Fate/WizarDragonknight
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
パスパレライブ
「こんにちわーっ!」
そんな声が、ラビットハウスに響いた。
「いらっしゃいませ」と可奈美が返せば、そこには氷川日菜の姿があった。
「日菜ちゃん」
「やっほー! 可奈美ちゃん!」
日菜へ手を振って返し、可奈美は入口の日菜へ駆け寄る。
「結構ここ気に入ってくれたよね。あ、お好きな席へどうぞ」
見知った顔であっても、仕事中はマニュアル通りに。席に着いた日菜へ、可奈美は水を差しだした。
「うん! ここ、とっても楽しくてるんって来るからね! お姉ちゃんも誘ったんだけど、断られちゃった」
「そ、そうなんだ……どうせなら、紗夜さんも一緒に来ればいいのにね」
見滝原公園での一件以来、日菜はラビットハウスによく来るようになった。数日おきに来ては、よくよくコーヒーやらジャンクフードやらを食べていく。
「はい。今日はどうしたの?」
「それがね……ん?」
その時、日菜の目が
奥のテーブル席にいる少女。彼女に向け、日菜はダッシュした。
「友奈ちゃああああああん!」
「うわあああああああ!?」
悲鳴を上げる友奈に、日菜は飛びつく。
「ひ、日菜ちゃん!?」
「友奈ちゃん! るるるんって来たあああああああああ!」
どうやら、ボートを共にした仲として、友奈は日菜に気に入られたようだ。日菜は友奈にすりすりと頬ずりしている。
一方、友奈の方は、驚きながらも、日菜を拒否せずになされるがままになっている。
「それで、日菜ちゃんは何にする?」
「うーん……やっぱり、あんまりコーヒーって分からないんだよね。可奈美ちゃんのオススメは?」
「あー……オススメは……」
可奈美はそう言いかけて、目をカウンターに泳がせる。
カウンターでは、チノが静かにコーヒー豆を焙煎している。やがて可奈美と日菜の視線に気付いたチノが、緊張した様子で言った。
「そうですね……日菜さん、初心者なら、まずはうちのブレンドコーヒーをお勧めします」
「じゃあそれ! るんっとするかな!?」
「それでは淹れますね」
チノはそう言って、焙煎機を動かす。そんな彼女の様子を見ながら、可奈美は背後からの日菜の声に振り向く。
「ねえねえ! ハルト君は?」
「ハルトさんは今出前に出てるよ。ハルトさんに用事?」
「ううん。あの人、ちょっとお姉ちゃんのこと気にしていたみたいだから、何かあったのかなって」
「ああ……多分、日菜ちゃんが思っていることじゃないと思うよ」
「本当? まさか、お姉ちゃんを取られたりしないかなって」
「ないない」
可奈美は手を振る。
「でも、少し待っていたら戻ってくると思うよ。待ってる?」
「うーん……どうしようかな……」
日菜が考えていると、ラビットハウスの呼び鈴が鳴る。
「うっす。友奈ちゃんいる?」
見ればそこには、いつもの水色のダウンジャケットを着た真司の姿があった。
「あ、真司さん!」
日菜に抱きつかれたままの友奈が手を伸ばす。
「こっちだよ!」
「おお、仕事終わったぜ……」
まだ午前中だというのに、くたくたな様子の真司。
「真司さん、お疲れ?」
「おお、おはよう可奈美ちゃん。いやあさ、夜勤明けでさあ」
「夜勤明け? 真司さん、確かマグロナルドだよね? 今って24時間営業止めたんじゃ?」
「それじゃねえんだよなあ……店長、結構顔が広い人でさあ。色んなところに仕事紹介してくれんだよ」
「うんうん」
「昨日はそれで工事の警備員やったんだよ。いやあ、大変だった……」
真司は腰を撫でながら言った。
「あれ? ハルトはいねえの?」
「今日は買い足しだよ。午前のうちに材料確保しておかないといけないからね」
「へえ」
「真司さんは?」
「ああ、今日は友奈ちゃんと一週間分の飯の買い足しだよ。で、友奈ちゃんは……」
「るんってしてるよ!」
真司の言葉に、日菜が笑顔で応じた。
日菜は今でも友奈をガッツリとホールドし、抱き枕のようにしている。
「うお!? 友奈ちゃん、どうなってるんだそれ」
「いやあ、日菜ちゃんに懐かれちゃって……」
「懐かれた?」
真司は目を白黒させる。
可奈美は「あはは」と苦笑する。
「ほら、この前公園でピクニックに行った時、友奈ちゃんと日菜ちゃん、同じボートだったでしょ? その時に気に入られたらしくて」
「へ、へえ……友奈ちゃんからは結構凄まじかったって聞いたけど」
「るんって来たでしょ? 友奈ちゃん!」
さらに日菜がぎゅっと友奈を抱きしめる。友奈は「るんって来たよ!」と応じている。
「友奈ちゃん、もう適応してる……」
「可奈美ちゃんも真司さんも! るんって来たでしょ!?」
「る、るん……! るん! うん! るんって来た!」
盆を置いた可奈美は、日菜に合わせて言ってみる。何となく力が湧いてくるような感覚がして、少し元気に感じる。
「る、るん……?」
一方、真司は戸惑う。
口にはしてみれど、何も感じないらしい。
「うん! るんって!」
「るんって」
「るんって!」
「るんって……るん……るん……」
やがて、日菜の言葉に頭をふらふらとしていく真司。やがて目をグルグルと回しながら、座席に寄りかかる。
「るんって何だ……? どうして人はるんって言うんだ……?」
「真司さんが一人でループの中に入ってる!」
悲鳴を上げる真司を捨て置いて、次にチノが切り出した。
「そういえば日菜さん、今日はライブではありませんでしたか? マヤさんとメグさんが、今日はパスパレのライブだと言っていましたが」
「それがさあ、今日寝坊しちゃって」
とんでもないことを口走りながら、日菜は頭をかいた。
「このままじゃ、集合時間に間に合わないんだよね」
それを言った瞬間、ラビットハウスが凍り付く。
「間に合わないって……ええ!?」
日菜の爆弾発言に、可奈美は悲鳴を上げた。
日菜は「あはは」と笑いながら、頭を掻く。
「実はさあ。リハーサルの時間がそろそろなんだけど、寝坊しちゃってさあ。電車でも間に合わなさそうなんだよね」
「それこそ余計に何でこんなところにいるの!?」
「えへへ。友奈ちゃん……」
可奈美の悲鳴をスルーしながら、日菜は友奈にしがみつく。
「あ、チケット何枚かあるよ? 日菜ちゃんに可奈美ちゃん、これいる?」
日菜はそう言って、ポケットからチケットを取り出した。そこには、今日の日付でのライブ開催が記されていた。その背景では、日菜を含めたパステルパレットのメンバーや、その他大勢のアイドルが、華やかな背景で演奏している。
時間は、今日の午後。夕方からのレイトショーだった。
「ありがとう……でも私、今日はシフト入ってるから行けないんだよね」
「ええ……じゃあ、友奈ちゃんは?」
「私も今日、このあと特売に並ばなくちゃいけないから、空いてないよ……チノちゃんは?」
全員の目がチノに向けられる。
ずっとカウンターで焙煎を行っていたチノは、その手を止めた。
「そうですね……午後は空いていますから、行けますね」
「ほんとー? じゃあ来てよ! きっとチノちゃんもるんってするよ!」
「は、はい……」
「じゃあ後はどうしようかな……」
「そうですね」
スルーされる真司を置いて、チノが進言した。
「だったら、ココアさんと、モカさんにも誘ってみます」
「ただいまー!」
その時、元気な声がラビットハウスに響いた。
丁度、ココアとモカの姉妹が帰って来たところだった。二人とも両手いっぱいに、ラビットハウスで使う食料品を溜め込んでいる。
「おかえり。ココアちゃん、モカさん」
「ただいま可奈美ちゃん! それにチノちゃん。お客さんが三人もいる!」
ラビットハウスの状況に喜ぶココア。
そんな状態でこのお店大丈夫なのかなと冷や汗をかく可奈美は、モカからも荷物を受け取った。
「すみません、モカさん。バイトでもないのに手伝ってもらって」
「ううん、いいんだよ。私も、ココアが普段どんな仕事をしているのか知りたかったから」
「どうですか? ここ最近のココアちゃんを見て」
「うん。感心感心。お姉ちゃんも安心したよ」
「あ! この前のお姉さん!」
友奈を解放した日菜が、モカへ歩み寄る。
モカも日菜の姿を見て、「あら」と手を合わせた。
「日菜ちゃん、だったよね? ラビットハウスに来てくれたんだ」
「あたし、気に入ったから時々来てるよ。モカさんとはあんまり会えなかったんだね」
「うんうん。日菜ちゃんも、ぎゅっと」
モカは笑顔で日菜に抱き着く。
日菜は嬉しそうに、彼女のなすがままにされた。
「ひ、日菜ちゃんまで!?」
だが、それを見て穏やかではないのが、モカの実妹であるココア。彼女は日菜をモカから引き剥がし、逆に抱き寄せる。
「お姉ちゃん、本当に年下だったら誰でもいいの!? 本当に節操ないんだから!」
(ココアちゃんも大概なような……?)
「ねえねえココアちゃん!」
だが、日菜はマイペースにも、ココアから離れてチケットを提示した。
「ココアちゃんもどう? 今日、ライブあるんだけど」
「おお? 日菜ちゃんのライブ?」
チケットを受け取ったココアの目がキラキラと輝きだした。
「イイネ! 私は好きだよ! チノちゃんと可奈美ちゃんも一緒に行こう!」
「そうですね」
ココアの提案に、チノもほほ笑む。
チノの笑顔も結構レアだなと、可奈美は自らの脳に記憶した。
「おやおや? それじゃあ、私も保護者が必要だよね? 日菜ちゃん、これまだ当日券手に入る?」
「モカさんのもあるよ~」
あっさりと、日菜は追加のチケットを渡した。
それを見た可奈美は、思わず言葉が口に出た。
「日菜ちゃん、それ何枚持ってるの?」
「それがさあ、結構入り少ないらしくてね。あたしたちの他にもいくつかのグループでもまだまだ余ってるんだよね」
「それはそれでどうなの……?」
心配になる可奈美をよそに、日菜はモカにもチケットを渡した。
「ありがとうございます日菜さん。モカさんと一緒に、是非とも伺いします」
「ヴェアアアアアアアアアアア!」
その時、ココアが凄まじい声で悲鳴を上げた。
見れば、白い目をして泡を吹いて倒れている。
「ココアちゃん!?」
「奪われる……私の立場が、お姉ちゃんにも……日菜ちゃんにも……」
「ちょっとチノちゃんが懐いただけだよ!? あと、それよりも日菜ちゃん、チケット配るよりも先に心配しなくちゃいけないことがあるんじゃないの?」
「ん?」
日菜が純粋な目をこちらに向けた。
可奈美は眩暈を覚えながら、入口を指差す。
「時間! もうリハーサルの時間なんでしょ!? 早く行かなくちゃ」
「でも電車が遅延してるせいで間に合わないしなあ。ハルト君に連れて行ってもらおうかなって思ったけど」
日菜の図太さに驚きながらも、可奈美は店内を見渡す。
そこで偶然、友奈の隣に座っている真司と目が合った。
「真司さん」
「何?」
「そういえば真司さんもスクーター持ってたよね?」
友奈のバイト代と組み合わせて、スクーターを購入したと聞いている。
それはきっと、今もラビットハウス近くの駐輪場に停めているのだろう。真司も、隠すことなく頷いた。
「ああ。そうだけど……あれ?」
すると、真司は何やら嫌な予感がしたかのように日菜を見る。
日菜は、すでに明るい眼差しで真司を見上げている。
「これ、俺が日菜ちゃんを連れて行くパターンじゃ……」
その通りと、日菜が何度も頭を縦に振る。
「ええ……俺、今日特売日に行きたいんだけど。友奈ちゃんも、そのために今日急いできたって……」
「私はいいよ」
無情にも、友奈はにこやかに答えた。
「可奈美ちゃんが手伝ってくれるから!」
「私今日まだ仕事終わってないよ!?」
だが、それが同意と思ったのか、日菜は「ありがとー!」と礼を言う。
「なあんだ……これで間に合う! 皆もこれでるんってなるよね!」
「いや、俺まだやるって言ってないから! 今夜勤明けって言ったじゃん!」
すでに、真司も断ることができなくなっているようだった。
「よ~し! レッツゴー! 見滝原ドーム!」
そのまま、友奈との特売ではなく日菜に連れて行かれる真司を見送って、可奈美は呟いた。
「これ……私のせい?」
「大丈夫だよ! このあとの特売は、私と可奈美ちゃんで行けばいいから」
「だから私今日夕方までシフト入ってるよ!」
「そのあと私も真司さんを追いかけるからね」
だがその後、少し可奈美が目を離している間に、友奈は机に突っ伏してしまった。
「あ、日菜ちゃんコーヒー代……」
後書き
リゲル「マスター」
鈴音「何ですか?」
リゲル「その食生活には少し疑問が……」
鈴音「食べます?」
リゲル「ほとんどうまい棒だけなのは、健康に悪いような……」
鈴音「大丈夫ですよ。何より片手で監視しながら食せるので重宝します。サクサク……」
リゲル「……はあ……少しは体に気を付けて……あ、久々のアニメ紹介私がやるの? それじゃあ……どうぞ」
___DNAが共鳴して旅立つドリーム 運命にクチヅケを交わし誓い合って___
リゲル「ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション」
鈴音「気分転換にPSO2でもやりましょう」パソコンカタカタ
リゲル「監視しながらゲームやってる……!? 2016年の1月から3月まで放映していたアニメよ。PSO2のアニメ化ではなく、PSO2というゲームがある世界で、高校生の橘イツキが主人公。謎の転校生、鈴来アイカとの出会いから、ゲームの中の世界であるはずのPSO2の戦いに巻き込まれていく」
鈴音「レアドロップがでない……レアドロップがでない……」
リゲル「マスターのこのようにレアドロップを求めてクエストを周回するのをハムスターというのよね……マスター、今日はもう休んで」
鈴音「こうなったらモンハンにチェンジしましょう……! ……レア素材が出ない!」
リゲル「この人、もう沼から逃げられない……!」
ページ上へ戻る