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パープルロマンス

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第三章

「そこで、です」
「お会いしたんですか」
「バーテンダーの方で」
「その人がですか」
「とても素敵な人で」
 それでというのだ。
「カクテルも美味しくて」
「それで、ですか」
「今日もです」
 その白い頬を紅にさせて話した。
「行きたいです」
「あの、先輩」
 後輩はしのぶの様子に気付いて言った。
「ひょっとして」
「ひょっとして?」
「いえ、よかったですね」
 後輩は微笑んで言った、これはと思ってだ。
 しのぶはこの日もバーに行ってカクテルを注文した、そして。
 次の日もそうした、毎日店に来て新堂を見て彼の作ったカクテルを飲んだ。新堂も彼女が毎日来るので。
 自然とだ、店の同僚達に彼女のことを話す様になった。それでだった。
 常連の初老の客も彼に言った。
「いつもそのお客さんのこと言うね、最近」
「はい、気になって仕方なくて」
「あの人確かね」
 その彼が言うのだった。
「市役所の人だよ」
「市役所ですか」
「市庁舎にいてね」 
 そこにというのだ。
「そこで所謂キャリアなんだよ」
「偉い人ですか」
「まだ三十ちょっとだっていうけれど管理職でね」
 それでというのだ。
「バリバリ働いているらしいよ」
「偉い人なんですね」
「そうだね、しかしその人が」
「あの、詳しいお話を聞かせてくれますか?」
 新堂は客に身を乗り出して尋ねた。
「あの人のことを」
「詳しくだね」
「是非」
「う、うん」
 それならとだ、客は何時になく積極的な新堂に戸惑いながらだった。
 彼にしのぶのことを知っている限りのことを話した、それはしのぶも同じで。
 暇があれば新堂のことを話した、その彼女に後輩は仕事の合間の球形の時に言った。
「あの人有名ですよ」
「あのバーテンダーさんはですか」
「はい、県でも指折りなんですよ」
「バーテンダーとして」
「はい、日本でもかなりです」
「有名な人で」
「もうどんなカクテルも完璧に作られて」
 そしてというのだ。
「オリジナルもです」
「作れるんですか」
「それでカクテルのコンクールでも優勝した」
「凄い人なんですね」
「そうなんですよ」
「素敵な人だと思っていましたが」
 しのぶは顔を赤くさせたまま言った。
「そうした方ですか」
「詳しいお話を知りたいですか?」
 後輩は気付いていた、それでしのぶに笑顔で尋ねた。 
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