歪んだ世界の中で
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第十五話 幸せの中でその十三
「あとちょっとだけれど」
「もう無理かな」
「ううん、無理とかじゃなくてね」
「あっ、違うんだ」
「うん、これだけ食べたらね」
「食べたら?」
「何日分かの養分は貯まったよ」
そうなったというのだ。
「充分ね」
「何日もっていうと」
そう聞いてだ。希望は。
また考える顔になってだ。こう千春に尋ねた。
「千春ちゃんって食いだめできるの?」
「動物のあれだよね」
「うん、一杯食べてそれを胃の中に置いて」
そうしてだというのだ。
「何日も食べずに過ごすって。それかな」
「そうだね。動物ならそうなるよね」
「それができるの?」
「できるよ」
あっさりとだ。千春はそのことを認めたのだった。
「さっきも言った通りね」
「できるんだ」
「うん、できるよ」
「そうなんだ」
「だから千春ってね。時々ね」
「何日も食べないことがあるんだ」
「うん」
にこりとしたいつもの笑顔で。希望に答えたのだった。
「そうだよ」
「そうなんだ。凄いね」
「凄いかな」
「人間って食いだめできたのかな」
ふとだ。希望はこのことについても考えた。
「どうだったかな」
「できるんじゃないの?」
「千春ちゃんも実際にそうだから」
それならばだとだ。希望はそこから解釈した。
「だからなのかな」
「千春はそうだよ」
「じゃあ出来るんだね、食いだめが」
希望は特に深く考えなかった。ここでは。
千春ができるのならと考えてだ。そして言ったのだった。
「そういうことだね」
「うん、そうじゃないかな」
「僕はできないけれどね」
自分はできないことはわかった。それは。
「それでも千春ちゃんはできるんだ」
「便利だと思うよ」
「確かに。かなり便利だよね」
羨ましいとさえ思った。千春のそのことは。
だがそれで終わってだ。今はだった。
希望は千春と共にオムライスを食べ終えた。そしてその時に。
アイスが来た。そのバニラの丸い、白い皿の上にあるそれを見てだ。千春は言った。
「そういえば千春達ってね」
「アイスよく食べるよね」
「うん、そうだよね」
「アイスってさ」
どうかというのだ。そのアイスがだ。希望はこのことについて話した。
「僕達のラッキーアイテムかな」
「ラッキーアイテム?」
「いつも一緒に食べてるじゃない」
そのだ。アイスをだというのだ。
「それに今もね」
「一緒に食べるよね」
「それで食べる度に何時も何かいいことがあるから」
だからだというのだ。
「アイスは僕達のラッキーアイテムだね」
「そうなるんだ」
「アイスだけじゃないけれど」
こうした考えもだ。希望は語った。
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