幻想甲虫録
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白羽の子 ー預かりー
霊・ソ・魔・ギ「「「「は?コクワガタの子守りィ?」」」」
朝、寺子屋に霊夢、ソウゴ、魔理沙、ギルティが呼び出された。
2人と2匹の前にいるのは霖之助と同じく人間と妖怪のハーフである寺子屋の教師『上白沢慧音』、肩に乗っているのは彼女のパートナーであるケンタウルスオオカブト『ケイロン』。頭角の先端が黄色く、胸角に青と緑のチェックマフラーを巻いていた。
慧音「ああ。私たちが幼虫の頃から育てていたんだが、ついにサナギから孵ったんだよ」
ケイロン「ソウゴはサナギといえばアダーという老人にサナギの頃から改造手術を受けたコーカサスオオカブトを想像するんじゃないかな?いや~、本当にアダーみたいな奴に誘拐されてなくてよかったよ」
ソウゴ「……あの河童もアダーみたいに道踏み外さなければいいんだけどね」
霊夢「ネプチューンを強くしようと何度も実験繰り返して、結果理性を失って暴走したっていう事件でしょ?今でもはっきり覚えてるわ」
ケイロン「全くだ。非力な私はスーパーサイドスクリュースローであっけなくノックアウトだ」
慧音「ハハハ、あれはひどかったな」
笑い話ではないような気がするも、それを言うことはできなかった。
ソウゴ「でも慧音さん、あの暴れたネプチューンってにとり本人に止められたんですよね?」
慧音「そうだな。あいつ、あの日ボロボロだったしなぁ………」
ギルティ「終わったことをいつまでも話しててもしょうがねぇや。話を戻そうぜ。で、何だって?サナギから孵ったばっかのコクワガタだって?まだ見ぬ世界を初めて見るから、俺たちかなり手がかかるかもしれねぇな」
魔理沙「そのコクワガタは今寺子屋にいんのか?」
慧音「うむ。ちょっと待ってろ、今呼んでくる」
寺子屋の奥へ姿を消す慧音とケイロン。それからすぐに子供のような声が聞こえてきた。
???「やったー!!ぼくおそとでみんなとあそぶー!!」
ケイロン「こ、コラコラ!まだ羽白いんだからそんなにおだっちゃいけません!」
慧音「母親かお前は…」
子供の声を聞いた霊夢たちは。
霊夢「……魔理沙、まさかとは思うけど今日1日コクワガタの面倒見るとか言うつもりじゃないでしょうね?」
魔理沙「何言ってんだ?見るに決まってんだろ」
霊夢「はぁ!?ホントにそのつもりなの!?」
ギルティ「ああ、マジだ」
霊夢「……そ、ソウゴはさすがに魔理沙とギルティと同じこと考えてない……よね?」
ソウゴ「1日だけだから大丈夫でしょ」
すると霊夢は両膝をついたかと思うと。
霊夢「………そんな………嘘でしょ………ウゾダドンドコドーン!!!!」
土下座するように地に崩れ落ち、絶叫した。大勢の人々の視線が刺さったが、霊夢は全く気にも留めなかった。
この時、慧音とケイロンが寺子屋から出てきたが、なぜか土下座するように崩れ落ちている霊夢にポカンとした。そして慧音の肩には。
コクワガタ「このおねえちゃんどうしたの?なんでおちこんでるの?」
慧音「知らん。ていうか見るな」
魔理沙「お?お前が慧音とケイロンが言ってた白羽のコクワガタか」
コクワガタ「うん、そうだよ。ぼく、まださなぎからかえったばかりなの。おねえちゃんたちがぼくをいろんなところにつれてってくれるみたいだからすっごくうれしいんだ」
ギルティ「こいつの声ここまで聞こえてたからなぁ……てか霊夢の落ち込み様スゲェな……」
霊夢「……………」チーン
相当ショックだったのか、そんな霊夢を横目にギルティは呆れていた。
ケイロン「聞こえてたのか。ああ、そうそう。私も霊夢の叫びを聞いたぞ。何なんだ『ウゾダドンドコドーン!!!!』って」
コクワガタ「『ウゾダドンドコドーン!!!!』ってなぁに?」
慧音「滑舌が悪かったが、たぶん『嘘だそんなことー!!』って言いたかったんじゃないのか?」
ソウゴ「ていうか霊夢、いつまでこの状態なんだろう………」
霊夢「……………」チーン
魔理沙「そういえば渋ってたな」
するとコクワガタが白羽を広げたかと思うと、魔理沙に飛びついてきた。
どうやら幻想郷の甲虫は羽が白くても飛ぶことができるようだ。
魔理沙「お、おいおい!お前まだ羽白いんだろ!?羽化したばっかりでも飛べるとはいえ、はしゃぎすぎたら…」
コクワガタ「いいのいいの!ぼくね、げんそーきょーのいろんなところまわってね、げんそーきょーはどんなせかいなのかね、い~~~っぱい『べんきょー』したいんだ!」
ケイロン「……そ、そういうわけだ。我々はこれから仕事があるからこの辺で」
慧音「今日1日世話よろしく頼んだぞ~」
こうして慧音とケイロンは仕事のため、寺子屋へ入っていった。
何を思ったのか、ソウゴが寺子屋の中を覗く。大勢の子供が座っており、その中にはチルノと大妖精をはじめ、小鳥の羽を生やした少女、ホタルのようなボーイッシュな少女など様々な種族がいる。
そして彼女たちもまたチルノと大妖精と同じく甲虫をパートナーとしていた。
ソウゴ「ところで鎧丸とツルギ大丈夫かな…?」
ギルティ「そういや確かにあいつらいねぇな。一体何があったんだ?」
???「どけぇぇぇい!!!!貴様ら雑魚がこの我に勝てると思っているのかぁ!!!!」
霊・ソ・魔・ギ「「「「!?」」」」
突然の叫びと共に3匹の甲虫が霊夢たちの前に落ちてきた。その甲虫はアヌビスゾウカブト、マキシムスマルバネクワガタ、マンディブラリスミツノサイカブトだった。
霊夢「また誰かオズワルドをパートナーにして暴れてるの!?今度は誰!?」
叫び声を聞いて立ち直った霊夢。落ちてきたアヌビスたちを見て警戒する。
マキシムス「くそっ!何なんだ、あいつの強さとデカさは!」
マンディブラリスミツノ「あんなデタラメに強くてデカいオオクワガタがいるかよ!」
アヌビス「あのジジイクワガタに何ビビってんだお前ら!今日こそあいつを倒すって言ったのはどこのどいつだ!」
霊夢「あっ、こいつらこの前私たちに喧嘩売ってソウゴにコテンパンにされたチンピラじゃん」
魔理沙「私たちもこいつら知ってるぜ。わざとぶつかってきたのに私たちのせいにしやがった奴らだろ?」
その時だった。マンディブラリスミツノが巨大な何かにつかまれると同時に姿を消したのは。
ギルティ「き、消えた!?」
ソウゴ「上で羽音がするよ!?」
見上げると、マンディブラリスミツノがクワガタらしき甲虫の大顎に挟まれていた。
マンディブラリスミツノはここから抜け出そうと必死にもがいている。
???「どれ、一発決めてやろう!!『スーパーグリーンアロー』!!」
マンディブラリスミツノ「うぎゃああああああ!!」
クワガタらしき甲虫はマンディブラリスミツノをつかんだまま上空から落下し、地面に叩きつけた。
その衝撃で立っていられないほど地が大きく揺れ、地面にも大きな窪みができ、マンディブラリスミツノは宙を舞った後、地に倒れ伏した。
マキシムス「死ねぇぇぇぇぇ!!」
???「甘いわぁ!!『独楽』!!」
マキシムス「ホゲエエエエエエエエエ!?」
襲ってきたマキシムスの足に自身の大顎を引っ掛け、勢いよく回転させる。するとどうだろう、マキシムスはオモチャの独楽のように回転したではないか。
それをよそにクワガタはアヌビスに目を向けた。
???「腹ごなしに散歩していたが、こんな弱者が我の相手とは運動にもならぬ!メンガタとサビーといい、この轟天を打ち倒せぬとはまだまだ軟弱だなぁ!」
どうやら彼の名は轟天というようだ。彼の見た目だが、マンディブラリスミツノが言っていたように、種類はオオクワガタ。だがお前は本当にオオクワガタなのかと言いたくなるほどの見た目だった。
大きくたくましい体にディアボロみたく全身に刻まれた無数の引っ掻き傷、右の大顎より大きく発達した左の大顎。そして全ての足が他の甲虫に比べて極太かつ頑強。まさに化け物といってもいいような姿である。
アヌビス「バカにしやがってクソジジイがァァァァァァァァ!!」
轟天のハサミ技とナゲ技を食らい、あっけなく倒れたマンディブラリスミツノとマキシムス。そんな彼らを見てアヌビスは激昂しながら轟天に突撃した。
ゴワアアアアアアアアン
アヌビス「ゴブゥ!?」
轟天「フン!歳を重ねたがこの轟天、若さに遅れを取るほど鈍ってはおらん!」
一瞬何が起きたのかアヌビスにはさっぱりわからなかった。
だが霊夢ははっきりと目の当たりにしていた。突撃したアヌビスに轟天がとった行動を。
霊夢「あのオオクワガタ……大顎じゃなくて足で殴った!?」
ギルティ「足!?」
そう、轟天の頑強な前足がアヌビスの頭めがけて振り下ろされていたのだ。
アヌビス「ぁ………ぁ………」
殴られた衝撃で脳震盪を起こしたのか、動きが止まったアヌビス。足で殴ることで敵の動きを止めるなど霊夢たちは今まで一度も見たことがなかった。
轟天「我が奥義を味わえるのだ、生きてその技を覚えておれ!これが我が奥義!『激震』だァァァァァ!!」
動けなくなったアヌビスの脇腹を発達した左顎で殴った。アヌビスはそのまま吹き飛ばされ、その飛距離は10メートル以上にも及んだ。
轟天「グハハハハハ!非力なり!我を超越しようと思う者は他におらんのか!」
コクワガタ「うわぁ……あのむしさん、すごくつよい……ぼくもきたえたらあんなふうになれるのかなぁ?」
圧倒的な力に翻弄された挙げ句、倒されたアヌビスたち。轟天の戦いぶりを見て目をキラキラさせるコクワガタ。轟天は笑った後、彼の戦いぶりを見ていた霊夢たちに目を向けた。
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