アラスカン=マラミュート
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第一章
アラスカン=マラミュート
中国の北京で露天商を営んでいる黄青秀一七〇位の背で身体は痩せているが四入内になって腹が出て来た細めと黒く短い髪に面長の彼はある日道で彷徨っていた一匹の子犬を拾った、白地に灰色のその子犬を見てだった。
妻の留愛はこう言った。切れ長の目と小さな唇に黒い髪の毛を後ろで束ねている。背は一五五位で顔立ちはまだ整っているがそろそろ肉付きがよくなってきている。
「狼みたいね」
「ああ、まだ子犬だけれどな」
「シベリアン=ハスキーかしら」
「それはいいな」
シベリアン=ハスキーと聞いてだ、黄は妻に笑って言った。
「あの犬は大きくて迫力があるからな」
「番犬にいいっていうのね」
「ああ、店にいるとな」
それならというのだ。
「いい防犯になるし家でもな」
「番犬になるわね」
「だからな」
それでというのだ。
「ハスキーならな」
「いいのね」
「ああ、後はちゃんと躾けてな」
そうしてというのだ。
「立派な子になってもらうか」
「うちの番犬に」
「そして店の防犯に、何よりも家族にな」
それにというのだ。
「なってもらうか」
「それじゃあね」
妻も頷いた、そうしてだった。
二人は娘の美鈴と共にその犬を夫が好きな水滸伝の登場人物から智深と名付けた犬雄だったのでそうした名前にした彼と暮らしはじめたが。
九ヶ月程経ってだ、娘の美鈴母によく似た中学生の彼女は首を傾げさせて両親に尋ねた。
「智深ってシベリアン=ハスキーなの?」
「大き過ぎるよな」
「そうよね」
両親もこう答えた。
「ちょっとね」
「ハスキーにしたらな」
「あの、狼よりもね」
その智深を見て、見れば。
外見はハスキーに似ている、だが。
より巨大で身体つきもがっしりとしている、まるで大型のハスキーである。娘はその彼を見つつさらに言った。
「大きいわよね」
「流石に狼もここまでじゃないだろ」
「私達より体重あるかもね」
「大人しくて絶対に噛んだりしなくてな」
「変な人が来たら吠えてくれて」
「言うことも聞くが」
「いい子だけれど」
両親もその彼を見て言った、今彼は店の前で寝て舌を出してくつろいでいる。その姿は実に愛嬌がある。
「ハスキーじゃないわね」
「どうもな」
家族でそう思った、そして調べると実際にだった。
ハスキーでなかった、その種類は。
「アラスカン=マラミュート、アラスカで橇を曳く為の犬らしいな」
「そうだったの」
「ハルキーの兄弟みたいな種類でもな」
父はネットで調べてから娘に話した。
「種類は違ってずっと大きいらしいな」
「おかしいって思ったら」
「大きいがとても大人しくて頭がいいらしい」
「智深そのままね」
「しかもこいつは愛情深くて人懐っこいからな」
父は娘のその智深を見つつ話した。
「だったらな」
「いいわね」
「どうして道にいたかわからないけれどな」
「それでもいい子だし」
「家族になったからな」
だからだというのだ。
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