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歪んだ世界の中で

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第十二話 笑顔の親戚その一

 希望はクラスに入ってすぐにだ。一緒になった千春にだ。こう提案した。
「今日の放課後だけれど」
「プールよね」
「いや、プールに行く前にね」
「その前に?」
「おばちゃんの家に来てくれるかな」
「あっ、希望の大好きな」
「うん。あの人達のところにね」
 行こうとだ。希望は笑顔で千春を誘った。
 そして千春も彼のその言葉を受けてだ。こう彼に尋ねた。
「希望。考えてるのね」
「考えてないと言わないよ」
「そうよね。じゃあね」
 それではだとだ。千春も応えたのだ。
 そしてそのうえでだ。こう答えたのである。
「じゃあ一緒にね」
「来てくれるね」
「うん、一緒に行こう」
 満面の笑顔でだ。千春は希望に答えた。
「大叔母さんのお家にね」
「そうだね。そしてね」
「あのことよね」
「もういたくないから」
 自分の家に。だからだというのだ。
「あの家にいても何にもならないからね」
「そうよね。それじゃあね」
「門出になるかな」
 家を出る、そのことをだというのだ。
「僕にとって」
「そうだね。希望にとってね」
「あの家にいてもね」
 そうしていてもだというのだ。
「何にもならないよ」
「じゃあね」
 それならと。千春も希望のその背中を押した。
 そのうえでだ。こう言ったのである。
「一緒に。大叔母さん達のお家に行こうね」
「そうしよう。僕は今一人じゃないし」
「千春がいるからだよね」
「うん。だからね」
 怖くない、そういう意味での言葉だった。
 このことを言ってからだ。さらにだった。希望は千春にこのことも話した。
「あのね。テストもね」
「中間テストね」
「あっちも頑張るから」
「何でも頑張るってことはいいことだよね」
「うん、頑張るよ」
 そこに目標を見ていた。だからこその言葉だった。
「多分。テストでいい成績じゃなくても」
「お家は出られるのね」
「そうなると思うよ。僕の親って親戚の中でも評判が悪いし」
 しかもだった。
「おばちゃん達は僕にとても優しいからね」
「家を出ることはできるのね」
「多分だけれどね。けれどね」
「テストでいい成績を取って」
「自分でそうしたいんだ」
 だからだ。勉強も頑張るというのだ。
「是非共ね。そうしないと気が済まないから」
「そうね。その方が希望にとってもいいと思うよ」
 千春もだ。希望のその考えをよしとした。そうしてだ。
 まただ。彼の背中を心で押して告げたのだった。
「じゃあ。今日行って」
「それからもね」
「頑張ろう。一緒にね」
「一人だとここまで考えられなかったよ」
 それもだ。できなかったというのだ。
「けれど千春ちゃんがいてくれるから」
「考えられたのね」
「そして辿り着けたよ」
 微笑みだ。そうなったというのだ。 
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