双子に愛されてしまった男
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生徒会への勧誘
僕はこれでも第四高校の生徒会長。本当はやりたくなかった。面倒なのは目に見えているからね。だけど第四高校では生徒会長だけは立候補では無く生徒の投票なのだ。だから立候補者とかではなく全生徒が生徒会長に適していると思う人間を全校生徒の中から選ぶ。だから必ずしも意欲のある人間がやるとは限らない。
その良い例が僕だ。僕は決して生徒会活動に関しては意欲的とはお世辞にも言えないし辞められるのなら今からでも辞めたいくらいだ。でも、生徒会長に任命された生徒に拒否権というのは存在しない。全校の投票で選ばれるというのは光栄な事であり断る何て事はあり得ないだそうだ。これは僕が生徒会の顧問に辞めたいと言った時に言われた言葉だ。
そして今は入学式が無事に終わり生徒会室でため息をついている。
「別に入学式で生徒会長がお祝いの言葉とか言わなくても良い気がするけど。そろそろこの悪しき習慣を無くして欲しいものだよ」
僕は誰もいない生徒会室でそう呟いた。新入生に贈る言葉なんてないよ。別に普通に過ごしてくれれば良いし、一つ新入生に言う事があるとすれば....問題だけは起こさないでくれ。これはかなり切実な問題だ。問題を起こされるとその解決に生徒会も動かなくちゃいけない場合もあるしそうなると僕の時間が消費される。それだけは避けてほしい。
でも、それ以外の事は別に良い。
「新入生は帰っていくのに何で僕は残らなくちゃいけないだろう」
僕が生徒会室にいるのにはちゃんとした理由がある。それはこれから新入生の中で特に優秀なものを生徒会に招き入れる。まあ、招き入れると言っても勧誘に近いんだけどな。別に新入生側は嫌だったら断れるしこの委員会に行きたいと言えばそれを斡旋する事だってできる。これは所謂、優秀なものを委員会に入れておきたいだけなので別に生徒会でなくてもいい。
今年の新入生から二人。その二人は双子らしい。双子でどちらも優秀だとはもう遺伝だろうか。両親が二人とも優秀な魔法士とかなのかもしれない。
「確か.....「黒羽」とかいう苗字だった。あまり耳にしない苗字だけど...僕が知らないだけでもしかしたら名家なのかもしれないな。後で調べて見るか」
コンコン
「入って良いよ」
僕がそういうとドアが開き男女で合計三人が入ってきた。
「会長。お連れしました」
僕の側近である生徒会副会長がそういった。
「ありがとう。それじゃ面倒だけどもう一度挨拶をするとしようか。僕は二木久遠と言って第四高校の生徒会長をやっている。それで何で君たちをここに呼んだかというと.....勘の良い君たちなら気付いているだろうが生徒会への勧誘をするため。僕としてはこんな事はどうでも良いし早く家に帰って休みたいところ何だけど一応、これでも生徒会長だから聞いておくね。君たちは生徒会に入りたいと思うかい?別に強制じゃないから入りたくないと思ったら入らなくても良いよ」
生徒会は優秀な人間を欲しているが別にそれは誰でもない。生徒会に入りたいと思う奴が入れば良いし入りたくなければ入らなくても良い。第四高校は生徒会長以外に関しては立候補で入れたりする。誰でもとはいかないけどそれなりの成績を収めている生徒であれば誰も入れると言っても過言じゃない。
新入生の二人の方向を見ると二人はどうやら答えを決めたような顔をしていた。
「「丁重にお断りします(わ)」」
二人はほぼ同時に僕の方を見て言った。さすが双子だな~。こんなに息の合った事が出来るのは血を分け合っている双子だからと言える。
「そうか。じゃ生徒会以外で入りたい委員会はある?」
「そちらもないです」
迷うことなく双子の少年の方が答えた。まあ、委員会とか生徒会なんて時間を取られるのは目に見えている。そういう自分の時間が無駄に消費されるのを嫌う奴なのかもしれないな。この双子は。
「分かった。それじゃ呼び出して悪かったね。帰ってくれて良いよ」
これで新入生の中からまた生徒会入りをさせる者を選別しないといけないけど仕方ないな。本人たちがやりたくないと言っている以上は無理やりやらせるわけにもいかないしな。
「それでは失礼します(わ)」
そう言って出ていくのかと思いきや男の方が振り返り僕の方を見つめてきた。
「何か僕の顔についているか?まだ昼食を取っていないからご飯粒とかは付いていないとは思うけど.....」
「いや、何か付いているとかではなくて...一つだけやって欲しい事があるんですけど」
やって欲しい事......?
「僕に何をして欲しいんだ?」
「あの二木先輩は九校戦の試合をする前にいつもやるルーティンがありますよね?」
こいつ.....まさかそれをやって欲しいとかいうんじゃないだろうな。それに何でこいつはそれを知っているんだ。
「あると言えばあるかな。それがどうした?」
「いや、生徒会の誘いを断っておいてこんな事をお願いするのもあれなんですが..やっていただけたりしませんか?」
少年僕に近づいてきて両手を合わせて上目遣いをしながらお願いをしてきた。見た時から思っていたが美形で事前から特徴を知らされてなければ男だと分からなかったぐらいだ。そんな少年が僕に向かって上目遣いをしながらお願いをする姿は....凄い破壊力だった。僕は別に変な性癖があるわけではないけど...可愛いとは不覚にも思ってしまう。
「....ダメだ。やらない」
あれは九校戦や闘う相手がいる時にやるルーティンだ。それにあんなの試合前のようなハイテンションになってなければ恥ずかしくて死んでしまいたくなってしまう。
「..どうしてもダメですか?」
僕は上目遣いの少年を見ないように天井を見上げた。だって見ちゃったらやってしまう気がする。あんな可愛い顔で見られたら何でも許しちゃう気がする。
「.ダメだ。あれは九校戦とか何かの試合でもなければやらないと決めているんだ」
「そうですか...残念です。じゃあ次の九校戦の時までのお楽しみにしておきます」
そう言いながら少年は生徒会室から少女と共に出て行った。
「会長。...やってくれませんか?」
「いくらお願いしてもやらないよ。それより君も見たかったの?あれは別に人に見せるようなものではないんだけどな」
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