| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歪んだ世界の中で

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十五話 幸せの中でその十

「サラダでね」
「そしてハンバーグを食べようね」
「そうしようね」
 こう話してだ。まずはその温かいスープを飲んだ。それからだ。
 今度はサラダを食べた。そのサラダもだった。
「優しい味よね」
「お野菜新鮮でしょ」
「生きてるよ」
 そのレタスやオニオンがだ。そうなっていると言う千春だった。
「皆ね」
「生きてるんだ」
「うん、生きてるよ」
 そうなっているというのだ。サラダの野菜達が。
「それにドレッシングもね」
「これはどうかな」
「尖ってないよ。けれど」
「けれど?」
「お酢もいいね」
 ドレッシングには絶対に入っているだ。それもいいというのだ。
「油もいい感じだよ」
「ドレッシングって実は難しいらしいけれどね」
「うん。バランスが大事だから」
 酢と油に香辛料、そしてその中に入れる様々なものの調和がだ。かなり大変なのだ。一口にドレッシングと言ってもだ。難しいものなのである。
「けれどこのお店のドレッシングはね」
「バランス取れてるよね」
「美味しい」
 そしてだ。千春はこの言葉を出した。
「このサラダも美味しいよ」
「お野菜だけでなくてドレッシングもいいから」
「うん、美味しいよ」
 笑顔でだ。千春はまた言った。
「とてもね。じゃあスープとサラダの次に」
「いよいよだね」
「うん、ハンバーグ食べよう」
 オムライスの前にだ。メインディッシュをだというのだ。
「この大きなハンバーグね」
「子供の頃からね。ここでハンバーグを食べるとね」
「食べると?」
「それだけでお腹一杯になったんだよね」 
 希望は今はサラダを食べている。だがそれと共にハンバーグを見ていた。
 そしてそうしながらだ。こう言うのだった。
「だからね。このハンバーグね」
「好きなんだね」
「ハンバーグの中では一番好きかな」
 ハンバーグは多くある、だがその中でもとりわけだというのだ。
「本当にね」
「そう。じゃあね」
「今から食べよう」
「うん、食べよう」
 丁度サラダも食べ終わった。二人共皿を奇麗にしている。そしてだ。
 ハンバーグの皿を前にしてだ。フォークとナイフを使ってそのハンバーグに目玉焼きごとナイフを入れる。一方をフォークで止めたうえで。
 切ったハンバーグを口の中に入れる。肉の旨味の中に細かく刻んで入れられている人参や玉葱の味もする。そして目玉焼きのそれも。
 そういったものがソースによりさらに濃厚な味にされている。そのハンバーグを食べてだ。
 千春は目をにこやかにさせてだ。こう希望に答えた。
「このハンバーグもね」
「美味しいよね
「うん、美味しいよ」
 まさにそうだというのだ。
「とてもね」
「そう。美味しいんだね」
「これがなんだね」
 また言う千春だった。
「希望がずっと好きな味なんだね」
「このハンバーグね。店の親父さんがずっと作ってたんだ」
「お店のおじさんが?」
「作ってたんだ。そして今はね」
「今は別の人が作ってるの?」
「親父さんと息子さんが作ってるんだ」
 今は親子二人で作っているというのだ。そのハンバーグを。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧