クラディールに憑依しました
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迷宮区に潜りました
「…………迷宮区って、まだ第十層の二日目だぞ? 街から数時間の場所に入り口なんてある訳が無いだろ?」
「それがそうでもなイ、入り口の奥には転移門が設置されていて――――六箇所のダンジョンに転移可能ダ」
「つまりその中のどれかに、ボス部屋が存在すると?」
「うム、そう睨んでいル」
「…………お誘いは嬉しいが、こっちは安全マージン稼いでる途中なんだ――――他の奴誘ってくれ」
「現在――第十層時点デ、お前さん達のPTが一番高レベルなんだヨ、ボスと戦えと言っている訳じゃなイ、迷宮区のマッピングに協力してくレ」
「俺とアスナのレベルだけ見て判断されても困るな、それにアルゴ一人の方が色々と楽じゃないのか?」
「コレまでの迷宮区ならナ、残念ながら今回の迷宮区は隠蔽スキルがキャンセルされるんダ――――数が欲しイ」
「…………PTと相談だ、ちょっと待って」
俺はアスナ達の顔色を覗うが――――みんな俺が話し始めるのを待っている。
「――――聞いてのとおりだ、正直な話、迷宮区に挑むには全員の装備も経験値も、俺は足りないと思っている、お前等はどう思う?」
「あたしは――――さっきも言ったけど日が暮れるまでなら付き合っても良いと思うわ」
「わたしは、迷宮区が見付かったのなら一日でも速く攻略すべきだと思う、レベルが足りなくてもマッピングぐらい始めるべきだわ」
「…………シリカはどうする? この中でレベルが一番低いのはお前だ、お前次第で決まるぞ」
「あたしは、あたしは行くべきだと思います、攻略組はみんなの希望――――ですよね? それなら、行くべきです」
「わかった――――アルゴ、参加させて貰おうか」
「助かル…………では、早速準備を始めてくレ、直ぐに出発すル」
アルゴが立ち上がり、近くの岩に腰を下ろす。
「アスナ、シリカ、リズ、共通タブを作るぞ、アイテムストレージの一部共有化だ」
「…………あんた、毒なんて混ぜないでしょうね?」
「そこは各自で気を付けろ、不自然にメニューの奥に置いてあるアイテムには触れなきゃ良い」
「絶対に混ぜないとは言わないんですね…………」
「不意打ちはするからな」
「宣言したら意味無いでしょ…………まぁ、とりあえずは、わたしとリズとシリカちゃんで共有ね。
――――それで、この人の共有アイテムは最後に使いましょう」
「そうね、それなら毒入りを選ぶのは最後になるわ」
「結晶アイテムは平気ですよね?」
「流石に結晶に細工は出来ないな、だがコリドーにはダンジョンを記録している場合もある、見かけても使うなら気を付けてくれ。
後は転移結晶の数も注意だ、一つしかない転移結晶を勘違いして全員分あるとか錯覚しないようにな」
「わかりました」
「それとリズ」
「何?」
「はじまりの街で借りてる倉庫の管理権も共有して置く、中に置いてある素材やアイテム、金も好きに使え」
「…………あたしが持ち逃げしたらどうする心算よ?」
「悪い女に引っかかったと諦めるさ」
「――――馬鹿じゃないの?」
「良く知ってるよ、装備の強化、よろしく頼んだぞ」
「本当に馬鹿ね」
アルゴの道案内で迷宮区の入り口に入る。
暫く進むと巨大な扉とパズルの様な模様が掘られていた。
「…………ほとんどのプレイヤーがこの暗号を解けずに投げ出したんダ、とあるNPCからヒントを貰えば――――簡単に解ける」
「間違えたらどうなってたんだ?」
「街から反対方向の森に放り出されル、ミスする度に倍の距離を歩かされるんダ、モンスターも出るシ、プレイヤーが心を折るのは早かっタ」
「…………ご愁傷様」
扉が開かれると六つの転移門がある部屋に入った。
赤、オレンジ、黄色、黄緑、緑、青、それぞれの門には色違いの紋章が飾られている。
「さて、何処へ行ク?」
「――――緑だ」
「ふム、まだ誰も進んだ事の無い道だな、行って見るカ」
緑の転移門を潜ると森の中だった――――辺りを見回しても緑の転移門があるだけで、後は全部森だ。
「何だ? ハズレだったのか?」
「いヤ、大当たりダ、緑の転移門には誰も通った後が無かった、だガ――――」
いきなりアルゴが走り始める――――森の奥へ迷い無く、まるで道筋が見えている様に。
「お前のそれ、追跡スキルか? 誰か知り合いが先に進んでるのか?」
「そんな所ダ」
俺も追跡スキルを使って足跡を探す――――足跡は一つだけ?
急いでアルゴの後を追うと、また迷宮区の入り口が見えた、形は同じだがさっきとは紋章の色も場所も全然違う。
「コッチが本物の入り口なのか?」
「さて、入って見ないと判らないナ」
「モンスターが全然出ませんね」
「たぶん、先行した奴が狩り尽してるんだろう、帰り道はリポップに気を付けろよ?」
追跡スキルが有効って事は、先行している奴は短時間でモンスターを狩って先に進んでいる。
攻撃力が半端じゃない、レベルは間違いなく俺よりも上だな――――ビーターだな。
「――――待テ」
入り口の前でアルゴが立ち止まる。
「どうした?」
「一度中に入っテ――――出てきた所で足跡が途切れていル」
「…………中を確認してから転移したって事か?」
「あぁ、その様ダ、どうやら入れ違いだったようだナ」
入り口を潜ると、一本道に赤い絨毯――――そして、巨大な扉。
「――――罠だろ?」
「…………案外当たりかも知れんゾ? 最初に赤の転移門を潜った時は――――来た道を戻っても元の場所には戻れなかっタ」
「ランダムかよ…………それじゃ、マジもんのボス部屋かコレ?」
「あぁ、間違いないだろウ」
「んじゃ、さっき途切れてた足跡は――――」
「恐らくコリドーだナ、此処のマッピングを終えた後、コリドーの出口を此処に設定しテ、一度準備を整える為に転移したんダ」
「早ければ今日か、もしくは二日以内に攻略開始か……」
「だろうナ、ボスの面を拝見して行くカ」
追跡スキルで足跡を見る限り、ボス部屋の扉を開くまでは慎重に進んいて、雑魚モンスターと争った形跡が無い。
だが、ボス部屋を覗いて直ぐに出てきている――――帰りは走ってるから姿を見たのか。
「シリカ、リズ、フロアボスは絶対にボス部屋から出れないから、危なくなったら部屋の外に逃げてくれ」
「わかりました」
「了解」
「行くゾ?」
「あぁ」
全員が武器を構えて俺とアルゴが一緒に巨大な扉を押し開く。
――――すると壁の松明に火が灯り、それが部屋の奥へと連鎖して灯りを宿していく。
奥の玉座には巨大で丸々としたボスの輪郭が見え始めていた。
前に数歩進むと突然扉が音を立てて閉った。
振り返って扉を確認すると――――――――シリカが扉を閉めていた……………………。
…………育ちが良いんだな…………。
全員が絶句していると、シリカは何が起きているのか判らず、首を傾げていた。
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