伴装者番外編
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ファミリードライブへGO!(マリア・カデンツァヴナ・イヴバースデー2021)
前書き
ギリギリセーフ!!何とか間に合いましたわ!!
「マリィ、その……最近、欲しいものとかないか?」
「え?」
ツェルトからの質問に、マリアは首を傾げる。
場所はS.O.N.G.本部の食堂。2人は紙コップに注いだ紅茶を飲みながら、向かい合う形で席に座っている。
訓練が終わって暇していた彼女を、ツェルトが「聞きたい事があるから、お茶でも飲みながら話さないか?」と誘ったのだ。
理由は勿論、一週間後に迫ったある日に向けてのものだが、ツェルトはその事を知られずに聞き出そうとしているようである。
「欲しいものね……。特には思いつかないわね」
「食べたいものとか、行きたい場所なんかはあるんじゃないか?」
「……ツェルト、そんな事聞いてどうするの?」
「いや、大した事じゃあなあいんだ。……いや、大した事じゃないわけでもないんだけど」
言い淀むツェルト。だが、他の装者達ならともかく、ここで気づかないマリアではない。
「あっ、もしかして……」
「おっとマリィ、それ以上はいけない。気付いたとしても口にされたら、俺の格好がつかないだろう?」
「フフ、それもそうね」
答えを遮るツェルトを見て、マリアはクスッと微笑んだ。
ちょうど一週間後に、マリアの誕生日があるのだ。
ツェルトはマリアの誕生日を祝うにあたり、プレゼントを決めあぐねていたというわけである。
「それで……本当に何も無いのか?」
「そうね……。せっかくの夏なんだし、夏っぽい所に行きたいわね」
「夏っぽい所に、か……。ありがとう。当日は期待しててくれ」
「ええ、楽しみにしてるわ♪」
そう言ってツェルトは、食堂を後にする。
すると、入口の影から話を聞いていた小さな三人が、ツェルトの周りに集まってきた。
「……3人とも、聞いたな?」
「うん、バッチリ……」
「これから日程決めデース!」
「待っててね、マリア姉さん。最高の誕生日にしてみせるから……!」
こうして、マリアの誕生日に向けての計画が進行し始めたのである。
ff
そして、誕生日当日……。
「マリィ!」
「マリア姉さん!」
「「マリア!」」
「「「「お誕生日おめでとう(デース)!!」」」」
「皆、ありがとう。でも、朝からはしゃぎすぎじゃない?」
当日の朝9時。ツェルトとマリア、セレナの住むマンションに、調と切歌がやって来ていた。
全員が揃った事を確認すると、4人はマリアに向けて、祝いの言葉と共にクラッカーを弾けさせた。
「だって、姉さんの誕生日だもん。最高の一日にするって、決めたんですっ!」
「セレナはこの一週間、ずっとテンション上げ上げだったんデスよ~」
「そういう切ちゃんだって、セレナのこと言えないでしょ?」
「いや~、ついつい熱が入っちゃったのデース」
自分を思い、妹分たちも一緒になって計画を立ててくれた事に、胸が温かくなる。
ツェルトが欲しいものを聞き出し、セレナ、調、切歌の3人が一日旅行の予定を考える。
一週間、皆で企画した誕生日プレゼントだ。何処へ行くのかはまだ聞かされていないため、マリアも今からワクワクしている。
「さて、そろそろ車が来る頃だ。皆、荷物は持ったな!」
「「「はーい(デース)!」」」
「え?荷物が要るの?」
「大丈夫、マリィのは俺が準備した」
そう言ってツェルトは、手提げバッグを掲げる。
中身はそれほど多くなさそうだ。中身が見えないよう、ツェルトが運ぶつもりらしい。
「準備が早いわね……本当、何処に行くのかしら?」
「それは車に乗るまで秘密だ。さあ、行こう」
「マリア姉さんの席は、わたしの隣だよ」
そして5人は、マンションの前へと降りていった。
マンションの下には、白いワゴン車が止まっていた。
ワゴン車の運転席から降りて来た顔見知りの金髪グラサン。意外な顔の登場に、マリアは驚く。
「ドクター・アドルフ!?どうしてあなたが?」
「このワゴンは俺のだからな。一日ツェルトに貸す事になったのさ」
「ありがとう、アドルフ先生」
「フン、ぶつけたら承知しないぞ?」
そう言ってアドルフ博士は、ツェルトにキーだけを投げ渡し、その場を去ろうとする。
「アドルフ先生は来ないんですか?」
「デートは若いのだけで行ってこい。パーティーには後で出席させてもらうさ」
セレナの言葉に足を止め、アドルフ博士は手を振りながら若者達を送り出す。
不器用だが、優しい気遣い。その背中を見送って、5人は意気揚々とワゴンに乗り込んだ。
ツェルトが運転。後部座席にマリアとセレナ。
最後部には切歌と調が乗り込む。
「シートベルトは締めたな?これより、バースデードライブに出発だ!」
キーを差し込み、エンジンをかける。
ハンドルを握ってアクセルを踏めば、彼らを乗せたワゴンは夏空の下を進み始めた。
「ではでは、行き先を発表デース!」
「まずは、ここのアイス屋さん。お客さんは少ないけど、とっても美味しいと評判の穴場スポット」
「マリアが行っても、騒がれないデース!」
「そんな所、よく探してきたわね!?」
「月読さんと暁さんが探して、わたしとツェルト義兄さん確かめてきました!間違いありません!」
運転席に目をやると、バックミラーに映るツェルトの顔が、照れ臭そうに赤くなっているのが見えた。
「その後は海。このビーチが、S.O.N.G.の保養所のひとつなんだって」
「つまり貸切デース!」
「でも私、水着なんて……」
「姉さんの水着も、ちゃんとバッグに詰めたから大丈夫だよ」
「いつの間にッ!?」
驚くマリアに、得意げなセレナ。
貸切ビーチ、という言葉に調や切歌もソワソワしているようだ。
「お昼は調のお弁当デース!」
「わたしも、少しだけ手伝いました!」
「セレナも手伝ったの?それは楽しみね」
「うん。セレナ、頑張ってたよ。味もわたしが保証する」
「セレナの手料理か……。マリィにとっては、一番のプレゼントなんじゃないか?」
ツェルトの言葉に、マリアは微笑みながら答える。
「いいえ。私にとっては、こうして皆でお出かけできる時間そのものが、一番のプレゼントよ。皆、本当にありがとう」
マリアの言葉に、ツェルトは……そして、セレナや調、切歌は、満面の笑みで返すのだった。
賑わいと共に目的地へと向かっていくワゴン車。
楽しい一日は、まだ始まったばかりである。
後書き
改めて、マリアさん!お誕生日おめでとうございます!!
これからも、セレナや皆と仲良くね!!
さて、来週月曜日の更新は諸事情によりお休みします。
本編第6節は、再来週までお待ちください。次回もお楽しみに!
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