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北風よりも太陽で

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第一章

               北風よりも太陽で
 北条彩香は黒髪をロングにした切れ長の目に細く流麗な眉に面長の顔と雪の様な肌に紅の小さな唇を持った少女だ、通っている高校ではその美貌で知られている。背は一六四位で胸はないが脚は実に奇麗だ。 
 それでだ、学校の多くの男子生徒が彼女に想いを寄せていてそれで告白を考えたが。
「ガード堅いよな」
「鉄壁って感じだな」
「もう雰囲気からしてそうだよな」
「変なこと話し掛けないでって感じで」
「お友達ならいい」
「そうした気配に満ちていてな」
 最初からそうで、というのだ。
「声かけにくいな」
「告白しようかって時点でな」
「どうもな」
「そんな人だな、あの人」
「変に強引にしようとしたら」
 中には不心得者もいる、そうした者はというと。
「投げられるだろうな」
「合気道二段だぞ、彼女」
「少林寺拳法も初段だ」
「防御系だからな、どっちも」
「下手なことしても投げられるか打たれて撃退されて終わりだ」
「だから街のドキュンも声をかけないんだよ」
 彩香にはというのだ。
「そうしているんだよ」
「只でさえ声かけにく雰囲気なのに」
「腕も備わってるからな」
「武器持っても下手な奴じゃ勝てないぞ」
「攻めてこなくても」
「鉄壁だからな」
 それだけのガードの硬さだからだというのだ。
「交際するとかな」
「あの娘とは難しいな」
「正直なところな」
「どうしても」
 こう話してだった。
 実際に誰も彼女に告白はしなかった、性格は上品で公平でかつその雰囲気とは違い思いやりがあったので友人は多かったが。
 告白する者はいなかった、だがそんな中で。
 彼女を見て心底好きになった同じ高校の同じ学年の生徒である諸星喜三生は言った。
「北条さんをどうにかしてな」
「おい、彼女にしたいとか言うなよ」
「コクるだけでも無理だぞ」
「お前もあの雰囲気感じてるだろ」
「告白しないでっていう」
「お友達ならっていうのが」
「それでもだよ」
 決死の顔での言葉だった、背は一七〇位で細面で目は大きく明るい光を放っている。眉は太く顔は陸上部だけあってよく日焼けしている。学校の制服である青い詰襟の服の着こなしはやや崩れたものだ。
「俺はな」
「交際したいんだな」
「あの人と」
「そうだっていうんだな」
「そうだ、俺は決めたんだ」 
 食堂で肉うどんを食べつつ言った。
「そうするってな」
「決めたのはいいけれどな」
「相手は北条さんだぞ」
「告白の時点で無理なんだぞ」
「それでどうして交際にまで至るんだよ」
「そこだよ、どうしたらいいかってな」
 その様にというのだ。
「考え中なんだよ」
「考えても無理だろ」
「どう考えても」
「あの北条さんと交際するとか」
「どう考えてもな」
「いや、余の辞書に不可能の文字はないってな」
 喜三生はこう返した。 
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