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Fate/WizarDragonknight

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悪意なき殺意

 始業式は、午前で終わる。
 少なくともココアがこれまで属していた学校はそうだった。
 見滝原高校もまた例外ではない。

「今日、ラビットハウスにお邪魔してもいいかしら?」
「あ、私も行きたいです」

 千夜と忍。二人はココアの席に集まり、ココアもそれに頷いた。

「うん。いいよ。実は、昨日からお姉ちゃんがラビットハウスに来ているんだ」
「まあ、ココアちゃんのお姉さん?」

 千夜が両手を合わせる。
 さらに、忍が笑顔を浮かべる。

「ココアちゃんのお姉さん……一体どんな金髪なんでしょう……」
「お姉ちゃん金髪じゃないよ!?」
「冗談です。是非、アリスも一緒に連れて行きましょう」
「賛成。じゃあ、行こうか」

 ココアはそう言って、荷物を肩にかけた。
 まずは隣のクラスのアリスに話しかけに行こう。そう思って、二人は教室を出ようとした。
 その時、廊下でその声が響いてきた。

「不幸だあああああああああああ!」

 目的の教室とは真逆の方向。見て見れば、ツンツン頭の少年がシスター姿の少女に頭を噛まれてる。

「あ……また上条君ね」

 千夜が呆れた表情で、ツンツン頭を眺める。
 忍も頷く。

「あの銀髪シスターさん、いつも上条君を襲ってるよね。金髪だったら、私も噛みつかれたいのになあ」
「まあ、あれならいつものことだからね。それより、早くアリスちゃんのところに行こう」
「不幸だああああああああああああ!」

 上条君なる少年のシスター被害を見捨て、三人は隣のクラスに入る。

「アリス!」

 真っ先にアリスに抱き着く忍。小さく悲鳴を上げたアリスは、背後からの襲撃者の正体に気付く。

「しの!? びっくりした」
「えへへ。はやく金髪成分を吸収したくて」
「金髪成分?」

 ココアが首を傾げる。
 すると、それを千夜が補足した。

「きっと、しのちゃんが活動するために必要なエネルギーなのね」
「私、電池扱い!?」

 叫ぶアリス。
 やがて、ココアがいつも一緒に属している四人組になり、教室を出ていく。
 いつも通りの風景。一年前にココアが見滝原にやってきてから、ずっと繰り返されていた日常だった。



「……さん。……さん」
「……はっ!」

 紗夜は、はっと意識を取り戻す。
 混濁とした意識は、現状に違和感を抱いていた。
 生徒たちはそれぞれ荷物をまとめ、多くは帰路に立とうとし、あるいはどこかに寄り道をしようとしている。
 そして目の前。長い黒髪の少女が、紗夜を見下ろしていた。大人びた顔付は、街を歩けばスカウトされない方が珍しいとさえ思ってしまう。冷たい眼差しからは、正論以外を吐くことを知らず、常に周囲に棘を纏っているようにも見えた。

雪ノ下(ゆきのした)さん……」
「大分疲れているのね。貴女が学校で寝ているなんて、珍しい」

 黒髪の少女、雪ノ下雪乃(ゆきのしたゆきの)の言葉に、紗夜は「ええ」と頷いた。

「そうね。少し、疲れが溜まっているのよね」
「正月休みでそこまで弛んでいたの? 鬼の風紀委員が聞いてあきれるわ」
「……私だって、人間よ。そういう時もあるわ」
「貴女の口からそんな言葉が出てくるなんて。明日は雨かしら。いいえ、今ならまた雪が降りそうね」

 雪乃の軽口も、耳に届かなかった。
 紗夜は額に手を当てながら、深くため息をつく。

「貴女、まだ手の傷治ってないの?」

 雪乃の言葉に、紗夜は額に当てていた手を見下ろす。手首のところを包帯で包んだそれ。紗夜はしかめた顔で見下ろす。

「ええ。……中々治らないわ」
「骨折じゃないのよね。少し長引きすぎじゃないかしら」

 そういわれて、紗夜はこの傷___黒い、刺青のような紋章について疑問を思い返す。

「去年の……八月ぐらいだったかしら」
「もうすぐで半年よ。大抵の外傷なら治るのに」
「ええ。これは……」

 紗夜は、脳内でこの刺青が出来たときのことを思い返す。
 白と黒の熊を脳裏に思い浮かべたところで、雪乃は紗夜へ背中を向けた。

「部活?」

 去ろうとする彼女へ言葉を向ける。
 雪乃は頷く。

「奉仕部は今日から活動よ。まあ、相談なんてほとんどないけど」
「来るといいわね」
「ええ」

 そういいながら、雪乃の姿は教室からいなくなった。
 帰ろう。そう決めた紗夜もまた、荷物をまとめ始めた。

「ゲート発見」

 だが、廊下で、紗夜はそんな声をかけられた。
 振り向けばそこには、用務員の姿があった。
 学校でもよく見かける顔。年配で、ずいぶん優しい笑顔を向けてくれる印象があった彼だが、今回はなぜか危険を感じさせる笑みを浮かべていた。

「逃げるなよ」

 はたしてそれは自分へ向けられているのか。
 それさえも分からないまま、彼はじりじりと紗夜との距離を縮めていく。
 恐怖を感じた紗夜は、そのまま廊下を走る。
 普段自分が注意している行動をしながらも、それが間違いではないと、背後で走ってくる用務員を見て確信する。
 やがて、階段でつまずき転倒。踊り場に背中を預けながら、紗夜は近づく用務員へ抵抗出来ずにいた。
 そして、見た。
 用務員の全身に、不気味な紋様が浮かび上がるのを。そしてそれに準じて、体が変化していくのを。

「さあ、絶望して新たなファントムを生み出……」

 そこまで言ったところで、彼の言葉は途絶えた。
 胸を貫く銀色。それは刃。間違いなく、心臓を貫いている。
 それは、歪な姿に変わろうとしていた用務員にとっても同じ事らしかった。
 だが、血は一切でない。代わりに、彼の体は徐々に灰色になっていく。
 やがて、聞き取れない言葉を紡ぎながら、用務員の体は消滅していった。
 そして、代わりにそこには、白いスク水姿の少女がいた。
 ぼーっとしたような表情に、銀の長槍を近づける。命の恩人と認識しながらも、その特異な姿から、紗夜は礼が言えないでいた。
 しばらくスク水少女___その名がスイムスイムであることなど、紗夜が知る由はない___を見つめていた。彼女の退屈そうな目は、しばらくその武器を泳ぎ、告げた。

「邪魔」

 何が邪魔なのか、紗夜には判別がつかない。
 たまたま通りかかったが、目障りだったからあの怪物を葬ったのか。それとも。
 獲物を横取りされそうだったから邪魔だったのか。
 スイムスイムは、今度はしっかりと紗夜を見据える。
 そして。

「うわあああああああっ!」

 紗夜は慌てて回避。
 それまで紗夜がいた場所に、スイムスイムの武器が突き刺さった。

「マスターの言った通り。貴女をやっつけます」

 彼女の発言の意味は何一つ分からない。だが、立ち止まれば殺されることだけは確かだった。
 下ろうとした階段。だが、その先、階段の中から、スイムスイムの姿が現れる。
 コンクリートの中を泳げるという異常性に青ざめながら、紗夜は階段を駆け上がる。
 すでに人がいなくなって久しい三階のフロア。そこを駆ける紗夜は、壁が波打つ気配に屈みこむ。
 丁度その頭上を、スイムスイムの殺意の刃が通過した。

「何なのっ!?」

 さらに紗夜は逃げる。だが、廊下の左右を交互に飛び交う音に、紗夜の体はますます焦りを募らせていく。

「助けて……誰か……日菜……」

 徐々に紗夜の声が弱々しくなっていく。
 一方、スイムスイムの無情な水泳音は、どんどん近くなっていく。
 そして。

「危ない!」

 紗夜の体を、ココアが突き飛ばす。
 スイムスイムの刃は、ココアの背中を切り裂き、彼女に悲鳴を上げさせた。

「保登さん!?」

 思わぬココアの登場に、紗夜は驚く。地面を転がった彼女の背中は、今しがたスイムスイムの斬撃によって赤く染まっていった。

「保登さん!? なんで……?」
「えへへ……上級生の友達にあいさつに来たら、ビックリしちゃった……」

 ココアは起き上がりながら、スイムスイムを見つめる。

「保登さん、大丈夫ですか?」
「うーん……あんまり……」

 ココアは努めて笑顔で、紗夜へ対応する。

「千夜ちゃんたちを、先にラビットハウスに行くように言っておいてよかったよ……こんなことになってたなんて」
「そうですね」

 そういいながら紗夜は、スイムスイムの目を見上げた。
 彼女の目は、紗夜を、ましてやココアを見てはいない。
 彼女が捉えているのは、虚空。
 今から手にかけようとする相手の顔も、何も見てはいない。
 ただ、作業的に、その刃を振り上げた。

「やめて!」

 スイムスイムの刃が紗夜の首を切り裂くよりも先に、ココアは彼女の体にタックルする。だが、スイムスイムの体は、全てが水で出来ており、ココアの体が簡単に通過、紗夜とは反対側の廊下に投げ出される。

「えっ!?」

 現実ではとてもありえない現象。それに目を大きく見開いたココアへ、スイムスイムの殺意が自らに向けられる。

「いけない!」

 紗夜はすぐそばにあった消火器を手にかける。その重さに腕を一瞬持っていかれながらも、それを投影。

「……」

 何も語らず。スク水の少女は、体を通過した消火器など気にも留めず、ただ目標を紗夜からココアに変えただけだった。それだけは間違いない。

「邪魔」

 彼女が語った、それだけが主な理由。
 スイムスイムは、振り回した武器……ルーラをココアへ向けた。

「お姫様になるために……悪い人はやっつける」

 彼女が言っていることは理解できない。だが、彼女が殺意をもって襲い掛かっているのは紛れもない事実だった。

「う、うわああああああああああ!」

 悲鳴を上げながら、ココアは___いつの間にか取り出した、白い日本刀型の取り出した。おそらくはココア自身も知らないであろう、それの使い方。刀身部分から眩い光を放ちながら、それはココアとスイムスイムを包んでいく。

「……っ!?」

 眩さに目を瞑った紗夜は、目の前の景色の変化に愕然とした。
 殺意の刃を振り下ろしたスイムスイムはそのまま。壁に張り付いたままの紗夜も変わらず。
 ココアがいた場所に、銀がいた。

「何……? あれ?」

 思わずそう口走ってしまう。
 人の姿形こそしていれど、その顔には人間のような筋肉はない。仮面のような張り付けられた表情と、胸元にある唯一の赤いT字にも似た紋章が特徴だった。
 銀は紗夜を少しだけ振り向くと、スイムスイムとの戦闘に入る。だが、狭い学校の中では、どうしても周囲に被害が出てしまう。廊下の壁が砕かれ、窓ガラスが割れていく。

「や、止めなさい!」

 強く出たいが、恐怖に体が引き攣ってしまう。
 だが、それを見てか見ずか、銀の右腕に光が宿る。銀はそのまま、拳を突き上げた。
 すると、淡い光が廊下の天井がオレンジに染まっていく。

「待ちなさい!」

 紗夜は二人を止めようと駆け出す。だが、その時紗夜は気付かなかった。
 オレンジの輝きが、ドームのように広がっていく。その中に、足を踏み入れてしまったことに。
 そして。
 紗夜の姿は、完成していく異空間の中へ消えていった。 
 

 
後書き
モカ「う~ん……モフモフ……」
ハルト「うわ~……膝と頭の上にウサギが乗ってる……しかも、両側にまで侍らせてるし」
モカ「モフモフ~」
ハルト「幸せそうだな……さっきまでサーヴァントと戦っていたのにね」
モカ「モフモフ……」
ハルト「すごいなあれ。どんどんウサギが集まっていってる。ていうかこの公園、あんなにウサギがいたんだ」
モカ「ああ……幸せ……」
ハルト「幸せそうなところ悪いんですけど、モカさ~ん」
モカ「何? ハル君? 君も一緒にモフモフしてあげる!」
ハルト「いや、ちょっと待って!」
モカ「ん? どうしたの?」
ハルト「そういう過度なスキンシップはココアちゃんたちにやってください」
モカ「え~? そんなこと言わずに」ガシッ
ハルト「割りとしっかりとホールドしてきたよ……今のうち今日のアニメ、どうぞ!」



___We are the ♰吸tie Ladies♰ なんてワンダフル 星空の下はダンスホール___

ハルト「となりの吸血鬼さん」
モカ「ハル君モフモフ」
ハルト「とまあ、こんな感じに、今を生きる吸血鬼をモフモフするアニメです。モカさん、さすがに気まずいので放してください」
モカ「え~? 仕方ないなあ……じゃあ、ウサギさんモフモフ」
ハルト「姉妹だな……えっと、2018年の10月から12月放送のアニメです。現代っ子吸血鬼ソフィーと、彼女が大好きな天野灯、そのほか周囲の日常が描かれているね」
モカ「ソフィーちゃんも私の妹にしちゃいたいね」
ハルト「言うと思った。やっぱり姉妹ですよ。ココアちゃんそっくり 
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