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おぢばにおかえり

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第六十四話 阿波野君と先輩その二十

「だからね」
「そこが本当に問題ね」
「私阿波野君の方が心配なのよ」
 お母さんにこのことも言いました。
「先輩に失礼なこと言って全否定しないかって」
「あの子は絶対に言うわよ」
「やっぱりそうなるのね」
「ええ、けれどそれはお母さんも止めるから」
「えっ、けれどお母さん先輩は絶対にしたら駄目なことしたって」
「言ったわよ、許されないことをしたってね」
 お母さんは私にはっきりと答えました。
「そうね」
「それでも阿波野君がそうしたことを言おうとしたら止めるの」
「絶対にね」
「どうしてなの?先輩を怒ったりしないの?」
「もう心から反省してるのよね、千里の先輩は」
「ええ、それはね」
 このことはどう見てもです、むしろ先輩は過去のことに捉われて悪く言うとくよくよしている感じです。阿波野君は過去を忘れないでずっと相手を憎む感じですが二人はそれぞれの形で過去にこだわっている感じがします。
「はっきりしてるわ」
「だったらね」
「お母さんは何も言わないの」
「怒られて反省している人の心の古傷を責めることも残酷なことよ」
 こう私に言いました。
「だからね」
「許せないと思っていても」
「お母さんは言わないわ」
「そうなのね」
「千里も同じことで何度も言われたくないでしょ」
「それはね」
 私にしてもです。 
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