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蝙蝠博士

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第二章

 動物園におるハイガシラオオコウモリの雄のジッタを紹介された。見ればジッタは。
「キキッ」
「随分人懐っこい子ですね」
「赤ちゃんの時に保護されまして」
 蝙蝠の飼育員がルーレンスに話した。
「それでです」
「大人になってもですね」
「ずっと人と一緒にいたので人馴れがしていて」
 そしてというのだ。
「撫でられたり優しくされたがる」
「甘えん坊ですね」
「そうです、ですが一度野生に戻す予定でした」
 飼育員はこのことも話した。
「ですが怪我をして」
「そうですか、私の場合は」
「なかったですか」
「怪我をしたら怪我が回復してからです」
「帰していましたか」
「そうしていましたが」
「この子はその機会を失ったので」
 それでというのだ。
「今もこちらにいます」
「そうなのですね」
「それでいいでしょうか」
「野生の子は野生に戻すことがいいでしょうが」
 それが一番だとだ、ルーレンスは飼育員に答えた。
「ですが決してです」
「間違ってはいないですか」
「そうかと。それが縁なら」
「動物園で、ですね」
「育ててもいいかと。こんなに人馴れしていますし」
 飼育員の傍を楽しそうに飛ぶジッタを見つつ話した。
「それなら」
「そうですか、では」
「そうされることもいいです」
「わかりました」
 飼育員はルーレンスの言葉に頷いた、そしてだった。 
 ルーレンスも飼育員に笑顔で応えた、そのうえでヨハネスブルクに帰ってそうしてだった。
 また蝙蝠を育てる仕事に戻った、どの蝙蝠も公平に落ち着いて育てて野生に戻す、その時にいつも言った。
「蝙蝠がいてこそ私達は助かるから」
「虫を食べてくれるからですね」
「そう、だからね」
 それでとスタッフに話した。
「これからもね」
「蝙蝠を助けていきますね」
「そうするわ、これもまた生態系を守ることよ」
 自然を守ることと言うのだ、そしてその中にある人間の生活も。
 こう言ってまた蝙蝠を保護し育て野生に戻していった、助けられた蝙蝠達は毎夜飛びそのうえで虫達を食べていく、ルーレンスはこのことに笑顔になるのだった。


蝙蝠博士   完


                 2021・6・23 
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