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生きる力は猫にも

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第一章

               生きる力は猫にも
 マサチューセッツ州セーラムにある捨てられたり飼育放棄された生きものを保護している動物救済施設にいまある猫がいる、その猫は。
 グレーと白で尻尾は黒い、生後六週間程の雄猫だ。だが。
 その猫は今頭に大怪我を負って虫の息だった、それで診察をした獣医のジョー=オンス茶色の髪を後ろで束ねた茶色の目と長身できりっとした顔の彼女は厳しい顔で言った。
「台車が落ちるなんて」
「それも頭に」
「運が悪いですね」
「この子は」
「成人した子でも危険な重さと形だったのに」 
 その台車はとだ、ジョーは話した。
「それが子猫になんて」
「それでどうなりますか?」
「この子は助かりますか?」
「どうですか?」
「難しいわ」
 ジョーは険しい顔で答えた。
「傷は深いわ、脳にダメージを受けているから」
「ではどうされますか?」
「この子は」
「一体」
「出来る限りのことはするわ、可能性が少しでもあれば」
 それが一パーセントもなくともというのだ。
「やるわよ」
「わかりました」
「ではお願いします」
「私達も働きます」
「そうします」
「ええ、やるわ」
 こう言ってだった。
 ジョーはその子猫、エスモアズと名付けられた彼の手当てを行った。瀕死の重傷であり本当にどうなるかわからなかったが。
 まずは助かった、だが。
 半身不随だった、それでジョーは今度はこう言った。
「栄養チューブで、です」
「それで、ですね」
「栄養をあげて」
「それで、ですね」
「リハビリもですね」
「やっていくわ」 
 今度はそうすると言った、そして。
 栄養チューブで何とか栄養を受けながらも懸命に身体を動かし目を開けている彼を見てそのうえでこうも言った。
「この子自身が必死に生きようとしているから」
「だからですね」
「我々も応えないといけないですね」
「この子が生きようとしているから」
「だからこそ」
「ええ、応えるわ」
 こう言ってだった。
 ジョーはエスモアズに栄養を与えリハビリもしていった、すると。
 彼は動ける様になり後遺症で左に回る癖があったが歩けてキャットタワーに登れるまでになった。彼は人懐っこい性格でよく人の傍に来た。センターの中で他の猫達と共に暮らしつつ。
「ニャ~~~」
「助からないかもと思いましたが」
「こうして動ける位になりましたね」
「大きさは生後八週間位で止まってしまいましたが」
「それでも」
「ええ、この子が生きようとして」 
 必死にそうしてとだ、ジョーはエスモアズの頭を撫でつつスタッフ達に話した。
「そしてね」
「私達が応えた」
「そうしたからですね」
「この子は今こうなっていますね」
「元気に生きていますね」
「ええ、そうなったのよ」
 スタッフ達に笑顔で話した、そして。
 ジョーは休暇中に旅行に行き一時同じ職場で働いていた獣医のニッキー=リース黒髪をロングにしていて青い目で小柄でやや四角い顔の彼女にある猫を紹介された、この時二人はプリンスベンのニッキーの自宅にいた。
 三毛猫の雌だ、家の中でおもちゃで遊んでいる。 
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