子猫達を連れて来た母猫
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第一章
子猫達を連れて来た母猫
カナダのケベック州のジダン家に一匹の猫が来る様になった。
「また来てるな」
「そうね」
夫婦で窓の外の黒猫を見つつ話した。
「今日もね」
「ご飯あげるか」
「そうしましょう」
妻のリサーネは夫のフランソワに応えた、夫婦共にブロンドだが夫の目が鳶色で妻の目はライトブルーである。二人共中肉中背であり落ち着いた顔立ちだ。
「今日もね」
「そうするか」
「ウサギにね」
妻はここでこうも言った。
「あげましょう」
「ウサギ?」
「私が名付けたの、日本でラビットをそう呼ぶのよ」
「そういえば日本語の感じか?」
「そうでしょ、それでウサギにね」
「今日もご飯をあげるか」
「そうするわ」
夫の出勤前に話した、そして。
この日だけでなくそれからもだった、ウサギにご飯をあげていたが。
ある休日だ、二人はウサギにご飯をあげてから驚くべき光景を見たのだった。
何とウサギがだ、一匹一匹。
子猫を連れて来た、どの猫もふさふさの毛で黒い。その猫達を一匹一匹首の後ろを咥えて窓の向こう側にいる二人の前に連れて来た。
そして五匹黒猫を連れて来てだった。
「最後はトラ猫だな」
「ええ、けれど皆ふさふさね」
「ペルシャ猫かしら」
「父親はな、六匹か」
見ればそれだけいた、そして。
ウサギも子猫達も二人に対して鳴いてきた。
「ニャア」
「ナア」
「ウニャア」
「ニャン」
「ウニャン」
「ニャンヤン」
「ミャオン」
その猫達を見て夫は妻に言った。
「多分僕達に」
「子猫達もなのね」
「いつもご飯をあげている様に」
まさにその様にというのだ。
「この子達にもか?」
「ご飯あげて欲しいのかしら」
「そうか?いや」
ここで夫は考える顔で妻に言った。
「それだとご飯持って行くな」
「子猫達のところにね」
「実際そうしてるだろうし」
「じゃあここに皆連れて来たのは」
「面倒見て欲しい、助けて欲しいのか」
「そうなのね」
「だったらな」
それならとだ、夫は言った。
「もう母親も子供もな」
「里親探してあげるのね」
「そうするか?」
「そうね、ウサギもちゃんとしたお家があったらいいし」
それならとだ、妻は夫の言葉に頷いた。
そうして家の近くのボランティア生きものを保護しているそれを探して連絡をしてだった。雄だったトラ猫はタロウ、黒猫の雌の二匹はミカ、ミナ雄の三匹はジロウ、サブロウ、シロウと名付けてだった。
それぞれ心ある人に里親になってもらった、トラ猫は妻の友人に引き取られた。
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