リュカ伝の外伝
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今日のポピー
(ラインハット城:談話室)
コリンズSIDE
ここラインハット城の王家プライベートエリア内談話室に、先日サンタローズの聖歌隊のお披露目公演にご臨席というカタチで参加した王族が集まっている。
デール陛下を初め父のヘンリー陛下・母のマリア陛下・妻のポピー・そして俺、コリンズの5人だ。
件の聖歌隊お披露目以降の、サンタローズの現状について色々話題が上がったので、報告がてらの談笑である。
いや、談笑であるはずだった……
「……と、我々が臨席した事による宣伝効果も相まって、控えめに言ってもサンタローズ教会は好調な様だ」
収集した情報を伝え、現状を報告する父。
「僕の耳にも入ってきてますよ。近隣のみならず結構な遠方からも見学に来る人が居るらしいです」
叔父上の耳にまで噂が入ってきてるらしい。
「こういう言い方は嫌いだが、流石はリュカの手腕だな」
「兄さん……グランバニア王は関与してませんよ。誰かの手腕だとすれば、プーサンの腕です」
知ってる人間には同じ事だとしか思えない。
「そうだったな。ところで……現状のサンタローズで、気になる噂も入ってきてるのだが」
「気になる噂……ですか? 何ですか兄さん」
今のサンタローズについて纏めた書類の中から、一枚取り出して何やら不安な事を言い出した。
「うん……聖歌隊関連では無いのだが、その何と言うか……サンタローズの男性、特に独身男性に……その……オカマ……の様な者が多い……と言う噂なんだが……」
何だその噂は!?
父も意味が解らない様で、報告も歯切れが悪い。
思わず肩を竦めて各々の顔を見回す……と、我妻だけが顔一面にニヤけ面を浮かべていた!
何か知ってやがる。
「おいポピー……お前何か知ってるな?」
「あらヤダお義父様。何かあると直ぐに妾を疑うのは悪いクセでありますわよ(笑)」
これは知ってるってレベルじゃぁないな……完全に元凶だ。
「それだけニヤけていれば馬鹿でも気付く」
「いやぁ~……面白い噂だなぁと思ってただけですわよ。おほほほほ」
最近気に入ってる煌びやかな扇を広げて顔を隠しながら笑う妻。
「ふ・ざ・け・る・な・よ・! 普段言わないくせに急に一人称が『妾』になる義娘が信じられる訳ないだろ」
「あ~ん、お義母様。お義父様が可愛い義娘をイヂめるぅ!」
「アナタ、可愛い義娘をイヂめちゃダメよ。 ……で可愛い義娘さん。貴女は何を知ってるのかしら?」
「あらヤダ、味方が居ない(笑)」
「いやぁ~、別にぃ~、大した事じゃぁ~、ないんですけどぉ~」
「ウソ吐け、どうせ元凶はお前だろ。この世の中のトラブルの7割はリュカで、残りの3割はお前が元凶だ」
この世の真理を知った。
「ひっど~いお義父様ぁ~! ウルフの存在を忘れてる」
「あれは小者だろう」
それはそれで酷いが、ポピーは腹を抱えて笑ってる。
「……はぁ~、面白い。私は困ってる妹を助けただけなんだけどね」
一頻り笑い終えたポピーは、流れる涙を拭いながらそれっぽい事を嘯いた。
事実なんだろうが額面通り受け取っては痛い目を見るだろう。
「如何言う事だ、説明しろ」
父も叔父上も……母でさえも、油断する事無く話しの続きを促す顔をしている。
勿論俺もだけどね。
「この間のご臨席の時に、一人の若者が私の可愛い妹フレイに『はぁはぁ……き、君のお姉さんの好みの男性のタイプって何? あとパンツ何色ぉ?』って迫ってたから、ビシッと私が代わりに答えてあげただけですわよ」
「パンツの件は絶対ウソだ」
「で、貴女は何と答えたの?」
父さんに完全否定され、母さんに促されてるが、当人は楽しそうだ。
「勿論『リュリュは実の父親が大好きなド変態女だから、好かれたいのなら実の父親になりなさい』って……」
「……言ったのか!?」
まさかな……
「言う訳ないでしょ! 私とリュリュの関係性は知られてないから、あの娘がド変態扱いされても問題ないけど、フレイは実の妹として周知されてるのよ。あの娘まで奇異の目で見られる訳にはいかないでしょ」
一応そういう常識は持ち合わせてるんだ。
「じゃぁ何て言ったのかしら?」
「え!? あ……いやぁ~……真逆……の事……かなぁ?」
真逆? それで、ああなるのか?
「真逆って……オカマが好きとでも言ったのか?」
「オカマじゃ無いわよ、女々しいだけよ!」
あの村の男共は大分逸脱した捉え方をしてるな。
「お前……何でまたそんな事を? そんなにリュリュを不幸にしたいのか?」
「何言ってるのお義父様。逆ですわ! 私は全ての妹に幸せになって欲しいと、常日頃から思ってるわ! お兄ちゃんは例外だけど(笑)」
笑えない。
「じゃぁ何で!?」
「考えてもみてください。あの娘の理想の男性像より、いい男がこの世に存在すると思いますか? ねぇお義母様。あんないい男、他には居ないでしょ!」
「え! あ……うん……まぁ……」
「そうなのよ! もうつまり、あの娘が結婚するには、妥協して男のレベルを下げないとならないのよ。お義母様もそうでしょ?」
「え~……その質問、答えなきゃダメ?」
「いやマリア、もう答えは解ったから大丈夫だ」
「あらヤダ、倦怠期かしら」
誰の所為だ!
「話を戻すが、男共のレベルを下げるのに『女々しい男』ってのは、些か下げすぎじゃぁないのか?」
「解ってないわねお義父様は……何時だって! だからHHとか呼ばれるんですわ」
「ヘッポコ言うな! じゃぁ如何言う事なのか説明しろ」
「私はあの村の男共を、リュリュの夫に宛がうつもりは毛頭ありません。生活している周囲の男共のレベルを底辺まで下げて、職場付近の男性を少しでも良く見せようって考えですわ」
「なるほど……言いたい事は解ったが、犠牲になったサンタローズの男共の将来は、如何するつもりだ?」
「はぁ? 何で私がそこまで考えなきゃならないんですか? 少子化が進み、あの村が存続の危機を迎えたら、またどこぞの王様が怒鳴り込んできますわよ(失笑)」
「そんな無責任な!」
「王都の未婚女性を連れて、彼の地で婚活パーティーでも催して差し上げれば宜しいんじゃないですか……知らんけど」
相変わらず無責任極まりない。
「私は、兄以外の家族の幸せを最優先に考えておりますのよ」
「兄の幸せは?」
思わず俺は疑問を口にしてしまった。
「私や根性悪義弟の試練に打ち勝って、自らの力で幸せを手にして欲しいわね」
「君の根性悪義弟は、別に義兄の幸せを邪魔しようとはしてないと思うが?」
ポピーだけだろ、そんな事してるのは。
「如何かしら。アイツの根性・性格・口の悪さは、如何な世界でも他の追随を許さないから」
コリンズSIDE END
後書き
タイトルの元ネタ
知ってますか?
以前から、このタイトルで
エピソードを書きたかったのです。
丁度良い感じで
後日談が書けました。
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