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歪んだ世界の中で

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第十二話 笑顔の親戚その四

「あるとないとでは全く違います」
「あるとそれだけで食事が豊かになった感じがするね」
「たったそれだけなのに」
「大きいよね。味噌汁の存在は」
「そう思います。それでお味噌汁を飲んでから」
 真人は希望に話しなが主役の牛丼も食べる。その味はというと。
「引き立ちますね」
「そうだね。この牛丼も」
「美味しいです」
 醤油と砂糖で味付けされた牛肉にだ。玉葱と御飯を食べながらの言葉だった。
「やはり違ってきます」
「それとだけれど」
 鮭を食べてだ。希望は述べた。
「このおかずもいいね」
「おかすですね」
「牛丼だけでもいけるけれど」
「おかずもあればさらにですね」
「贅沢になってね」
「この塩鮭も些細と言えば些細かも知れませんが」
 一品だけならだ。そうだというのだ。
「こうしてそれぞれのお料理と一緒にあれば」
「贅沢になるね」
「そうですね。お漬け物もおひたしもあって」
「とても贅沢になってるね」
「そうですね。贅沢とは」
「贅沢とは?」
「色々なものが備わっていることではないでしょうか」
 こう言う真人だった。定食を食べながら。
「そうではないかと思っています」
「この定食みたいに」
「はい、ただ牛丼だけでも確かに美味しいですが」
「他にも色々なお料理が一緒にあって」
「ご馳走になっています」
 そしてだ。そのご馳走の観点についてもだ。真人は希望に話す。
「それはお料理だけでなく」
「他のこともなんだね」
「例えば。人生ですね」
「人生もなんだ」
「色々なものが備わっていればです」
「贅沢な人生になるんだね」
「そう思うようになっています」
 真人の言葉をここまで聞いてだ。希望は。
 少し考えてからだ。こう彼に答えた。
「難しいね。ただね」
「ただ?」
「感覚としてはわかるかな」
 言葉では具体的にはわからなくともだ。感覚としてはだというのだ。
「贅沢な人生は色々なものが備わっていることだね」
「はい、そしてその色々なものは」
「友達にそれに」
「恋人にその他のものも」
「努力とか夢とか希望とか」
「そうした心のもの含めて」 
 贅沢な人生をだ。築いていくというのだ。
「そうしていくものだと思います」
「成程ね。じゃあ僕はね」
「これからですね」
「贅沢な人生にしていくんだね」
「そう思います」
 真人は希望に言ってだ。そのうえで。
 ほうれん草のおひたしと茄子の漬け物を食べてからだ。こうも言った。
「遠井君も僕も」
「そうだね。お互いにね」
「人生は贅沢な方がいいですよね」
「うん。食べものはそうでなくても構わないかも知れないけれど」
 だがそれでもだ。人生はだというのだ。
「贅沢にしたいよね」
「お金持ちになるとかそういうものではなくて」
「お金、ね」
「はい、確かにお金があると有り難いですが」
「それはいつも人生を贅沢にはしてくれないんだね」
「また別ではないでしょうか」
 金というものについてはだ。真人はそれ程重要視していなかった。そしてそれは希望も同じでだ。二人でこう話したのだった。その金についてだ、
「あくまで生きる為に必要なものであって」
「人生を贅沢なものにしてくれるかというと」
「違うと思いますが」
「そうだろうね。お金持ちでもね」
 金だけ、それならばだというのだ。 
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