イベリス
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第十四話 反面教師その十
「そうしてね」
「そうします、今はモコを大事にして」
「お父さんにお母さんにね」
「そして結婚したらですね」
「ご主人を大事にして」
将来の夫である彼をというのだ。
「そしてね」
「自分の子供もですね」
「そもそも自分の子供を大事にしない母親ってね」
「母親じゃないですね」
「子供を愛さないで大事にしない親なんて」
先輩は真剣な顔で言った、それはこの場で彼女が見せる表情で最も真剣なものだった。その顔で言うのだった。
「親じゃないわよ」
「子供を産んでもですね」
「そうよ、親っていうのはね」
「子供を大事にですね」
「そうしてね」
「護って」
「育てるものよ」
そうするものだというのだ。
「だからね」
「私もそうしていくことですね」
「私もよ」
先輩自身もというのだ。
「そうしていかないとね」
「先輩もですか」
「当り前よ、私も人間でね」
そしてとだ、咲に言うのだった。
「女の子だから」
「だからですか」
「そう、将来お母さんになるかも知れないから」
「それでなのですか」
「自分も家族も他の大事な人もものも」
「守れる様にですね」
「するわ、うちには猫がいるけれど」
「猫いるんですか」
「シャム猫でね、凄い我儘で高慢だけれど」
それでもというのだ。
「それでもね」
「大事な家族ですか」
「そう、私から見たら弟よ」
咲に今度は笑顔で話した。
「可愛いね」
「だからですか」
「大事にしてるし」
「いざとなればですね」
「護らないとね」
「いけないですね」
「何でもしてるしね」
その猫にというのだ。
「我儘を聞いて」
「猫って我儘って聞きますね」
咲は家で猫を飼ったことがないのでこのことは知らないのだ。
「実際にそうですか」
「そう、これがかなりね」
「我儘なんですね」
「我儘で気まぐれで高慢よ」
気まぐれという要素も普通に加わっていた。
「そうなのよ」
「犬と全然違いますね」
「犬って素直でしょ」
「素直で謙虚ですね」
モコのその性格から述べた。
「それで愛嬌もあって」
「愛嬌があるのは一緒だけれどね」
「猫はそうした生きものなんですね」
「そうなの」
「そうした生きものなんですね」
「実際にね」
「猫のこと覚えておきます」
咲は先輩に答えた。
「飼うことがあるかも知れないですし」
「そうしてね。何かの縁でね」
「猫を飼うこともですね」
「有り得るから」
だからだというのだ。
「宜しくね」
「猫のこともですね」
「そういうことでね」
「わかりました」
咲は先輩の言葉にまた頷いた、そのうえでこの日はアルバイトもないので部活に専念した。そうして家に帰るとまた勉強をした。
第十四話 完
2021・5・8
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