戦姫絶唱シンフォギアGX~騎士と学士と伴装者~
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第1節「S.O.N.G.始動」
前書き
皆さん、お待たせしました!遂にGX編、スタートです!!
無印からGまでは怒涛の毎日更新でしたが、今回は仕事の都合もありまして週一投稿になります。
更新日が毎週月曜となりましたが、週初め、仕事終わりの癒しにして頂ければ幸いです。
さて、今回はGXの第1話。即ち例の6分間のシーンですね。
都合上カットした部分もありますが、そこはアニメ見て補完してください!
それから今日は、翔くんの誕生日です。
明日には誕生日回を書き上げられると思いますので、お楽しみに!!
それではどうぞ、久しぶりの伴装者本編をお楽しみください!
空と宇宙の中間地点。虚空を漂う宇宙の藻屑が燃え尽き星へと変わる場所を、弧を描いて引き裂きながら、超音速で落下していく物体があった。
それは、地球と月の中間での大気圏外活動を終え、地球に帰還しようとしていた国連所属のスペースシャトルである。
システムトラブルから機能不全と陥り、このままでは機体の空中分解、あるいは地表への激突は免れないという緊急事態に、各国指導者も息を呑むばかり。
「城南大学の久住教授に確認急げ!」
「デブリの正体は、衛星○○号の一部と判明ッ!」
「外部からの操作、機体が受け付けませんッ!」
特異災害対策機動部二課はその様子をモニタリングしながら、日本海を全速力で進んでいた。
「現在の墜落予測地点、ウランバートル周辺。人口密集地です!」
「安保理からの回答はまだか?」
「外務省、内閣府を通じて再三打診していますが、未だありません!」
「まさか、犠牲にするつもりでは……」
地球の引力に掴まり地上へと墜落していくシャトルの映像を見つめ、二課司令である風鳴弦十郎と、部下の緒川慎次は呟く。
「ラグランジュ点にあるフロンティアの一区画から、国連調査団が回収した異端技術と、ナスターシャ教授の遺体……」
「それが、帰還時にシステムトラブルなんて……」
遡る事二度に渡り、世界を未曾有の危機より救ってきた、二課所属のシンフォギア装者たち。
しかし、人類守護の防人たる彼女達とはいえ、その力を日本政府保有の軍備とみなされる以上、たとえ人道的救護支援であっても国外での活動はかなわず、待機を余儀なくされていた。
やがてオペレーターの一人、友里あおいのモニターに『APPROVAL』の文字と、細々とした英文が表示される。
「承認降りましたッ!安保理の規定範囲で我々の国外活動、いけますッ!」
「よしッ!お役所仕事に見せてやれッ!藤尭ッ!」
「軌道計算なんてとっくにですよッ!」
情報処理能力に優れたもう1人のオペレーター、藤尭朔也は導き出した射角を入力すると、コンソール端の液晶を素早く操作する。
直後、二課本部である次世代型潜水艦ノーチラスから、空へと向けて一発のミサイルが発射された。
「いってらっしゃ~い♪」
そして二課所属の考古学者、櫻井了子は打ち上げられたミサイルを、手を振って見送っていた。
「システムの再チェック!起動を修正し、せめて人のいない所に……」
「そんなの分かってますよッ!」
シャトルの乗組員は、死人だけは出すまいと必死に足掻いていた。
しかし、シャトルの動力部は更に爆発。
そして警報音と共に、レーダーに赤く映ったのは、先程放たれたミサイルであった。
「くうっ……あぁッ!?ミサイル……俺達を撃墜する為に!?」
「致し方なしか……」
もう自分達は助からない。
諦め、祈る様に目を閉じる二人。
──その時である。
『へいき、へっちゃらですッ!』
「ッ!?」
通信より響く、少女の声。
思わず幻聴かと目を開くと、通信機のイコライザーは間違いなく上下している。
『だから──生きるのを諦めないでッ!』
そして、乗組員達は信じられない体験をする事となる。
「始まる歌」
「始まる鼓動」
「響き鳴り渡れ希望の音」
燃え尽きそうな空。足音を立てて迫って来ていた筈の死。
そこへ……歌が聴こえてきたのだ。
「『生きることを諦めない』と」
「示せッ!」
「熱き夢の」
「幕開けをッ!」
打ち上げられたのは死ではなく、希望。
展開されたミサイルの中から、5つの人影が飛び出していく。
「爆ぜよッ!」
「この」
「奇跡に」
「「「嘘はないッ!!」」」
そして今、星の海と故郷の境界に、戦姫と戦騎が飛び立った。
ff
シャトル救出から100日ほど──
「2人とも、新しい司令室には慣れたようだな」
「ええ。二課の時のクセが抜けきらず、時々戸惑うこともありますけどね」
友里は、新しい制服の袖に輝くエンブレムに目をやる。
鍵盤と剣が描かれた盾のエンブレム。
そこには『S.O.N.G.』と、国連より授かった新たな組織名が刻まれていた。
「『Squad of Nexus Guardians』、略して『S.O.N.G.』。シンフォギアを扱う私達に相応しい部隊名ですよね」
「とはいえ、シンフォギア・システムを初めとする異端技術を、目の届く所で管理したいという国連の本音も透けて見えますが」
苦笑いする藤尭。しかし弦十郎は、知ったことかと笑い飛ばす。
「お上の思惑など、どうでも良いさ。我々二課が国連直轄のS.O.N.G.として再構成されるきっかけとなったシャトル救出任務──ナスターシャ教授の亡骸を帰すためという、いささか私的な目的もあったが、実際にあの事件が持つ意味は大きかった」
先のシャトル救出の功績を受け、二課は国連からスカウトされたというわけだ。
二課としてもあの事件の際、安保理との手続きでギリギリまで出動できなかった事もあり、今後、国外での任務の際に素早く動けるよう、その提案に乗った形となる。
「まあ、その過程でK2の標高を世界3位に下方させちゃったのは、私としても想定外なんだけどね~」
「それは……まあ……」
救出の際、K2との衝突が回避できないと判断した瞬間、ミサイルによる爆撃と弦十郎仕込みの正拳突きでトンネルを貫通させ、山頂を陥没させた装者達を思い出し、了子と友里は苦笑する。
「日本の特異災害対策機動部では出来ない、国際的な災害や事態に対処するには、国連直轄の立場というのは悪くない」
「半年以上ノイズが観測されなくなっているとはいえ、異端技術による脅威が完全に消失したわけじゃないものね」
「了子くんの言う通りだ。俺達がすべきことは、人々が安心して笑って、メシ食って、幸せな夢を見る事ができる、そんな世界を守ることだッ!」
「さっすが弦十郎くん!カッコイイこと言うじゃな~い♪」
拳を握って宣言する弦十郎と、それを冷やかす了子。
互いの方を振り向き、目配せする藤尭と友里。
そこへ、元気な声が飛び込んできた。
「こんにちは~ッ!」
「メディカルチェックの結果、異常はないってよ」
入室して来たのは装者一番の元気印、立花響。
そして百発百中のスナイパー、雪音クリス。
「叔父さん達、お勤めおつかれさんです」
「差し入れ、持って来ましたよ」
「ありがと~♪そこ、置いといて良いわよ~」
それから弦十郎の甥である風鳴翔と、クリスの幼馴染である爽々波純の四人であった。
「そうか、ならば良かった。翼がロンドンにいる現状では、動ける装者はお前たち四人に限られる。何かあっては大変だ。……流石に、調くんと切歌くんをLiNKER無しで任務に当たらせるわけには行かないしな」
「心配しすぎなんだよ。少しくらいの任務でどうにかなるほど、あたしらはヤワじゃないっての」
「まあまあクリスちゃん。ここは素直に受け取っておこうよ」
「今日も雪音先輩のツンデレは絶好調だな」
「クリスちゃん、師匠には全部バレバレだよ~?」
「お・ま・え・ら・な・ぁ?」
翔と響を睨むクリス。まあまあ、とクリスを宥める純。
いつも通りの平和な光景である。
「そういえば、調ちゃんも切歌ちゃん、それにセレナちゃんもリディアンに通えるようになってよかったねッ!師匠、ありがとうございますッ!」
「俺は何もしちゃいないさ。ただ、望む環境への切符を用意しただけに過ぎない。リディアンでどう過ごすかは本人次第だ」
フロンティア事変の終結後。釈放された元F.I.S.のシンフォギア装者である調と切歌、そして先日遂にリハビリを終えたセレナは、リディアンへ入学する事になった。
コールドスリープで8年近く眠りについていたセレナだが、リハビリ中に猛勉強したらしく、学力は問題なしと判断された事で、めでたくリディアンの新入生となったのだ。
「せっかく入った後輩だ。ちゃんと先輩のあたしが面倒見てやるよ」
「翼さんや、マリアさんの分まで?」
「ったりめぇよッ!このあたし様に任せておきなッ!」
「そうだな。よく見てやってくれ」
「了解です、師匠ッ!」
「しっかり任されますッ!」
元気のいい返事と共に、ビシッと敬礼する響と翔。
と、ここで響は何やらニヤニヤしながらクリスの方を振り向く。
「……ところでクリスちゃん、この前調ちゃんとも話してたんだけど、もうすぐだね~。翼さんとマリアさんのライブ」
「ん?ああ、そうだったな」
「クリスちゃんも勿論見るよね?ね?」
「当たり前だろ?せっかくの先輩達の晴れ舞台だしな」
「クリスちゃんの家って、テレビおっきかったよね?」
「ん?ああ、割と大きい方だったかな。それがどうかしたのか?」
「何でもないよ~。いや~、本当に楽しみだよね~ッ!」
如何にもわざとらしい、含みのある笑みを見せる響を訝しむクリス。
翔はこっそり、純へと目配せする。
純は何も言わず、ただ笑顔で頷いた。
「……なんか気持ち悪いな、お前。何かおかしな事考えてるんじゃねーだろうな?」
「ううん、何も~」
「やれやれ……」
どう見ても何やら企んでる響の顔を、翔は肩を竦めながら見守るのだった。
ff
その日の夜の事。
「……ふぅ。今日の資料整理はこれで完了、と」
「はい、あったかいものどうぞ」
「あったかいものどうも」
仕事を片付け、友里のコーヒーで休憩する藤尭。
「バビロニアの宝物庫が閉じた事で、あれからノイズの出現も無くなってるし、このまま大きな事件もなく、定年まで給料貰えたら万々歳なんだけど──」
その時、発令所の照明が暗転し、アラートが鳴り響く。
探知機が捉えた反応がスクリーンに表示され、友里は慌てて自分の席のモニターを確認する。
「──横浜港付近に未確認の反応を検知ッ!」
しかし、アラートは4回ほど鳴った所で消え、照明は通常時のものへと戻る。
モニターには『LOST』の表示と、反応が消えた横浜港周辺の地図が出ているのみであった。
「──消失……?……急ぎ、司令に連絡をッ!」
「了解ッ!」
ff
同じ頃。ネオン煌めく横浜港大さん橋ふ頭付近。
先程S.O.N.G.の探知に引っかかった未知のエネルギー反応、その主は──
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
逃げるように、息を切らしながら、ただひたすらに走り続けていた。
小脇にはダイヤルのようなものが三列並んだ小箱を抱え、黒いローブに身を包んだ小さな足がアスファルトを蹴る。
その足元を狙うように、光沢を放つ弾丸のようなものが、金属音を立てて発射される。
転び、しかしそれでも進まなくては、とすぐに立ち上がり、電話ボックスの陰に隠れる黒ローブ。
明らかに追われているのが見て取れるだろう。
(ドヴェルグ=ダインの遺産──全てが手遅れになる前に、この遺産を届ける事がボクの償い……)
黒衣の小さな影は、小箱が無事であるのを確認すると、再び走り出す。
その姿を建物の屋上にて見下ろす、欠けた満月に照らされた人影があった。
細長い手足を強調するかのようにポーズを取る、黄色いジャズダンサー風の衣装に身を包んだ女。
逆光で目立ちにくいが、その腿の付け根や手首の関節は球体となっており、明らかに人間のものではない白い肌。
細い手指の先でつまんでいるのは、金色に光るコイン。
どこを取っても奇抜な女は、誰にともなく独り言ちる。
「……私に地味は似合わない。だから次は──派手にやる」
後書き
K2の標高下方修正とか、裂き森とか、シャトル投げとか諸々バッサリカットした件について?
伴装者が居ても原作から殆ど変わらないシーンですし……ねぇ?
その代わり、冒頭のガヤの声を何度も聴き直しては文字に起こそうと頑張りました。
むしろ完成が遅れた原因はそれだったりします()
それではまた次の節でお会いしましょう!
次回、「新しい生活」
お楽しみに!
キャラクター紹介①
風鳴翔(イメージCV:梶裕貴)
年齢:16歳/誕生日:7月5日/血液型:A
身長:180cm/体重:62.1kg
趣味:映画鑑賞(主に特撮)、鍛錬
好きな物:自炊、和風ロック、翼姉さん/嫌いなもの:風鳴訃堂、表面でしか人を見ない女
概要:RN式『生弓矢』の伴装者。風鳴家の長男であり、翼の弟。姉と同じく青い髪に碧い瞳。髪型は姉を真似て後ろで括っているくらいにはシスコンの気がある。
父と姉の不仲が原因で一時期叔父に預かられ、中学時代までは東京から離れていた。
偶然にもRN式回天特機装束の起動、制御に成功した事で、世界初の男性装者となった。
弓、太刀、楽器の3つに変形するアームドギアのみならず、徒手空拳での戦闘をもこなす技巧派。
ルナアタック、フロンティア事変を経た現在は響と恋仲となり、同じマンションに同棲している。
爽々波純(イメージCV:宮野真守)
年齢:16歳/誕生日:12月12日/血液型:A
身長:180cm/体重:68.2kg
趣味:家事全般、自分磨き
好きなもの:クラシック、ティータイム/嫌いなもの:油汚れ
概要:RN式『アキレウス』の伴装者。一人称は「僕」で、常に柔和な笑みを浮かべている少年。とても穏やかな性格で秀才気質。翔の親友であり、常に自分に「王子様」で在ることを課している。
高速移動に特化したギアによるスピード戦法に加え、可変する盾型のアームドギアを用いたカウンター戦法で立ち回る。
8年の月日と数々の苦難を乗り越え、現在は幼馴染のクリスと恋仲となり、同棲生活を送っている。
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