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歪んだ世界の中で

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第十二話 笑顔の親戚その六

「自分だけというのは」
「狭まるからね、何でも」
「そうです。どうしても狭くなります」
「エゴイズムだね」
 それが何かもだ。希望は言った。
「僕の親にあるのはそれだけだね」
「そうなりますね」
「そうだよね。やっぱりね」
「あの人達は。お互いにです」
「エゴイズムしかないから」
 そのだ。自分だけという考えのみだというのだ。
「ああした人達なんだね」
「そうだと思います。ですが遠井君はです」
「違ってきたかな」
「いえ、最初から違っていました」
「えっ、最初からかな」
「はい、最初からです」 
 違ってきたのではなくだ。違っていたというのだ。希望はだ。
「夏休みも。僕が入院した時に」
「ああ。あの時のことだね」
「毎日お見舞いに来てくれましたよね」
「そのことがなのかな」
「はい、そのことがです」
 まさにだ。そのことこそがだというのだ。
「遠井君がエゴイストではない何よりの証拠です」
「そうなるのかな」
「なりますよ。若し遠井君が遠井君のことだけを考えているのなら」
 それならばだというのだ。
「お見舞いになんか来ませんよ」
「そういえば」
 真人の言葉にだ。希望はあることに気付いた。その気付いたこととは。
「僕の親って誰がどうなってもね」
「お見舞いに行かれたことはないですね」
「うん、ないよ」
 そうだった。彼の親はそうしたことが全くないのだ。
「一度もね。お見舞いどころかね」
「誰かを助けられたこともですね」
「ないよ。お金を貸すことだってね」
 それすらもだというのだ。
「ないよ。全くね」
「そうですね。ですが」
「僕は違うっていうんだね」
「そうです」
 その見舞いからだ。真人は希望に言えた。
「根本的に違いますよ」
「あの親から生まれても」
「そうです。多分遠井君はです」
「多分っていうと?」
「よく大叔母さん達のところに行かれていましたね」
「子供の頃からね」
 物心つく前からだ。希望はよく大叔母達のところに遊びに行っていたのだ。
「そうしていたよ」
「なら大叔母さん達の影響を受けたと思います」
「おばちゃん達の」
「だから。そうした性格になったと思いますよ」
 思いやりのあるだ。そうした性格にだというのだ。
「それ故にです」
「そうなんだ。僕もまた」
「はい、お二人の影響を受けました。それにです」
「それに?今度は何かな」
「ご両親みたいになりたかったですか?」
 希望のその目を見てだ。真人は今度はこう問うたのだった。
「そうなられたかったでしょうか」
「いいや、それはなかったよ」
 はっきりとだ。希望はそのことは否定した。
「一度も思ったことはないよ」
「むしろですね」
「うん、ああはなりたくないってね」
 こうだ。過去を思い出し辛い顔になってだ。答えた希望だった。 
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