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SAO<風を操る剣士>

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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第三章 成長
  第21話 シリカの理由

 
前書き
明けまして、おめでとうございます!
今年も宜しくお願いします!
あと、第20話の最後の所を付け足しました。
投稿から少ししてから足したので、読んでない方はよろしければ読んでください。
(投稿から三日後くらいに足しました)

※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。 

 



 2023年05月06日土曜日………最前線、第二十八層



 このSAOが始まって、丁度半年が経った。
 あたしは、朝七時にセットした起床アラームで目を覚ました。
「ん~~しょっと」
 ゲームの中なので伸びをしても関係ないけど、半年このゲームの中にいても長年の癖はどうしてもとれない。

 眠さを(こら)えながら起きた後、もう気が付けば半年間も一緒の部屋で隣のベットで寝ている同居人を起こす。
 月曜日は外食、火曜日と水曜日はシュウさん、木曜日と金曜日があたし、土曜日と日曜日は二人で朝ご飯を作ることになっている。
「シュウさん、起きてください。今日は土曜日ですよ」
「ん…朝か、………ふぁー……シリカ、おはよう」
「おはようございます、シュウさん」
 シュウさんが眠そうな顔であたしに返事をしてくる。
 あたしも朝には弱いけど、シュウさんほどじゃない。
 それにシュウさんはどうやら起床アラームが、あまり好きじゃないんだとか…理由を前に聞いたら、『耳に直接、音が鳴って起こすみたいな所がイヤなんだよ。朝くらい、ゆっくり寝たいし…』
 と、言っていた。
 なので、あたしが毎日シュウさんの事をこんな感じで起こしている。

 このシュウさんを起こす事を始めたのが、このゲームが始まってから一週間くらいの頃だった。
 シュウさんがアラームをセットしないでいるのに気付いて、理由を聞いてから恩返しのつもりで始めたのがキッカケだった。
 始めの内はシュウさんも遠慮していたが、何ヶ月か経つと諦めたのか今では挨拶までしてくれるようになった。
 あたしも始めはただの恩返しのつもりが、今ではこのSAOでの生活の楽しみの一つになっている。
 好きな人をただ起こすだけで、こんなに楽しいなんて今まで知らなかった。
 シュウさんの寝起きの顔を見るとなんだか…その…不思議で…そして、あたたかな気持ちになる。
 この気持ちが好きな人に対する物なのかは分からないけど、…もしかしたらこの気持ちが、あたしがシュウさんを好きになった理由の一つに入るかもしれない。

「ん~……今日は米でも食べるとするか…」
 シュウさんが、まだ眠そうさ顔で食べたい物を言ってくる。あたしもそれで良いかな? と思って、シュウさんとのフレンド登録で出来た、共通ウィンドウに入れてある材料を確認の為見てみると……お米の残りが少なかった…
「いいですよ。…あ! でも、もう残り少ないですよ! お米」
「…ならパンでも良いか。米は今度また作って量を増やしてからにしよう」
「なら、早速作りましょうか。シュウさん」

 …このSAOに《お米》はない。
 でもあたしとシュウさんが、料理を何回かして慣れてきたある日。
 それはまだゲーム開始1ヶ月半くらいの頃…あたしがシュウさんに朝の起こすのと同じで感謝の気持ちもあり、一人で買い物に行くと言って宿を空けた時に起こった。
 あたしが料理をする為の足りない材料をNPCの店に買いに行っている時に、シュウさんが暇だからと、ご飯には()らない材料で暇つぶしにパンを作ろうとしたらしい。

 その際に、[生地(きじ)()る]というボタンを押す時に、次々と『これとこれは、何が出来るんだ?』と興味半分で材料のアイテムを選んで入れて焼いたら…白くて丸い物体が出来た。
 でも物体は硬くて食べられないので、仕方なく()して軟らかくしようとして蒸して、試しに食べたら…『あれ? この味って…』と思った。
 そしてもう一度物体を作り、今度は(くだ)いてから蒸したら見た目は悪いけど、味も食感も<お米>だった……と、シュウさんが帰ってきたあたしに言ってきた。

 …その時は帰った後、シュウさんに『これ、ちょっと食べてみて!」って急に言われて、あたしは見た目に戸惑(とまど)いながらも食べたら、確かにお米の味がした。
 あの時は始まってまだ一ヶ月とちょっとだったけど、とても懐かしい気持ちになったな~

 でも今ではスキルの熟練度が上がった為か、砕くのも上手になって見た目もマシになってきていて、このまま行くと本当にお米っぽくなるのも時間の問題だと思う。

 そんな少し前の事を考えながら、あたしとシュウさんはパンを焼いた後、シュウさんが焼いたお肉とあたしの作ったサラダと一緒に焼きあがったパンを置いた。
(うわ~、美味しそう!)
 料理スキルが600を()えたあたしとシュウさんが作る料理は、こんな簡単な料理にでも自分で作っておきながら、いつもそう思ってしまう。

「それじゃ、いただきます」
「いただいます」
 テーブルに座ってから、シュウさんが食事の前のお決まりの言葉を言い、あたしも合わせて言う。
 って、言った後に気が付いたけど、飲み物出してないや…
「シュウさん、飲み物何にします?」
 そう聞きながら、あたしは12歳になってからやっと少しずつ飲めるようになってきた、少し甘めのコーヒーを出した。
「……シリカはコーヒーか…」
「そうですよ。パンに合うかなって思って……シュウさんも飲みますか?」
 聞かなくても答えは分かってますけど…
「いらん!」
 ほら、やっぱり…

 あたしが答えを分かった理由は、シュウさんがコーヒーが嫌いだって事を知っていたからだ。
 好き嫌いがほとんどないと言っていたシュウさんだけど、どうも昔にコーヒーで何かあったようで、それ以来コーヒーが嫌いだとか。…ちなみにコーヒー牛乳は大丈夫らしい。本当に何があったんだろ?




「そういえば、もうゲーム開始から半年か~……この半年は俺の人生の中でもっとも過酷(かこく)だったな」
「そうですね。こんな事になっちゃいましたし…」
「本当に色々な事があったよな~…俺なんか一度、死にかけたしな…」
 シュウさんがご飯を食べ終わって落ち着いた頃、急に会話が思い出話になってきた。
 …本当に色々な事があった。でも一番心に焼きついている思い出は、シュウさんが言うようにシュウさんが一度死んだ時の事だ。
 あの時は本気で、人生で初めてなんじゃないかと思うくらい泣いた。

「『死にかけた』で、すみませんよ! あの時は本当にどうしようかと思ったんですからね! 生きて帰ってきてくれなかったら、あたし……その…」
「いや、マジで悪かったって……でも、俺がいなくても悲しいだろうけど、シリカなら生き残れたと思うけど…」
 あたしの言葉が詰まった後、シュウさんの言った『俺がいなくても』という言葉に、あたしの気持ちが気が付いてないことが分かり腹が立ってしまった。

 あたしも気持ちを必死になって隠している。
 自分の気持ちに気が付いてから、シュウさんに自然と目がいっているのに気付いて直そうとしたり…
 …そんな頑張ってはいるけど、気付いてほしいと思うあたしもいて……だから…気持ちに気付かない
鈍感なシュウさんに凄く腹が立った。
 なので珍しくシュウさんに、嫌味(いやみ)ったらしい言葉と文句を言ってしまった。
「第十層まではあたしの事を守ってくれるって言ったのは、いったいドコのお兄ちゃんだったんですかね~。シュウさん」
「う! でも、あの時はすでに十層で……」
「それでも! やっぱり、シュウさんがいなくなったら、あたしは生きていける自信がありません!」
「え!?」
 あたしは最初にいった嫌味で終わらせるつもりが、勝手に自分の口から今まで抑えていた気持ちが出てしまっていた。
「シュウさんは、ゲームが始まった時からあたしの事を助けてくれて、色々なことを教えてくれて、守ってくれて、優しくしてくれて、そんなシュウさんはあたしの心の(ささ)えなんです! 憧れなんです!」
「いや……そんな…憧れるほどの事は……」
 シュウさんがあたしの言葉に、顔を赤くして照れているのがわかる。あたしだって言っていて凄く恥かしい…でも、ここまできたら止められなかった。

「そんなシュウさんがいなくなるなんて、あの時どれほど苦しかったか、悲しかったか! シュウさんが十一層からもあたしと一緒に行動してくれて、どれだけ嬉しかったか! だから今シュウさんが言っ…」
 あたしが必死にシュウさんに向かって言葉を言っていたら、シュウさんが突然……
「……え!?」
 …椅子から立って、あたしの所まで来て…前からあたしの背中に腕を回して……
 …つまり……その……あたしを抱きしめていた。
「え!? あのちょ、ちょっと、シュ、シュウさん!?」
 流石(さすが)に今までのあたしの勢いはなくなってしまった。だって…
「ごめん。シリカ……シリカにそんな思いをさせてたなんて俺、知らなくて…今も無責任なことを…」
 と、シュウさんに申し訳なさそうにあたしの耳元で(ささや)かれたからだ。
 …自分でも単純だって分かる……でも……でも…
「…い、いいですよ。その…シュウさんは帰ってきてくれましたし……」
 …さっきまでの苛立ちが嘘のように、シュウさんを許してしまう。
 ……こんなの…反則だよ…だって……好きな人にこんな事さてたら……もう何も考えられない。

 そのまましばらく、あたし達は抱き合ったままだった…



======================



「ごめん! 本当~に、ごめん! その…シリカの思いを聞いたら…その…条件的に…」
「い、良いですよ別に。分かってますから…」
 とは言ったものの、まだシュウさんの腕の温かさが残っているような気がして、話に集中できない!

「……シリカ、俺に憧れてるって…つまり…」
 …ッ!! やっぱり…気が付いちゃったよね…あたしの気持ち…
「いや…その…それは…」
「俺のようになりたかったって事か!?」
「……え?」
 ……シュウさん? …今なんて?

「違うのか? だから俺はシリカが夜にレベル上げしてるんだと思ったんだけど…」
「…ち、違います! っていうか気付いてたんですか!?」
「あ! えーと、はい…」
「っ~~~!!!」
 良くこの時、あたしは恥かしさで叫ばなかったと思う。



 あたしは最近、夜にレベル上げをしている。
 理由は、シュウさんの助けになりたかったからだ。
 十層でシュウさんがいなくなった時から、シュウさんがボスと戦っている所を考えると怖くなる。
 こんな状態じゃ、ボスとも戦えないし足手まといだと思う。
 何より、シュウさんの迷惑になるのがイヤだった。
 なのであたしはシュウさんに少しだけ、ボス戦を待ってくれるように言った。
 少しでも強くなって、シュウさんと一緒に戦う……そうすればシュウさんもいなくならない。
 あたしも一緒に戦っている所を想像したら、不思議と怖さは消えるようになった。

「だから、俺に隠れてレベル上げね~」
「…ごめんなさい。…でも、シュウさんに言ったら反対されると思って…」
 あたしはバレていたことが分かり、包み隠さずシュウさんに理由を言った。
 …まさか後ろにいたなんて。……今度からは《索敵》のスキルもちゃんと上げないと。

「…反対するにしたって、俺の為にやっている事なんだ。反対する理由がないよ…これからも夜行くんだったら、後ろで付き合うよ」
 シュウさんは、あたしのレベル上げを認めてくれた……でも…
「…いえ、もうしばらくは…やりません」
「は? なんで?」
「シュウさんと一緒に戦うには、レベルじゃなくて身体的なところにあると思うからです」

 うすうす感じていた事…それは反射神経とかの問題。
 レベルとかなら、あたしはそんなにシュウさんと変わらない。
 なのにどうして、あの十層のドラゴンの時のように実力が違うのか…それは[経験と運動神経]
 経験は夜のレベル上げで何とかなる。でも、運動神経はゲームのシステムで動くこのSAOじゃ、そんなに身につく事は少ない。
 その他にも、シュウさんにドラゴンとどうやって戦ったのか聞いたら、
『動きを先に読んだんだよ』と言っていた。
 始めは言っている意味が分からなかったが、それは凄いことだ。

 このSAOのモンスターの攻撃の標準は、モンスターの目によって分かる。
 そこから先をある程度予想する事も出来る。いわゆる《システム外スキル》だと思う。
 でも《先読み》にしたって、ある程度は分かるけど、AIで知能をつけていくモンスター達にはあまり意味がない。《先読み》は通常[対人]専用なんだ。

 なのにシュウさんは、そのモンスターのどういう癖を学習するかまで計算して、先を読んでいた。
 そんなの、物凄く頭がよくないと無理だと思い、シュウさんに学力を聞くと…
 ……あたしより悪かった…
 でもSAOをやる為に、数学と情報を死ぬ気で勉強したといっていた。
 多分だけど、シュウさんは学力に関係しない、頭の回転の速さや軟らかさを測るIQが高いんだと思う。
 じゃなきゃ、そんな事できない。

 あたしにはそれすらない…

「だから、夜に行っても…」
「………」
「シュウさん?」
 シュウさんがあたしの理由と言葉を聞いて考えるようにして黙っている。…何を考えているんだろう?

「…シリカ、本当にそういう身体的な能力を上げたいんだな?」
「…はい。でも、そんな事…」
「アルゴがそれに関する情報を前に言っていた気がする…」
「え!?」
 アルゴさんが!? という事は、あたしの身体的な事を鍛えてくれる何かがあるんだろうか…

「アルゴにちょっと、連絡とってみるよ」
「お願いします!」

 その後、アルゴさんから[明日、どこかの店で会おウ。場所は明日教えるヨ]と帰ってきたので、明日を待つことにした。

 あと、あれだけの事があったのに、シュウさんはもう平然としていた。
 多分、妹みたいな感じなのかな……はぁ~、ショック…
 あれだけの事言ったのに、気付いてもいないし……シュウさんの鈍感!

 と、心で少し文句を言っていたあたしだったが、この時シュウさんが…
『シリカって、もしかして俺のこと……いや落ち着け、そんな事あるわけ…でも……それにシリカにあんなことを……』
 と考えながら、必死に冷静に見せていたことは夢にも思わなかった。



 クラインがもしこの現場を見ていたら『二人とも鈍感過(どんかんす)ぎだろ!』と、叫んでいただろう。







 
 

 
後書き
何か、自分の中の主人公が……気のせいかな?
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