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美女のコンプレックス

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第四章

「大学行きましょう」
「そうね、今日も学んでね」
「頑張りましょう」
「わかったわ、自信がなくても」
 そのコンプレックス故に何をするにしてもだとだ、フレデリカも応えた。
「やるしかないから」
「頑張っていきましょう」
「大学に行って」
「そうしましょう」
「ええ、それじゃあね」
 フレデリカも頷いた、そうしてだった。
 この日も大学で学んだ、そのうえで大学を出て祖国を拠点とする弁護士になったがそこで家同士の縁組によりオランダの名門の子弟と結婚した。そして尻のことを言ったが夫はそうなんだで終わった、そこでフレデリカのコンプレックスは消えた。そしてある日久し振りに会った今はイタリアで裁判官をしていて家庭も持っているジュリエッタに話した。
「何でもないことだったわね」
「貴女のコンプレックスは」
「ええ、主人はそうですかで終わったわ」
「そうなのね」
「散々困って悩んで苦しんだことだけれど」
「案外コンプレックスはそうしたものかも知れないわね」
 ジュリエッタはフレデリカにこう返した。
「自分は凄く悩んでいてもね」
「他の人から見ればなのね」
「何でもないことよ、私の歯並びも実は言われないしね」
 それのことはというのだ。
「だから自分は大きなことと思っていても」
「その実はなのね」
「誰も気にしない様な」
「そんなものなのね」
「全部が全部そうでないでしょうけれど」 
 コンプレックスがというのだ。
「その多くはね」
「そんなものなのね」
「そうじゃないかしら、けれどご主人がそう言って貴女がどうでもいいと思える様になったら」
「それでよね」
「いいと思うわ。そもそもそれでお母さんを恨んだことないでしょ」
 蒙古斑をもたらした彼女をというのだ。
「そうでしょ」
「一度も。凄くいいお母さんよ」
「ならいいわ、じゃあお互い積もるお話をしましょう」
 ジュリエッタはフレデリカににこりと笑って話した、そうしてだった。
 二人で久し振りに飲んで食べながらそれぞれの再会までのことを話した、ローマで何処でもある友人同士の話をしたのだった。そこにはもうコンプレックスも何もなかった。


美女のコンプレックス   完


                  2021・1・13 
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