』
「待て、これをどうやって使うのか教えてもらってねえぞ」
『それは、彼らが教えてくれるわ』
「教えてくれる……?」
黒鋼の問いへそう答えた侑子の言葉にファイは首を傾げる。
戸惑う彼らを他所に、侑子は会話を終えるとその姿を消した。
小狼が手にしたカードデッキを眺めていると心配するようにサクラが顔を覗かせる。
「小狼君……?」
「あ、ああ。どうしましたか、サクラ姫」
「無茶しないでね」
「大丈夫ですよ。おれなら」
そうサクラへ笑いかける小狼、だがそれでも不安そうに彼女は見つめる。
戦う彼らの力になれない、己の不甲斐なさを胸に秘めながら。
―――――
某所。
そこには地面に倒れ伏した幾人ものライオトルーパー達がいた。
その光景を目にしながらやってきたネオライダーの斬刃と風嵐は彼らを倒した【襲撃者】を見ながら喋っていた。
「ライオトルーパーといえど1小隊を撃破するとはなかなかの腕前だな」
「うっわーひっどい。ボコボコにされる覚悟はできてるかしら?」
二人の言葉を耳にしてたのか、【襲撃者】は目の前に突如姿を現す。
黒のライダースーツに赤と銀の装甲を纏い、青い複眼に天を指すような猛々しい一本角を携えた仮面の戦士。
―――仮面ライダーカブト・ライダーフォーム。
カブトは無言のまま銃型武器・カブトクナイガンの銃口を二人へ向ける。
「………」
「いくぞ風嵐、戦闘準備だ」
「はーい!わかったよ斬刃!」
そう言うと二人はそれぞれのアイテムを取り出す。
斬刃は剣型デバイス・サソードヤイバー、風嵐はグリップ型デバイス・ドレイクグリップを構える。
すると彼らの周囲から二機の昆虫の姿を模した小さなロボット達が出現する。
斬刃は紫の蠍型の"サソードゼクター"を手にしてサソードヤイバーの峰部分へ合体させ、風嵐は水色のトンボ型の"ドレイクゼクター"をグリップへ収める。
「「変身!」」
【HEN-SHIN】
「「キャストオフ!」」
【CAST-OFF】
電子音声と共に切は斬刃と風嵐の彼ら二人の姿を変貌させていく。
斬刃は紫の装甲と、緑の複眼を持つ蠍を模した仮面の剣士の姿へ。
風嵐は水色の装甲にトンボの翅を模した水色の複眼の仮面の銃士へ。
やがて変化が終えるとそこに立っていたのは二人の仮面ライダー。
斬刃の変身した『仮面ライダーサソード』と、風嵐の変身した『仮面ライダードレイク』はそれぞれの武器を構えてカブトへ襲い掛かる。
「援護はいつものように任せて!」
「任せた!」
ドレイクが繰り出した射撃がカブトの動きを阻害し、そこへサソードが突っ込んでいく。
カブトクナイガンの引き金を引き、銃撃を放つもサソードはそれらを撃ち落として接敵を行う。
クナイガンを持ち換えてガンモードからアックスモードへ変えて応戦をするカブトだが、そこへサソードが繰り出した一撃が放たれる。
「おらぁ!!」
「!!」
サソードの振るうヤイバーを振り下ろし、カブトはそれを受け止める。そこへドレイクの放った銃撃がカブトの装甲を撃ち貫く。
軽く吹き飛ばられるカブト、そこへ追撃を仕掛けようとするサソード。
「終わりだ!」
「ちっ…!!」
振り上げられたサソードヤイバーが振り下ろされる……その瞬間、二人に聞きなれない電子音声が聞こえた。
それもゼクター特有のものとは別の電子音声が……。
【THUNDER】
「なに!?ぐわあ!!」
「なに!?きゃっ!」
突如発生した雷撃の直撃を食らい、軽く吹き飛ばされるサソードとドレイク。
その隙をついてカブトはベルトの側面を叩き、スイッチを起動させる。
【CLOCK-UP】
「チッ、待て!!」
サソードは追いかけようとすると、既にカブトの姿は見えずじまいになってしまう。
理由は分かっている、クロックアップ……短時間だけ常人よりはるかに凌駕した超高速移動を行える能力により、この場から脱出したのだ。
自分達と同じシステムを持っているためすぐにその答えへ辿り着いた二人は変身を解く。
「ああもう悔しい!すぐに逃げるんだから!!」
「無駄な消耗をしたくないんだろう」
「私と斬刃の二人ならあんなやつけちょんけちょんにしてやれるんだから!」
「ふふ、落ち着け」
襲撃者を取り逃した事にむくれる風嵐を頭に手を置いてなでる斬刃。
斬刃は既に姿を消したカブトがいた場所を見つめながら、心の内で呟く。
(さぁ、カブト……今回出くわしたのはどっちだ?)
後書き
どうも地水です。
羽根探しの障害となるのはネオライダー一行、そんな彼らの対抗策としてとったのは次元の魔女から取り寄せた謎の出自を持った変身アイテム。
察しのいい皆様にはお気づきですかね?
一方その頃ネオライダーはカブトと遭遇。一体何者なのか。
斬刃と風嵐が変身ライダーをお披露目!しかして大した活躍もできず戦いはお預け。
次回、小狼・黒鋼・ファイ・変身なるか?
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