酷い風邪なのに

　　　　　　　　　　　　　　　　酷い風邪なのに
　山縣史郎、黒髪を短くしていて明るいの目の小学四年生のクラスでは真ん中位の背の彼は家に帰って茶色の長い毛のダッグスフントが玄関にいたので母に問うた。
「お母さんあの犬何？」
「お父さんとお話してうちに飼うことにしたの」
「犬飼うんだ」
「そうなの、名前はルイよ」
　名前も言ってきた、黒髪をロングヘアに舌切れ長の目の痩せた中年女性だ。
「宜しくね」
「聞いてないんだけれどさ」
「前に言ったでしょ」
「そうだったかな」
「そうよ、まあ兎に角これから家族だから」
　それでというのだ。
「いいわね」
「わかったよ」
「ワンワン」
　ルイは何時の間にか史郎の横にいた、そして。　
　彼と一緒にいる様になった、だが。
　ルイは両親、母の茉祐だけでなく父の俊彦黒髪をオールバックにしていて一八〇近いすらりとした長身で明るい目の彼にも懐いていたが。
　史郎にはあまり懐かないでだ。
「まただよ」
「あんたの靴の匂い嗅いでるの」
「わざわざ中に顔を突っ込んでさ」
　そうしてというのだ。
「嗅いでるよ」
「何でかあんたの靴の匂い好きよね」
「その中のね」
「変な子ね」
「しかもえづくから」
　靴の中の匂いを嗅いでというのだ。
「嫌そうにさ」
「吐かないでしょ」
「それはそうだけれど」
　それでもというのだ。
「凄く嫌だよ」
「靴が臭いとか思われるから」
「散歩の時も言うこと聞かないし」
　その時もというのだ。
「俺のこと何だと思ってるのかな」
「自分より下なんでしょ、犬は順番決める生きものだから」
　それでというのだ。
「そうしたことをね」
「しているんだ」
「そう、それでね」
「俺はルイより下なんだ」
「そう思ってるんでしょ」
「全く、俺は犬より下かよ」
　史郎は母の言葉に顔を顰めさせた。
「腹立つな」
「じゃあルイのお兄さんになりなさい」
「どうすればなれるんだよ」
「ちゃんと勉強して家のお仕事手伝ってちゃんとすればいいわ」
「わかったよ、それじゃあな」
「あとルイにもしっかりと言って躾なさい」
　母は娘にこのことも言った、そして。
　史郎はこの日から勉強も家事もしっかりとしてルイにもしっかりと接し躾もした。すると彼は次第にだった。
　確かな人間になり中学校のバスケ部の部活ではエースそしてキャプテンになり進学校でも成績優秀でバスケ部のレギュラーになり。
　国立大学にも進学した、そしてルイもよく言うことを聞く様になり。
　実は最初からだった玄関での見送りと出迎えもしていた、だが。
　この日ルイは風邪をひいていた、それで母は言った。
「命に別状はないけれど」
「それでもだよな」
　史郎は自分のケージの中で寝ているロンを見て言った。
「見ても苦しそうだし」
「結構熱もあるから」
「酷い風邪だよな」
「暫くは安静よ」
「もう十歳だしな、ルイも」
　父もその彼を見て心配そうである。
「気をつけないとな」
「ええ、暫く静かにしていなさい」
　母はルイに言った、そして。
　獣医から貰った風邪薬を与え寝ている彼に毛布を与えて暖かくもした、そうして静かにさせていたが。
　史郎が大学に行く時にだった。
「ワン」
「おい、いいからな」
　史郎は玄関まで苦しそうながらも来た彼に言った。