| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おっちょこちょいのかよちゃん

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

139 選ばれし者達への説明会

 
前書き
《前回》
 孫が心配でたまらないまる子の祖父・さくら友蔵は守衛役を務める二人の少女に自分も通してくれと乞い続けるが、通してもらえずにいた。横浜の少女・鳥橋のり子はまる子がかよ子達と共にいるのを見て文句を言うが、彼女の人形・キャロラインが止めに入って事なきことを得る。そしてかよ子はこの地での戦いが始まる事に緊張を覚える!!

 オリジナルキャラ紹介・その10
 藤沢鈴音 (ふじさわ すずね)
 杯の所有者で東京に住む安藤りえの友達。初登場第94話。控えめでおとなしい性格。炎と氷を操る錫杖を使って戦う。好きな食べ物はカレーライス、アイスクリーム。
 

 
 かよ子達は階段を降り、地下道と思われる道を進む。そしてその先に扉があった。中に入ると巨大な広間となっていた。
(す、凄い・・・。こんな広い部屋・・・)
 かよ子からしてこの場は童話に出てくるようなお城の舞踏会の会場のような部屋だった。そしてそこに一人の女性が立っていた。
「フ、フローレンスさん!!」
 かよ子は思わず前に行った。しかし、その途中で転んでしまった。
「あ・・・」
 転んだかよ子の元にフローレンスが近寄る。
「ご無沙汰ですわね、山田かよ子ちゃん、お元気でなによりです」
「は、はい・・・」
 かよ子からしてフローレンスと会うのは杉山達「次郎長」とすみ子達「義元」の秘密基地の取り合い合戦を鎮静させた時以来だった。
「でも色々と大変でした。杉山君と大野君が喧嘩しちゃって・・・」
「ああ、その事は石松から聞きましたよ。でも、きっと仲直りします(すべ)はあります筈ですわ」
「は、はい・・・」
「では、もうすぐここに来てくれました皆さんの為に説明会を始めますわ」
「はい・・・」
 フローレンスは元居た壇上に戻る。そしてその場にイマヌエルが現れた。
「フローレンス」
「どうかしましたか?」
「このさくら友蔵さんとうさくらさきこ君とさくらももこ君のお爺様が孫が心配で行きたいと言うんだ。断っても断っても帰らないんだ。仕方ないから通してやりたいと思う」
「は、はい。困りましたお爺様ですわね・・・。お通しましょう」
(え、まるちゃんのおじいちゃん、結局来るの・・・!?)
 かよ子は驚いた。そして声が聞こえた。
「まる子〜!お姉ちゃ〜ん!!どこじゃ〜!?」
「おじいちゃん、ここだよ〜!」
 まる子は手を振った。
「まる子〜!よかった、よかった・・・」
 まる子と友蔵は感動の抱擁をした。
「おじいちゃん、帰った方が良かったと思うけど・・・」
「ああ、お姉ちゃん、無事じゃったか!」
「まだここに来ただけで何も始まってないよ・・・」
「あ、そういえば・・・」
 姉の言葉に友蔵とまる子は心がしらけた。
「あのジジイ、来やがったか」
 鯉沢は胡散臭そうにぼやいた。
「それでは選ばれし皆様、この決戦にご参加して頂きました事にお礼を申し上げたいと思います。私はフローレンス。この平和主義の世界を治めます者の一人でございます」
「そして同じくイマヌエル。皆、私達と会った事が多いだろう」
「今、貴方方が住まわれております日本は赤軍といいます過激派集団に狙われております。そしてその赤軍が我々と敵対しています戦争主義の世界と手を組みまして赤軍は日本国の交戦権を復活させ、周辺諸国を植民地化しますといいます野蛮な行為、そして戦争への参加を再び行います事が目的と分かりました。そしてそれと平行しますように我々の世界でも敵対します世界が出現し、この世界を侵略しつつあります。私とイマヌエルは貴方方の世界から昇天し、この世界を訪れました時は何もありませんでした。そこに住めるような世界を創りたいと思い、地、水、風、炎を生み出し、平和を願っていました者たちをこの世界に呼び寄せましたのです。この世界を創りました時に四つの道具が生まれました。それが、地を司ります護符、水を司ります杯、風を司ります剣、そして炎を司ります杖です。そして第二次世界大戦の終わり、壊滅的な被害を被りました日本の四人の少年少女にその道具を授けましたのです。29年間、この地に預けられました間、日本は復興の道を辿っていきました。ところが、私達の世界で戦争や虐殺などを正義とします者が現れ、その者達がまた別の世界のこの地で創り出してこの世界を脅かしていますのです。彼らがいつあの四つの道具の存在を認知しましたかは定かではありませんが、彼らはその道具を手に入れて自分らが思うがままの世界を作ろうとしていますのです。そしてそんな中、さらなる歪みが生じました」
(さらなる歪み・・・!?)
 かよ子はもしやと思った。
「先程喋りました日本赤軍といいます過激派が日本を再び戦争への道へ進めます為に『私達の敵の世界』と組む事に成功し、敵の世界の人間達が安易に貴方方の世界を行き来できますようになってしまったのです。皆さんはあの世界と世界の繋がり、いわば地震のような現象が起きました事を覚えていますのではないでしょうか?」
(やっぱり・・・)
 かよ子は四月の終わりに起きた地震のような現象が赤軍によるものとは解っていたものの、赤軍の行動にさらなる怒りを覚えた。
「我々はそれに対抗します為、貴方方に協力したく、私達の世界の人々を派遣しまして、戦います為の道具を授けましたのです。しかし、剣の所有者・渋川正太(しぶかわしょうた)氏は道具を引き継ぐ子女がいまませんでした事も仇となりまして赤軍との戦いに敗れ、命を落とし、剣は赤軍に奪われました」
(御穂津姫が言っていた剣・・・。それは名古屋で赤軍のリーダーが使っていた・・・!!)
 長山は夏に御穂津姫に会った時の事、そして名古屋で羽柴さりの持つ護符を守り抜く為に戦った後に赤軍の長・重信房子が例の剣を持っていた事を思い出した。
「そして我々は今、劣勢に陥っております。そしてこの日、赤軍は憲法9条の改正と共に護符、杖、そして杯を寄こせと日本政府に命令してきました。私達はそれに対しまして偽の道具を政府に渡して取引の道具に使用させました」
(その為に石松は私に出発の日までに杖を使わないように言ったんだ・・・)
 かよ子は転校の事で杉山と大野が喧嘩した事を思い出した。
「そして彼らに偽物を渡しました事がバレませんように護符の所有者・杯の所有者・杖の所有者と共に多くの異能の能力(ちから)を持ちます者達を私達のこの世界に呼び寄せ、赤軍の交戦権復活の計画および私達の世界の陥落を阻止します為に戦っていただきます。私達の世界は今劣勢ですが、皆様がお力お貸ししていただけますならきっとこの状態を塗り替える事ができますと私達は信じています。私達の為に戦っていただけますか?」
 フローレンスは改めて皆に確認した。
「行きます!」
「そうだ、そうだ!」
「戦争はもうごめんだ!!」
 皆は同調した。
「かよ子、頑張れる?」
 かよ子は母から確認された。
「うん、絶対に負けないよ。たとえおっちょこちょいをやっても・・・、いや、絶対におっちょこちょいはしないようにこの杖とフローレンスさんから貰ったこの羽根で戦うよ!お母さんだって子どもの頃戦争で辛い目にあったよね?私、お母さんに同じ思いをさせたくないし、私だって戦争は嫌だもん・・・」
 そしてかよ子には一つの目的があった。
(この戦いを終わらせるて、杉山君を大野君と仲直りさせる・・・!!)
 かよ子には大野と杉山が二度目の喧嘩をした時の心の傷があった。大野が転校する前に杉山には彼と仲直りして欲しい。その為にも元の平和な日常を取り戻したいと思っていた。
「い、嫌じゃ、戦争は嫌じゃ~」
 友蔵が泣き喚いていた。
「あのジジイ、帰れよ・・・」
 鯉沢がぼやいた。
「まる子、お姉ちゃん、戦うのか!?そんなの、おじいちゃん、心配じゃ!!儂も戦うぞ!」
「ありがとう、おじいちゃん!」
 まる子は喜んだ。
「しかし、お爺さん」
 三河口が現れた。
「アンタはイマヌエルのお情けでここを通されただけです。現に手紙を受け取っていませんし、イマヌエルが折れなかったらここに入って来られなかった。アンタに何ができるんですか?」
 三河口は辛辣な質問をした。
「そうよね、おじいちゃんは足手まといになりそうかも・・・」
 まる子の姉も口を揃えた。
「そ、そんな・・・」
 友蔵はしょんぼりした。
(まあ、ほっとくか・・・)
 三河口はそれ以上は喋らなかった。一方、杉山は無言で俯いていた。
(俺にしかできない事・・・。赤軍・・・、戦争正義の奴等・・・)
 杉山が一体何を考えているのか、それを知っているのは彼自身のみだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「大戦前夜の宴」
 説明会は続く。そしてフローレンスは皆に四つの役割を担って貰う為、それぞれの役割分担を発表する。戦争主義の世界の領土の攻め込み、平和主義の世界の領土の死守、異世界の剣の取り返し、そして藤木茂の奪還、かよ子達はどの役割を担う事になるのか・・・。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧