FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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遊び心
前書き
冒頭部分がやりたかっただけ説はある。
シリルside
「暑い・・・帰りたい・・・」
「早いよシリル・・・」
エルザさんを先頭にこの異常気象の原因を調べている俺たち。だが、この暑さがあまりにもひどくて、集中力が切れかかっている。
「でもやっぱり変ね」
「え?何が?シャルル」
「え~?見ててわかんないの~?」
俺たちの前を歩いている人型のシャルルとセシリー。彼女たちを目線を合わせるために翼を広げているハッピーは意味がわかっていないようで首を傾げている。
「ほら・・・ほとんどの木は枯れてるのに・・・果物が生っている木は無事でしょ?」
「他にも食料になりそうなものはほとんど被害が出てないね」
暑すぎて息が絶え絶えの俺とウェンディが答える。しかし、なんでこんなに俺だけダメージを受けてるんだろう?ナツさんはともかく、ルーシィさんやウェンディが大丈夫で俺だけなんて・・・なんか納得できない・・・
「そう言えば街の人たちもそんなに暑がっていなかったような・・・」
慣れてきていると言われればそれまでだけど、全員が極端に体調を崩している人や寝込んでいる人もいなかったし・・・もしかして俺って体力ない?
「一瞬でもいいからキンキンに体を冷やしたい・・・」
「ムチャ言わないの、シリル」
いくらなんでもこんなに動けないのは納得いかない!!しかもウェンディたちが大丈夫なのがより情けなさを感じてしまう。何か手立てはないものか・・・
「あ!!」
「何か思い付いたの~?」
「どうせしょうもないことでしょ?」
なんか猫耳コンビが失礼なこと言ってるけどそんなことは気にしない。だってこれほどの名案が思い付くなんて、誰も思わないだろうから。
「グレイさん!!」
「?どうした?シリル」
思い立ったが吉日!!俺はすぐに氷の魔導士であるグレイさんへと駆け寄り、手を握る。
「俺を抱いてくれませんか?」
「「「「「!?」」」」」
「ブフッ!!」
俺が考え付いたのは、氷の魔導士であるグレイさんにハグしてもらえば体を冷やせるんじゃないかということ。しかし、なぜか全員がこちらに一斉に視線を向け、グレイさんに至っては吹き出して顔を赤らめている。
「グレイ!!なんて言葉覚えさせてるの!?」
「俺は何も教えてねぇ!!」
「シリル!!なんで私じゃダメなの!?」
「え?氷属性じゃないから?」
ルーシィさんに怒られているグレイさんとウェンディに肩を掴まれブンブン頭を振られている俺。二人が何を勘違いしているのかわからないけど、俺はそれどころじゃない。
「グレイさん・・・涼しくしてください・・・」
俺だけ汗の量が明らかにおかしいのは全員理解していた。ウェンディから逃れられずにいる俺がそう言うと、グレイさんは意味をようやく理解してくれたらしく、頬に手を当てる。
「お前なんでこんなに汗かいてんだ?」
「顔も赤いし、そんなに暑さに弱かったんだっけか?」
心配そうに顔を覗き込んでくるグレイさんとナツさん。
「そんなの俺が聞きたいですぅ」
グレイさんの手で体を冷やしながら、ようやく元の状態に体が戻っていくのを感じる。しかし、なんでこんなに俺だけ疲れちゃうんだろ?早くなんとかしないと体が持たないよ・・・
第三者side
「なんだよ・・・あいつら・・・」
赤い炎のような髪をした少年は大きなタメ息を付きながら、自分たちの真下で作業をしている少年たちを冷ややかな目で見つめている。
「全然調査する気ねぇじゃねぇかよ」
思わず大声を出したくなったが、グッと堪える。まるで期待していたかのような反応をするのがシャクだったのだろう、少年は静かにその場に座り込む。
「この世界の人間たちはこんなものなのではないですか?」
「これは我々にたどり着くのは無理そうですね」
二人も心のどこかで期待していたのか、全く進まない調査を見てガッカリした雰囲気になっている。
「あの天使の子が動けねぇのは仕方ないにしても、他の連中の知能レベルが低すぎる」
「特に桜髪と黒髪の男が何やってるのやら・・・」
先頭に立って手がかりになりそうなものを探しているエルザとルーシィ。その後を付いていくナツとグレイが見当違いにも程があるところしか見ていないため、それが余計に彼の目に止まるのだ。
「あのしゃべる猫たちは意外と周りが見えてますね」
「それでも俺たちにたどり着くには及ばない。待つだけ無駄か?」
そう残念そうに呟くと、バーンはゆっくりと立ち上がる。
「お前らはそのままあいつらを見張ってろ」
「バーン様は?」
「俺はその辺散歩してくる。興味が削がれちまった」
そう言って真っ白な足元から地上へ向かって飛び降りるバーン。オレンジ髪の少年と緑髪の少女はそれを見送ると、互いに顔を見合せ、ニヤリと笑みを浮かべる。
「バーン様はああ言ってたけど、せっかくなら戦っておきたいよな?」
「そうね。全力とは言えないけど、ちょっとでも楽しませてほしいわ」
そう言うと、彼らは地上を見下ろし顎に手を当てる。そのまましばらく固まっていると、オレンジ髪の少年がポンッと手を叩く。
「俺たちも地上に降りようぜ」
「何か案が浮かんだの?」
その問いにうなずく少年。彼は何かを先頭を行く緋色の女性の近くに出現させる。
「向こうが来れる力がないなら、こっちが呼び寄せればいいじゃねぇか」
そう言うと、彼は再び思考の時間に入る。数秒間の思考の後、彼は見つけた建物に狙いを定める。
「あそこで待ち構えよう。そこに来るまでの標を、これから配置するぞ」
「はいはい。バーン様に怒られないといいわね」
「大丈夫だよ。あの人もきっと期待してるはずだからな」
そう言って地上へと飛び降りる二人。彼らは拠点に向かう最中、彼らが自分たちへと迫ってこれるようにと目印を配置していった。
シリルside
「お前たち、遊んでないでしっかり調べろ」
グレイさんに冷やしてもらっていると、前を行くエルザさんに注意される。エルザさんとルーシィさんは特に率先して調査をしてくれているようで、かなり細かいところまで見てくれているようだった。
「そうは言ってもよぉ、ここまで何もねぇと調べる気も失せるっていうかよぉ」
「あんたたちは探し方が下手なんでしょ」
グレイさんとナツさんの調査能力は以前の赤ちゃんの親を探す時に皆無なことがわかっている。それがわかっているから、ルーシィさんとエルザさんは特に動いてくれているのだろう。
「すみません、なんだかすごく暑いんですよね」
「私たちは平気だぞ?」
「シリル、体調悪いんじゃない?」
「そうなのかな?」
体調が悪い感じはしないけど、これだけ暑さに負けているとそれも疑いたくなるぐらい調子が悪い。
「ウェンディ、シリルに付き添っててあげなさい」
「うん。大丈夫だよ」
「うん~。どこかで休んでてもいいだろうし~」
「だよねぇ」
シャルルの言う通りにウェンディが肩を貸してくれる。セシリーとハッピーも心配してくれるけど、その後ろでまた変なところを探しているグレイさんとナツさんが目に入ってしまい、なんだかそんな気にならなくなる。
「いや、俺は大丈夫だから」
「えぇ・・・そんなにフラフラなのに?」
訝しげな目で見てくるウェンディにいたたまれない気持ちになるけど、それは仕方がない。休んでた方がいいかもしれないけど、そうも言ってられない状況だし、と思っていると・・・
「ん?これは・・・」
すると、エルザさんが何かを見つけたらしく、急いでそこに駆け寄る。
「これは・・・なんだ?」
エルザさんが見つけたものをこちらに見せてくる。それを全員で覗き込むと、その手には不思議な形の石が握られている。
「なんか変な石だな?」
「宝石・・・か?」
「そうみたいですけど・・・」
妙な魔力?を感じる。いや、魔力っていうよりも不思議な力を感じるような・・・
ピカッ
「熱ッ!!」
今まで感じたことがない力を纏っている魔水晶のようなものが突然光ったと思ったら、エルザさんのそんな声と共に手から離れる。
「ちょっ!?エルザ!?」
「大丈夫か!?」
持っていなかった俺たちですら感じるほどの熱を発している石。驚いたルーシィさんとグレイさんが声をかけ、彼の冷たい手で彼女の手を冷やす。
「すまない、グレイ」
「気にすんな。それよりも手、大丈夫か?」
「これくらい、問題ない」
素早い処置のお陰でひとまずは大丈夫そうだ。そんな彼女の様子を見ていたのに、ナツさんはおもむろに地面に落ちた石を手に取る。
「ちょっと!!ナツさん!!」
「何やってるんですか!?」
慌てて俺とウェンディが手を離させようとしたが、ナツさんは全然平気そうにそれを見ている。そういえばこの人、火の魔導士だから熱いものでも大丈夫なのか。それがわかってたから、手に取ったってことかな?
「これを使って異常気象を起こしているってことか?」
「えぇ・・・それはさすがに・・・」
確実に自然物ではないだろうけど、これが原因だとは思えない。不思議な力は感じるけど、これ一つでどうにかできるとは思えない。
「ねぇ!!こっちにも同じものがあるわよ!!」
「こっちにも~!!」
「すごいいっぱいあるよ!!」
すると、シャルルたちも同じものを見つけたらしく声をかけてくる。
「これを拾っていけば手掛かりが見つかるのかしら」
「そうかもしれねぇな」
「とにかく行ってみよう」
ルーシィさんたちはその石を辿るように進んでいく。でも・・・
「なんか怪しくない?」
「やっぱりそうだよね?」
ウェンディに支えられている俺はゆっくり進みながら気になった点を話している。
「さっきまで何も見つけられなかったのに、突然・・・」
「しかもこんなにいっぱい落ちてるなんておかしいよね?」
手掛かりの手の字もなかったのに、こんなにたくさんの手掛かりらしきものが・・・それもまるで案内されているかのように一つずつ落ちているのがまた気になる。
「罠かな?」
「だよね?」
どう考えても俺たちを誘い込もうとしているようにしか見えない。本来なら対策を練ってから向かうのが得策なんだけど・・・
「シリル!!ウェンディ!!大丈夫!?」
「ゆっくり来ていいからなぁ」
それがわかっていないのか、先に進んでいってしまう皆さん。
「付いていくしかないんだよね・・・」
「そうだね・・・」
ナツさんたちが行くなら俺たちだけ待っているわけにもいかない。それに待ったをかけたとしても、気持ちが先行しやすいあの人たちが止まるとも思えないからね。
そんなことを思いながら、俺たちはゆっくりした足取りで後を付いていった。
後書き
いかがだったでしょうか。
少しずつストーリーも進み始めてきました。
そろそろストーリーが加速してくるかな?と思ってます。
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