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歪んだ世界の中で

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第十五話 幸せの中でその十一

「そうしてるんだ」
「そうなの。二人でなの」
「料理は親父さんと息子さんで。お袋さんがお茶やコーヒーを担当してるんだ。あとお菓子もね」
「じゃあアイスも?」
「そうだよ」
 まさにだ。それもだというのだ。
「お袋さんが作ってるんだ。それで接客もなんだ」
「さっきのウェイトレスさんは?」
「お店の娘さんなんだ。大学生のね」
「ふうん。そうなの」
「そうだよ。八条大学の人なんだ」
 彼女が通っている大学もだ。希望は知っていた。
「僕達の先輩になるね」
「八条高校だからよね」
「そうだよ。僕達より三つ位上で」
「ふうん、そうなの」
「このお店は一家でやってるお店なんだよね」
 希望は目を細めさせている。それはハンバーグの味に満足しているからだけはない。
「凄く家庭的でね」
「うん、家庭的だよねこのお店って」
「味もそうだよね」
「優しい味がするね」
 そのハンバーグからもだというのだ。
「本当にね。それでね」
「それで?」
「ハンバーグの後のオムライスだけれど」
「それも凄いんだよ」
「美味しいのね」
「美味しくて凄く大きくて」
 オムライスもだ。かなりの量だというのだ。
「普通はどちらかだけでもうお腹一杯になるけれど」
「希望は違うのね」
「身体が大きいからね」 
 大柄だからだ。余計に食べないと駄目だというのだ。
「それに最近特に食べる量が増えてるかな」
「やっぱり。身体を動かしてるから」
「そのせいだよね。それに食べても美味しいし」
 身体を動かしているとどうしてもそうなる。カロリーを消費するとその分食べたくなる。そしてその分だけ食べるものが美味しく感じられるのだ。
「だから余計にね」
「今みたいによね」
「食べられるんだ。だからね」
「ハンバーグだけでなくオムライスも」
「食べられるよ。けれど千春ちゃんもだね」
 千春も希望と同じだけ食べている。彼はこのことを今言った。
「食べるんだね」
「千春食べられよ」
「水泳してるせいかな」
 希望と一緒にだ。そうしているからだとだ。彼は考えた。
「そのせいかな」
「そうだよ。ただね」
「ただ?」
「千春って。食べたものを溜められるの」
「溜められるって?」
「うん、それができるんだ」
 千春は自分のことをだ。希望に話していく。
「根っこにね」
「根っこ?」
「そうだよ。根っこにだよ」 
 こう希望に話すのだった。
「溜められるんだよ」
「?どういうことかなそれって」
 根っこと聞いてもだ。希望は千春の今の言葉の意味はわからなかった。
 それで首を捻りながらだ。こう言うのだった。
「ええと。根っこっていうと」
「根っこは根っこだよ」
「だよね。根っこだよね」
「希望も根っこは知ってるよね」
「うん」
 植物のそれはだというのだ。希望も知っていた。 
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