魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百六十二話
決闘の結末は言うまでもないだろう。
ココロワタリウツスナリを砕き、飛来した妖刀心渡。
西部ガンマンの決闘のようなそれは原作通り幕を閉じた。
気功を会得し、剣術を学び、その気になりさえすれば正面からでも彼の初代怪異殺しと打ち合えるだけの力を与えたにも関わらず、彼は力よりも知恵で打ち勝った。
「congratulation!」
さて、我が姉上が初代怪異殺しとの別れを告げ、ひと段落したところで声をかける。
パチパチとわざとらしく、大仰に、芝居がかった仕草で。
「実に素晴らしい。その知恵は君の財産だ。これからも力に溺れずに、頑張ってほしい物だ」
睨まれた。怖い。
これ暦さんが吸血鬼だったら確実に呪われてるな。
「おいおい、そんなに睨むなよ我が甥よ。機嫌直せって。奴に勝った報酬あげるからさ」
「報酬? どうせまた碌でもない…」
「羽川翼の居るところまでの直通通路」
「っ!」
「さぁ、どうする?」
暦さんと我が姉上を疑似瞬間移動で援軍に向かわせ、この場には俺、臥煙、エピソードが残った。
「で、臥煙。報酬の件だ」
「怪異の元を呼び出すってアレか」
臥煙は少し嫌そうな顔で答えた。
「そ。マイクロブラックホールを生成し次元に穴をあける。そして喚起術式を使ってあっちからエネルギーを引き出す」
「その怪異が実害を出さないという保証は?」
「無いね。取り敢えず召喚したら疑似人格プログラムを入れたISコアに封印する。
コアは人間の魂の器を模してるから取り憑く事ができる。コレは俺や箒の使い魔と我が姉上で実証済みだ」
「完全自立型ISでも作るのかい?」
「いや。作るのは発電機だ。お前も俺たちの魔法がイギリスや仙人の物とは違うのがわかるだろう?」
「ああ。是非とも理論を教えてほしい物だが、それはご法度だ」
魔法使いや祓魔師の術は秘奥も秘奥。
そこら編の常識というか不文律は守るようだ。
「俺たちの魔法は機械を通すことで制御する事ができる。が、俺たち魔法師が常に魔法で機械を動かし続けるのは俺たち自信を機械のパーツにしてしまう。
そこでだ。別の何かで代用すればいいと考えた訳だ」
「それが怪異って訳か。だが怪異が都合よく…いやそういう事か。
君は死んだら地獄行きだな。まさか自分の都合のいい生命体を作ろうとは」
「コアの疑似人格が本物の魂になるかはわからん。失敗すれば食えばいい。
許可を願いたい。元締め様」
「ふむ。君はさっき発電機と言ったな」
「ああ。そうだが」
「燃料は?」
「んー?別に何でもよくない?」
「ソコを聞かないことには何も言えないね」
「アンタの思ってる通り人間さ。霊気や気功、マナ、プラーナ、シャクティ。呼び方や運用方法は様々だが人間の生命エネルギーに変わりはない」
「却下」
「使うのは裏の人間だし証拠も残さない。それでもか?」
「……具体的には?」
「箒を狙う各国工作員。あとは俺を狙う女性権利団体の鉄砲玉」
「なるほど」
「更に言えば俺は自分たちを害そうとする人間以外を食えない。
それが小星娘娘との契約だ。アンタと結んだのと同じ術式。それも力量はあちらが上。破ることはできない」
「いいだろう。ただし術式には立ち会わせてもらう」
「妥当だな」
臥煙を伴って帰宅すると玄関で箒が寝ていた。
ドアを開けてすぐ。
土間のすぐ奥。
狐モードで。
道を塞ぐように。
「入れないんだが?」
「きゅやー」
不機嫌そうな一鳴きのあと、尻尾で引き寄せられた。
背中にモフッとした感触を感じ、気づいた時には箒の下に居た。
ズシッと重みが加わる。
「んむー! むー!」
重い。温い。柔らかい。
取り敢えず話が進まないので魔法で箒を浮かせる。
「ようやく臥煙からレイヴの実証実験の許可が降りたんだよ」
と箒の下から出つつ、義足の足先の形を変えながら靴を脱ぐ。
「きゅあー」
箒が畳んでいた脚を解き、床につけたので魔法を切る。
箒は人一人が通れるスペースをあけて玄関でお座りの姿勢になると、狐の姿で臥煙に深々とお辞儀をした。
「うきゅ」
「会うのは、そうだね。8年ぶりくらいかな。篠ノ之箒さん。
それにしても。大きくなったね、色々と」
「くゅ?」
臥煙の視線は箒の後ろに向けられている。
尻尾だ。
箒の4本のモッフモフの尻尾。
臥煙は靴を脱いで家に上がると、箒の尻尾に触れた。
「本物の尻尾なんだね」
「変な事したらこの場でぶっ殺すからな」
「しないしない。ブリュンヒルデ、レニユリオンに加えて伏見稲荷まで敵に回すことになる。
この力を与えたのもあのおっとり狐みたいだし悪用はできないだろう」
地下のラボへ向かうが、箒はついてこなかった。
ラボへのエレベーターに乗っても臥煙は驚かなかった
「どうせこれも知ってたんだろう?」
と臥煙に尋ねる。
「まぁ、何かあるとは思ってたよ。流石にここまでの防御結界は隠密の式神じゃ破れないからこの先に何があるかは知らないけどね」
ラボは物理的、機械的、電子的、霊的に防御されている。
それはこの女にラボの中を知られない為でもあるし、ヴァンパイア・ハンター達から逃げる為でもある。
が、今はもう知られても構わない。
俺は臥煙の協力者だし、ここで出来ることは西サハラでもできる。
エレベーターがラボのある階層まで降りる。
扉が開いた先、リノリウムの白い床。
「この先に召喚用の部屋がある」
廊下の先、実験室の扉を開けると古式魔法陣を書いた壁が一面に広がる。
部屋は真球だ。
その下方−1/√2の位置に床を置いている。
真球という完全な形はそれだけで霊的存在の出入りをしづらくする。
球直径は20メートル。
床の中心にはコアを置く支持台を設置している。
そして、マイクロブラックホール生成装置が球の中心に来るよう吊るしてある。
「この部屋自体が大きな魔円陣と言う訳か。三角陣はいいのかい?」
臥煙が言うので明かりをつけ、床を足で叩いて示す。
「ここだね」
と臥煙が三角陣に入る。
「そこ動くなよ。臥煙」
中心の支持台にコアを設置する。
「上から吊るされている装置の中の爆弾で空間に穴を開ける。初めていいか?」
「ああ、大丈夫だ」
扉を閉め、部屋が真球の完全性を取り戻す。
「タナトニウムカプセル起爆まで10カウント」
『タナトニウムカプセル起爆まで、10、9、8、7、6、5』
残り5秒のタイミングで喚起術式を起動し忠誠術式を待機させる。
『4、3、2、1、起爆』
天井から吊るされた装置のタナトニウムカプセルが起爆し、重力崩壊により空間に穴が開く。
「来い!」
直径10センチあるかないかという極小の侵食領域。
その中から何かが出てくる。
非物理的に光り輝く触手のようなもの。
似ている物を挙げるなら、昔東京で出くわした澱みだろう。
だがあれとは違う。
ただただ純粋な魔法的なエネルギーのような。
それでいて何かしらの意思を持つ何か。
無貌、無形、そして無垢。
続々と出てくる’それら’。
しかし根本はあちら側で繋がっている。
侵食領域から出てきた’それら’は領域の上でうねりながら一体となる。
そこでバシュンと音をたて、侵食領域が消え去った。
根本を切られ、現世に取り残された’それら’は自己を保つため急速に一体化する。
喚起術式を破棄。
「忠誠術式起動!」
一体となった’それ’に忠誠術式をかける。
「我に従え!」
’それ’は忠誠術式を受けると、抵抗を見せた。
自己保存の障害と感じたのだろうか。
真上で暴れる’それ’。
精神構造の異なるせいで、忠誠術式が効いていない。
いやこの言い方も間違っている。
’それ’は精神構造と呼べるものを持っていないのだ。
「想定外だなぁ」
となれば強硬手段に出るしかない。
いや、最初からそうすべきだったのだ。
「我が名は転生にして新生にして厭生の吸血鬼ユートピア・クイーンパラドクス・グリップアンドブレイクダウン!」
内に秘めていた物を開放する。
主にサイオンだ。
真上に右手を掲げる。
「封玉!」
サイオンで形成した球体の中に’それ’を閉じ込める。
握りつぶすように圧縮し、物理的にはバランスボール程まで小さくした。
左手でコアを取る。
「体をくれてやる!」
封玉にコアを投げつける。
サイオン壁をすり抜けたコアが封玉内に入った瞬間。
’それ’はコアに吸い込まれていく。
’それ’はコアを器として認めた。
封玉を解除。
何十何百倍の体積の非実体が小さなコアに収まっていく。
俺の手に落ちてきた時には、’それ’全てがコアの中に収まっていた。
「まるでポケモンだねぇ」
「少し違うな。ヤドカリに貝殻を与えるような物さ」
「ビジュアルの話をしてるのさ」
「そうかい」
手の中のコアから光が漏れる。
それは緑、ピンク、金の光。
コアの重みがフッと消えた。
サイオンとプシオンと物理的な光でできた粒子が人の形を取る。
心臓の位置。
そこにコアが透けて見える。
「成功。だな」
身長は、女性にしては高め。
緑がかった金髪。
ピンクのやや際どい服。
緑色の、リボンのようなアクセサリ。
「Happy birthday to Pino」
『ピノ……ワタシ、ハ ピノ」
「そうだ。お前はピノ。マギウスのピノだ」
『マギ……ウス」
マギウス。
それがこの怪異の名前。
この世ならざる’モノ’を押し込めて作られた者。
まっとうき全体に属するかもわからない’モノ’。
「紹介しよう。臥煙」
臥煙の方を向き、ピノを示す。
「彼女はピノ。ヒトの命を物理的エネルギーに転化する疑似永久機関”レイヴ”の根幹を成す存在。
世の科学者達がマクスウェルの悪魔と呼ぶ存在だ」
深々とお辞儀をしたピノ。
「まさか正真正銘マクスウェルの悪魔を作るとは。いや、これは称賛に値するよ」
「ついてはコレの量産を許可して欲しい」
「どうせもう器は量産してるんだろう」
「よくおわかりで」
「好きにするといい。そもそも私に君への命令権は無い」
「でも勝手にやったらコタンジェント差し向けるくらいはするんだろう?」
「しないよ。君のそれは禁呪じゃないからね。
あちらから彼女の素を呼び込む以外に魔法的プロセスをほぼほぼ使っていない。
高度に発達した科学は魔法と見分けがつかないとはまさにこの事だ」
「魔法も科学も根源は同じだ、と俺は考えている。俺たちはほんの少しだけ、この世界という板を斜めから見ているだけさ」
例えるなら三角関数とエクスポーネンシャルの関係。
「それは横からしか見れていない人類への嫌味かい?」
「さてね」
俺達は複素数を使っているに過ぎない。
数学の法則がもっとあるように、この世界にはもっと多くの見えないルールがある。
「そろそろ上がろう」
部屋の扉をあける。
概念的に閉じていた空間が開放される。
「行くよ。ピノ」
「出て、いいの?」
「俺はお前を閉じ込めるつもりはない。確かにお前をレイヴに組み込んだあとはコアを動かせないが、目と耳は制限しないし情報生命体のお前ならコア間の移動もできよう」
ピノの子機を全世界に配置し、地球全体の海水温や気温を下げ温室効果ガスを調整するのが今考えている計画だ。
どうせ電気エネルギーに変えて世界に変換するが、上がった熱量はまた冷やせばいい。
人間というほぼ無尽蔵のリソースを燃料に地球の気温を一定に保つ。
なかなかに邪悪なプランで我ながら笑えてくる。
「わかった。出る」
ピノを連れ出し、地上へ。
「よし。もう用はないな。帰れ臥煙」
とエレベーターからまっすぐ伸びる廊下の先、玄関を指差す。
真似してピノが指さした。
ちょっとかわいい。
「おいおいこんな夜中に女性を一人で放り出すのかい?」
「どうせ外にコタンジェント待たせてんだろうが」
ちゃんと視えてるからな。
「わかったよ。じゃぁ」
臥煙はまっすぐ廊下を進んで、玄関から出ていった。
特に何かを仕掛けられた形跡はない。
ふぅ、と一息つく。
そこでリビングのドアが開く。
「また女を増やしたのか」
と金髪にモフモフの4本の尻尾をたずさえた箒が出てきた。
あとなんか股間についてる。何故だ。
「人聞きの悪い事を言うな駄狐。コイツはピノ。レイヴの根幹を成すマクスウェルの悪魔だ。
あとお前は服を着ろ。そしてなぜ生やしている」
全裸のままの箒がピノをまじまじと見る。
「ふむ。こういうのが趣味か」
「そうじゃないのはお前が一番知ってると思うが?」
「言っただけさ」
そこでヒョイと箒に抱き上げられた。
「ピノ。私達はもう寝るがお前も来るか?」
箒の質問にピノは頷いた。
このあと十中八九にゃんにゃんするんだけど。
まぁ、いいか。
初めての実戦で昂ぶってるんだろう。
別にピノに見られたところで問題ないし。
と、こんな感じで夏休みが過ぎていった。
長い夏休みだったなぁ。
さて、暦さんのダブルはどうしようか。
それも今はいいや。
多分なんとかなるだろう。
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