歪んだ世界の中で
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第十四話 新しい道その九
「人の内面を見ることができずそれにより判断ができないとは」
「あんたはできてるっていうのね」
「もう誇らしげなまでにわかるけれど」
「少なくともそのつもりです。そして」
「そして?」
「そしてっていうと?」
「それは彼女もです」
真人は千春にその視線を移した。彼女はというと。
ずっと希望と一緒にいる。そのうえで笑顔になっている。真人は今度はその彼女について話すのだった。
「彼女は。遠井君の心を最初から見ていました」
「私達とは違って」
「そうだっていうのね」
「その通りです。そしてです」
二人の中でもとりわけ野田を見てだ。今度はこう言った真人だった。
「貴女と。遠井君が付き合わなくて本当によかったです」
「私が最低だからっていうのね」
「はい」
何も躊躇することなくだ。真人は頷いてみせた。野田の今の問いに。
「そうなっていれば遠井君は必ず不幸になっていました」
「ふん、こっちから願い下げよ」
「そう言って頂いて何よりです」
彼女と希望が交際することにならなくてよかったというのだ。そしてだ。
ここでだ。こうも言う彼だった。
「遠井君は幸せになりますよ。貴女と違いまして」
「私は不幸になるっていうのね」
「既にそうなっていますね」
「既に?」
「はい、既にです」
真人がこう言うとだ。野田は不機嫌を露わにさせて彼に言い返した。
「そこまで性格が酷くなっていればです」
「不幸だっていうのね」
「貴女も同じです」
今度は永野も見た。そして彼女にも告げたのである。
「心が歪む。それ自体がです」
「不幸?」
「そうです。そして歪んだ心には必ず報いがあります」
あくまで冷たくだ。真人は二人に告げていく。
「遠井君が幸せを得られた様に」
「わかった様なこと言うけれどね」
「私達が不幸とかって」
「あまりふざけたこと言ってると許さないわよ」
「そうよ、女甘く見ないでよ」
「僕がふざけたことを言われていると思うならです」
全く何も動じていない調子でだ、真人はここでだった。
希望を見てだ。こう言ったのだった。
「幸せですね。本当に」
二人には挨拶もせずにその場を後にした。だが、だった。
二人はまだ忌々しげに悪態をついていた。しかしそれは只の悪態に過ぎずだ。希望の耳には入らなかった。聞こえていてももう耳に入るものではなくなっていた。
希望は千春にだ。こう言っていた。
「じゃあ。お願いするね」
「うん、二人でね」
「これから本当に新しい生活がはじまるんだね」
「そうだよ。希望にとってのね」
「夢みたいだけれど夢じゃないんだね」
満面の笑みさえ浮かべてだ。また言う希望だった。
「それじゃあ。今日から」
「今日で終わるよ」
「引越し作業が?」
「もうあのお家に戻ることはないんだよ」
「二度となんだね」
「そう、二度とね」
そうする必要はないとだ。千春が笑顔で希望に話していく。
「だから安心してね」
「そうはならないと思うけれど」
「なるよ」
「本当に?」
「だから今日からはじまるんだよ」
あの家に二度と戻らないという意味でもだ。そうだというのだ。
「楽しみにしててね」
「そうするよ。それじゃあ」
こうした話をしてだ。そのうえでだった。
希望は千春と共にその出て行く家にだ。学校が終わってすぐに入った。しかしだ。
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