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××・×××・チャンネル

作者:滸幻
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 血に濡れた男の手が、逃げる少女の腕をつかむ。
 柔らかくウェーブした栗色の髪が広がり、男の方へと引き寄せられる。
 少女の手で小さく光っていたロウソクが足元へと落ち、一瞬だけ強く輝いた後で画面が薄暗くなる。
 繋いでいた手が離れたことに気づいた少年が振り返り、少女を取り戻そうと勇敢にも男に立ち向かう。
 少年の必死な顔が近づき、ぐにゃりと歪む。画面いっぱいに映された顔の中、両方の瞳が見開かれる。
 左耳の上から右の鼻孔まで振り下ろされた銀色の刃が、ゆっくりと抜かれる。切れた皮膚からは鮮血がにじみ、幾筋もの線を描きながら顔を染め上げていく。
 大きく開いたままの口から血があふれ、右の瞳がぐるりと上を向く。斜めに切られた左の眼孔からは眼球が零れ落ち、細い神経によって頬のあたりで揺れている。
 左半分の顔が、ズルリと前側に滑る。驚くほど綺麗な切り口からは白い骨がのぞき、白みがかったピンク色の肉の上で脈打つ、青白い血管が見える。
 崩れ落ちそうになる少年の頭が、右側から現れた何かによって、反対側に吹き飛ばされる。一瞬のことで何が起きたのかは分からなかったが、カメラはゆっくりと左側に向いていく。
 緑色の苔がついた廊下の壁に、放射線状に赤黒いものが飛び散っていた。飛沫の中心にはどす黒い肉の塊が、錆の浮いた太いパイプで壁に打ち付けられていた。
 左側から貫通したパイプは顔の上半分を押しつぶし、パイプの先端からは肉の混ざった鮮血が流れている。
 衝撃で顔からはがれ、壁に張り付いていた肉片が力なく落ちていく。黒い毛がついていたことから、頭部のものだと分かる。
 醜く潰れた顔、引きつったように上下する喉仏、血を吸い染まるワイシャツ、大きく痙攣する肢体、紺色のパンツに広がる染み。
 ジワリと濃く色づいていくパンツの裾からは、茶色が混ざった液体が足首に垂れ、底がすり減ったスニーカーを汚していく。
 足元に広がる液体を避けながら、少年の死体に近づく。
 飛び出した右目にはもう光はなく、折れて曲がった鼻からは、血に混じって小さな薄いピンク色の肉片が流れている。砕けた顎は斜めにずれ、血色を失った舌がだらしなくはみ出ている。
 歯は殆どが衝撃で飛び散ったようだが、下あごに残った数本が窮屈そうに身を寄せ合っている。
 男の大きな手がパイプを掴み、黒い何かが少年の亡骸を壁に押し付ける。
 それが真っ黒なブーツだと悟ったとき、残っていた下顎がグチャリと潰れた。
 壁に刺さったパイプを抜こうとしているようだが、深く刺さってしまったのか、なかなか抜けない。
 力を入れて引き抜こうとするたび、ブーツが力強く壁をける。
 そのたびに、少年の顔がつぶれていく。
 歯が落ち、折れた骨が滅茶苦茶に肉に突き刺さる。鋭く尖った骨に切り裂かれた肉が、踏みつけられるたびに飛び散る。
 やっとパイプが抜けたとき、顔の下半分は消失していた。
 少年の骸が支えを失い、膝を折って地面に倒れこむ。腰がくだけたように潰れた上半身が、汚水の上に落ちる。
 茶色と黄色が混じった液体に、未だに流れ続けている赤い血が混じる。
 肉と汚物が混ざり合う様子を映していたカメラが、滑るように右側に向く。
 そちらに何か発光するものがあるのか、ぼんやりとした黄色い光が、徐々に明るくなっていく。
 光源の正体は、白いロウソクの先に灯った赤い炎だった。
 薄暗い廊下を淡く照らす、ロウソクを持つ真っ白な細い指。
 
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