Fate/WizarDragonknight
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
-亜空間-
「ここは……」
紗夜は、頭を振りながら周囲の景色を眺める。
見慣れたモノトーンな学校の廊下は、オレンジの殺風景な景色となっていた。
夕焼けのような空と、足元に薄っすらと広がる遺跡。砂でできたようではあるが、粒一つも欠ける様子もなかった。
「これは……?」
全くの見慣れないものしか目に入らない。底知れない不安を覚えながら、紗夜は周囲を探る。
夕焼けのような空。それはあくまで第一印象でしかない。空を見上げて目を凝らせば、空は赤や青、そのほか様々な色が無数に混じり合って出来ている。
建造物も、それが人工物とは思えない。建物のような形をしているが、入口などは見受けられない。あるのは建物としての容積と、そこに開いている窓だけだった。しかもその窓にはガラスなどは張られておらず、内側からの青い光で中が見えなかった。
「ここはどこなの? そもそも、学校にいたはずなのに……?」
スク水の少女になぜか命を狙われ、保登心愛が目の前で銀色のヒューマノイドに変身した。さらに、その銀色のヒューマノイドは、その右手から発生させた光により、紗夜をこの結界に巻き込んでしまったのだ。
遺跡のような街並みを歩いていると、遺跡が波打つ。
固形物にそんな現象が起こるのか、と紗夜が疑問に思うのと時を同じく。
その中から、スイムスイムが姿を現した。
「!」
紗夜の体がのけ反るのが一瞬だけでも遅れていたら、紗夜の体に一生ものの傷が出来ていた。
さらに、スイムスイムの攻撃は続く。生身のまま、生まれ持った反射神経のみでその刃をよけ続ける。
「なんなのっ!」
さらに攻撃。
だが、それを防ぐ、銀の腕。
「あなたは……?」
銀。そうとしか形容のできない人物。
胸にTの字のような模様を持つ、銀色のヒューマノイド。
紗夜の記憶通りならば、彼がこの世界に自身を巻き込んだ。
その結果として、風紀委員の足を止められた。彼は、しばらく無言でこちらを振り向いた。
「何ですか?」
あのスク水少女から自分を助けてくれたのか。それさえも確信が持てない。
だがすぐに、銀はスク水少女を向き、紗夜の前に立ちはだかった。あたかも自分を守ろうとしているようだった。
「貴方は……一体?」
だが、銀は紗夜に何も答えることなく、スク水少女、スイムスイムへ構える。
すると、スイムスイムも完全に銀のヒューマノイドへ敵意を抱く。明らかに矛先が明らかに矛先が銀のヒューマノイドへ向けられていた。
「邪魔……」
スイムスイムはそう言いながら、銀のヒューマノイドへ刃を振るう。だが、銀のヒューマノイドはそれを受け流し、その柄を掴む。
「!」
さらに、そのままスイムスイムを振り回す。長槍からスイングされ、大きく投げ飛ばされるスイムスイム。その落下とともに、赤い土煙が舞った。
「痛い……」
スイムスイムが起き上がりながら、その体を水に変えていく。
やがて、砂を水に変えた彼女は、その姿をくらませたのだった。
それに対し、銀のヒューマノイドは胸元に手を当てる。
すると、眩い光とともに、その姿は変わっていった。
銀から赤へ。その体色のほとんどが深紅に染まり上がり、さらにその胸元には、水色に輝く水晶が煌めいていた。
銀のヒューマノイド、改め赤のヒューマノイド。
紗夜は、彼が静かに佇んでいるのを見つめることしかできなくなった。
そして。
「きゃっ!」
紗夜の悲鳴。
赤のヒューマノイドは、背後の紗夜の腕を掴み、そのまま引き寄せたのだ。入れ替わり、地面から襲い掛かってきたスイムスイムの刃を、赤のヒューマノイドはその右肩に受けた。
大きく怯み、後退する赤のヒューマノイド。
「あの、大丈夫ですか?」
紗夜は肩の心配をしてしまう。
赤のヒューマノイドは頷き、また紗夜を後ろに下がらせる。
さらに、スイムスイムの攻撃は続く。地面に潜っては斬撃、また潜っては斬撃。
この赤のヒューマノイドは、紗夜を決してスイムスイムの攻撃に晒させまいとしているのか、全て彼が受けていた。
「どうして……?」
彼がなぜそこまで紗夜を守るのかが理解できず、紗夜は困惑を浮かべる。
「保登さん……?」
赤のヒューマノイドは、ココアが変身したもの。目ではその情報が分かっているのに、それが事実だと脳が認識できない。
そもそも、元気が服を着て歩いているような彼女と、寡黙な上、男性的な体つきのこのヒューマノイドが同一人物だとはとても信じられない。
スイムスイムの槍を受け止め、その体を捕まえる赤のヒューマノイド。
彼はまたしてもスイムスイムを上空へ投げ飛ばし、彼女の自由を奪った。
上空。それは、どんなところでも泳げる彼女にとって、唯一能力が使えない場所。
赤のヒューマノイドは、両手を交差させ、右手を突き出す。高速で飛んでいくエネルギーの刃は、そのままスイムスイムの体を切り裂き、ダメージを与えた。
「っ……!」
体を水にしているため、それほどのダメージはないであろうが、落下してきたスイムスイムは、あきらかに先ほどとは打って変わって、顔を歪めていた。
さらに、赤のヒューマノイドの攻撃は続く。
両手をまた組む。すると、彼は人型の生物とは思えない速度で移動し、気付けばもうスイムスイムの背後に回り込んでいたのだ。
「速い!」
紗夜が舌を巻く間もなく、彼はスイムスイムの腕を背中から捕らえる。
だが、それ以上彼女へ攻撃しようとはしない。まるで、「もう戦いは止めよう」と語っているようだった。
スイムスイムはしばらく赤のヒューマノイドを睨んでいる。
やがて、赤のヒューマノイドは彼女から抵抗の意思が無くならないことを確認したのか、その手から槍を奪い取る。
「!?」
それには、スイムスイムも表情を見せる。目を大きく見開き、長槍を取り戻そうとした。
だが、それよりも先に赤のヒューマノイドは、長槍を上空へ放り投げる。さらに、続けて左右の手から電流を迸らせる。
「やめて……! やめて……!」
初めてあの子の声をまともに聞いた。そんな気さえする。
赤のヒューマノイドは、両手をL字型に交差する。すると、縦に構えた部分より、光の本流が発射された。
それは、スイムスイムの武器、ルーラーを一瞬で飲み込む。数回のバチバチという音を奏でさせたそれはやがて。
爆発し、消滅していった。
「あ……あ……ッ!」
得物を失った。その事実に、スイムスイムはショックを受けたようだった。目から涙を流しながら、分子の一つ残らず消滅した場所を見つめていた。
「ルーラー……ルーラー!」
やがてスイムスイムは泣き叫ぶ。紗夜の命を狙っていた時や、赤のヒューマノイドとの戦闘時はほとんど無表情を崩さなかったのに、今回はその面影もない。
表情を大きく崩し、表情筋を大きく動かし、涙と鼻水で顔をグチャグチャにする。やがて、少女は嗚咽、謎の空間に嘔吐する。
さっきまで自らの命を狙っていたスイムスイムだが、その慟哭の仕方には、紗夜も少し同情してしまった。
しばらく、赤のヒューマノイドもまた攻撃の手を止めていた。彼もまた、静かにスイムスイムの動きに注目していたのだった。
スイムスイムがようやく体を動かしたのは、彼女の涙が乾いたころだった。
ギラギラ光る目つきで赤のヒューマノイドを見つめ、告げた。
「あなたは許さない……」
もはや彼女の眼中に、紗夜はいない。
赤のヒューマノイドへ敵意の眼差しを向けながら、彼女の体はどんどん沈んでいった。
しばらくスイムスイムがいた地点を見ていた赤のヒューマノイドは、やがて右手を突き上げた。
すると、再びのオレンジの発光とともに、結界が消えていく。
すると、オレンジのヴェールは、やがて見覚えのある校舎の廊下となった。
「戻って……来た……?」
その安心のあまり、紗夜は尻餅をつく。
「た、助かった……」
これまでの生涯の中で、一番深いため息をつく。
紗夜はその後、赤のヒューマノイドを見つめた。
「あの、助けていただいて、ありがとうございます」
彼はしばらく紗夜を見返す。
深く頷くと、その姿は淡い光となっていった。やがてそれは消滅し。
高校制服を着た、ココアの姿となった。
「保登さん!?」
紗夜の呼びかけにココアは答えることはなく。
力なく倒れ、紗夜が思わず受け止めたのだった。
本当にココアだったのだろうか。その疑いは晴れない。しかし、彼女の右肩に大きな切り傷があるのは、紗夜には無視することが出来なかった。
後書き
ハルト「はいはい。モカさん、次行きますよ」
モカ「え? でも、もうお届は終わったんじゃないの?」
ハルト「仕事じゃないです。そろそろココアちゃんやチノちゃんも帰ってきますし。そもそも、ココアちゃんと積もる話もあるんじゃないんですか?」
モカ「そうだけど、ココアが好きになったこの町を、もっと見て見たくなって」
ハルト「しばらくこっちにいるんだったら、それこそそんな時間いくらでもあるでしょうに……」
モカ「ウサギさんモフモフ……」
ハルト「ってなんか一匹連れてきてるー!? ほらモカさん、そいつ帰してください!」
モカ「ハル君、違うよ?」
ハルト「何が?」
モカ「ウサギは匹ではなく、羽で数えるんだよ?」
ハルト「そういう問題じゃなーい! はあ……それではアニメ紹介、どうぞ」
___夢のない時代よ 目を覚まして 私がモテる未来まで この世界を赦さない___
ハルト「……明らかにこの流れでやるアニメじゃないよねこれ!?」
モカ「まあ、今までも流れとかあんまり気にしなかったからいいんじゃないかな? 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」
ハルト「タイトルすごいインパクトあるな……えっと、放送期間は2013年の7月から9月、と」
モカ「この黒木智子ちゃんも、私の妹に……」
ハルト「はい話の腰を折らないでくださいややこしくなるので。えっと、その黒木智子さんがぼっちな生活を送る学園もの……これ学園ものっていうのか?」
モカ「でも、どんどん成長していってると思うよ? きっとこのままいけば、皆とも仲良くなれると思うな。私は応援してるよ」
ハルト「おお、なんかお姉さんっぽい」
モカ「それと、ウサギさんモフモフ……」
ハルト「速く帰してくださいそのウサギ!」
ページ上へ戻る